ナタリー PowerPush - フジファブリック×アオハライド
新曲「ブルー」に込めた青春
咲坂伊緒が描く人気マンガ「アオハライド」がアニメ化され、7月7日から放送がスタートした。それを記念してナタリーではアニメの監督を務める吉村愛と、エンディングテーマ「ブルー」を手がけたフジファブリックによる対談を企画。自らの青春時代をよみがえらせるみずみずしい作品の魅力から、登場人物たちへの共感、そしてアニメと音楽で表現したこだわりまで、幅広い話題で現場は大きく盛り上がった。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 小坂茂雄
少女マンガなのに硬派なイメージ
──吉村さんは監督として、フジファブリックはエンディングテーマの提供でアニメ「アオハライド」に参加されています。まずは、今回の関わりが決定したときのお気持ちから聞かせてください。
吉村愛 私はもともと少女マンガ(のアニメ化)に関わりたい気持ちがあったので、今回のお話をいただいたときはすごくうれしかったですね。お話をいただいてから原作を読ませていただいたのですが、ストーリーが本当に面白かったので、「やった!」という感じでした。
山内総一郎(Vo, G) 僕らは新曲の曲出し会みたいなことをやっているときに、スタッフの方から今回のお話を聞きました。で、さっそく原作を読んでみたら、言葉として合っているかわからないですけど、ちょっと“硬派”なイメージを受けて。そこがすごくいいなと思ったんですよね。少女マンガをあまり読んだことがなかったので、なんとなくワーキャーワーキャーしたストーリーを想像してたら、まったく違ったという。
金澤ダイスケ(Key) 読んでいるとすごく照れる部分がたくさんありますよね。マンガを読みながらそういう感覚になることがあまりないので、それがすごく新鮮でもあって。
加藤慎一(B) とにかく一気読みできるくらい面白かったです。なので、そういう作品に関われるのはすごく光栄だなと思いました。
──山内さんがおっしゃった“硬派”というイメージは、「アオハライド」を説明する上ですごく言い得て妙な感じがあります。
吉村 そうですよね。少女マンガというと、例えば王子様が出てきたりだとか、メガネを外すと美少女だったりとか、そういうキャラクター化された作品がわりと多かったりするんですけど、「アオハライド」はストレートな青春の物語を描いているので、そういう意味では本当に硬派な少女マンガだと思います。
──今出てきた“青春”も大きなキーワードですよね。タイトルからして「青春にライドする」という意味ですから。
加藤 うん。学生時代のお話だから、自分たちが中高生のときのことを少なからず思い出したりはしますよね。
山内 例えばどんなこと思い出した?
加藤 出た(笑)。突っ込むね。例えば、長崎に修学旅行に行く話があるじゃないですか。僕も高校の修学旅行が長崎だったので、いろんなことを思い出したりとか。
山内 いいね、それ。この作品って、自分の学生時代のことを思い出すっていうのはもちろんなんですけど、いろいろな個性を持った登場人物の全員にちょっとずつ共感できるポイントがある気がして。そこもすごく印象的だったんですよね。
──憎しみを抱かせるキャラがいない感じですよね。
山内 そうそう。敵がいないというか。「フリーザ、この野郎!」みたいなやつはいないですから(笑)。
金澤 血も流れないしね(笑)。
みんな素直ないい子たち
──恋愛において2人の女子が同じ相手を好きになったりすると、見え方的にどちらかが悪者になったりする場合もあると思うんですよ。でも、「アオハライド」に関してはそれがないっていう。
山内 ほんとにそう思います。あ、でも女子目線だとまた違った受け止め方だったりするんですかね?
吉村 いや、私もそう思います。恋のライバルは出てくるけど、それぞれがしっかりした意志を持っているし、みんなすごくいい子なんですよ。物語の最初のほうにいじめっ子みたいな女の子が出てくるんですけど、それも基本的には悪い子たちではないと思うんです。価値観が違う、ノリが違うから合わないんだっていう感情が、すごくいい形で描かれているから。そういう部分はわりと実際の高校生の等身大に近い感じなのかなって思うんですよね。
山内 みんなが相手のことをちゃんと思い合ってるというか、ちゃんと気を遣いあってる感じもしますよね。ファストフードのお店で恋のライバルとね、お互いの腹の中をさらけ出すなんてこと普通できないじゃないですか。だってノンアルコールですよ!
金澤 それはもちろんそうでしょ、高校生ですから(笑)。
山内 いやでも女子ってさ、もうちょっと相手の腹を探り合って、自分を優位にもっていこうとかしそうじゃないですか。僕の勝手なイメージですけど(笑)。
加藤 この作品ではそういう子はいないもんね。素直に思いをさらけ出してる。
金澤 うん。みんな素直ないい子たちですからね。
──吉村さんは監督として、どんな部分を大事にアニメ化しようと思いましたか?
吉村 やっぱり少女マンガなので、キュンキュンする場面をしっかり女の子にお届けしたいなっていう思いはまずありますね。男性からすると照れるポイントなのかもしれないですけど、そこはやっぱり大事にしたいなと。でも、そういうキュンキュンするポイントって、実際は男性も一緒なんじゃないかなって勝手に思ってるところもあるんですけどね。例えば、リーダース研修で2人(馬渕洸と吉岡双葉)が夜中にものすごく接近するところとか……。
山内 あー! あれヤバいっすね! あれはいいですよ! ああいう経験ありますか?
加藤 ないですよ。でもあそこのシーンは僕もキュンキュンきました。
金澤 あんなふうにうまくいけばいいですけどね(笑)。
山内 まあね、そうだよね。
吉村 あははは(笑)。そういう部分を男性の方にも楽しんで観てもらえたらありがたいなと思いますね。
- ニューシングル「ブルー / WIRED」/ 2014年7月30日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤[CD+DVD] 1728円 / AICL-2708~9
- 通常盤[CD] 1296円 / AICL-2710
- 期間生産限定盤[CD] 1404円 / AICL-2711
CD収録曲
- ブルー
- WIRED
- ホーランド・ロップ
- ブルー(TV edit)(期間生産限定盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容
- LIFE
- バタアシParty Night
- Surfer King(with TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA)
- TOKYO MX:7月7日より毎週月曜24:00~
- MBS:7月7日より毎週月曜26:35~
- BS11:7月8日より毎週火曜24:30~
- TUT:7月19日より毎週土曜25:53~
- GyaO!:7月8日より毎週火曜25:00~
- ニコニコ生放送:7月16日より毎週水曜22:30~
キャスト
内田真礼(吉岡双葉役)、梶 裕貴(馬渕 洸役)、茅野愛衣(槙田悠里役)、小松未可子(村尾修子役)、KENN(小湊亜耶役)、平川大輔(田中陽一役)ほか
スタッフ
- 原作:咲坂伊緒(集英社「別冊マーガレット」連載)
- 監督:吉村愛
- 脚本:金春智子、山田由香、平見瞠
- キャラクターデザイン:井川麗奈
- 美術監督:金子雄司
- 美術設定:イノセユキエ
- 色彩設計:広瀬いづみ
- 撮影監督:松本幸子
- 編集:濱宇津妙子
- 音響監督:長崎行男
- 音楽:堤博明・大嵜慶子・橋本翔太
- アニメーション制作:Production I.G
- 製作:アニメ「アオハライド」製作委員会
- オープニングテーマ:CHiCO with HoneyWorks「世界は恋に落ちている」
- エンディングテーマ:フジファブリック「ブルー」
- 挿入歌:Chelsy「I will」
フジファブリック
志村正彦(Vo, G)を中心に2000年に結成されたロックバンド。都内を拠点に活動を開始し、2002年にミニアルバム「アラカルト」をリリース。そのユニークなサウンドと捻りの利いたアレンジ、志村の綴る独特の歌詞が注目を集める。2004年4月にシングル「桜の季節」でメジャーデビュー。「フジファブリック」「FAB FOX」「TEENAGER」といったアルバムがいずれも高い評価を受け、2009年発売の4thアルバム「CHRONICLE」でさらに支持を拡大するも、同年12月24日に志村が急死。バンドは山内総一郎(Vo, G)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)の3人でその活動を継続し、2011年9月に新体制で初となるアルバム「STAR」をリリース。その後2012年発売の「徒然モノクローム / 流線形」「Light Flight」、2013年の「Small World」という3枚のシングルを経て、3月にニューアルバム「VOYAGER」を発表した。2013年10月にはダンスロックをテーマにした4曲入りCD「FAB STEP」で新境地を開拓した。デビュー10周年を迎えた2014年は、2月に発表されたシングル「LIFE」を皮切りに、「FAB BOX II」「FAB LIVE II」という映像作品を連続リリース。