“らしさ”を残した初挑戦の数々で、宝塚歌劇の魅力に多角的にアプローチ「タカラヅカワンダーランド」

宝塚歌劇の映像や音楽、書籍やグッズ販売などを展開している宝塚クリエイティブアーツが、2024年の宝塚歌劇110周年を前にしたスペシャルイベント「TO THE NEXT TAKARAZUKA 挑戦し続ける宝塚歌劇~タカラヅカワンダーランド~」を、12月31日までオンラインで開催中だ。

宝塚クリエイティブアーツでは、VR映像やスマートフォンを用いたARフォトフレームなど、これまでも新たな技術を取り入れて観客の“楽しみの幅”を広げてきた。今回のイベントでは、遊園地のイラスト上に浮かぶ11の“パビリオン”が用意した楽しい企画や新規情報で、さまざまな出会いを提供。本特集では、それぞれのパビリオンで何が楽しめるのかをナビゲートする。

構成・文 / 大滝知里

いざ「タカラヅカワンダーランド」11のパビリオンへ!

視点をグルグル変えて、自分だけの観劇体験

「VR」のパビリオンでは、柚香光と華優希のコンビで2020年に上演された花組「ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』」と、礼真琴と舞空瞳が主演した2021年の星組「三井住友VISAカード ミュージカル『ロミオとジュリエット』」をVR映像で観ることができる。

「はいからさんが通る」は柚香が2017年に主演した作品で、2020年版は華とのトップコンビ大劇場お披露目公演として上演された。宝塚歌劇とVRという点では、2021年に開催されたオンラインイベント「TO THE NEXT TAKARAZUKA 挑戦し続ける宝塚歌劇~」でも「はいからさんが通る」のダイジェストVR映像が公開され、これがファンの間で好評を博した。VR配信では180°の3D映像の視点を手元で好きなアングルに変えて視聴できるので、自分だけの観劇体験ができる。今回はそんな「はいからさんが通る」のVR映像がダイジェスト版ではなく、1幕と2幕で配信され、作品を1本通してVRで観られる貴重な機会となる。

「ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』」(1幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』」(1幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』」(2幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』」(2幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

星組「ロミオとジュリエット」は、礼が2013年に新人公演初主演を務め、トップスター就任後にも“満を持して”挑戦した作品で、VR配信されるのは、無観客で上演・収録された今回が初公開の映像。本作では一部がWキャストとなっていて、今回披露されるB配役は、専科に異動した瀬央ゆりあがティボルト役を演じたバージョンとなる。こちらも1幕と2幕がVR配信されているが、両方合わせて購入しても税込3000円。宝塚大劇場・東京宝塚劇場の最前席のもっと手前、観客が誰も座れないようなオーケストラピット内からの映像が堪能できるので、ファンにとってはまたとないチャンスと言えるだろう。

実際にアプリ・idoga VRを立ち上げて視聴を開始すると、そこは、未知の視点で物語が展開する世界。出演者の足元から見上げるような角度でステージを鑑賞できるので、芝居のシーンでは出演者のかけあいが臨場感たっぷりに繰り広げられ、ダンスシーンでは美しく翻る衣裳や細かい足さばき、高いダンススキルを迫力満点で味わうことができる。また、演出や振付を意識して観ると宝塚歌劇のスタッフワークについても新たな発見があるはず。さらに、画面をタッチしてスクロールしたり、機器そのものを上下左右に動かしたりすると視野が変わるほか、ピンチイン / アウトで拡大縮小ができるので、ステージ中央はもちろん、上手下手の隅々まで、好きなように見え方をデザインし、心ゆくまで楽しむことができるのだ。

視聴にはパスコードが必要で、キャトルレーヴ各店(宝塚店・東京店・梅田店)、またはキャトルレーヴオンラインで購入できるパスコード付きポストカードをゲットして楽しもう。視聴権は開始から2週間で、パスコード付きポストカードは2024年1月31日まで販売。2作品のVR映像は2月14日まで楽しむことができる。作品世界にどっぷりと漬かってみよう。

「三井住友VISAカード ミュージカル『ロミオとジュリエット』」(1幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「三井住友VISAカード ミュージカル『ロミオとジュリエット』」(1幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「三井住友VISAカード ミュージカル『ロミオとジュリエット』」(2幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「三井住友VISAカード ミュージカル『ロミオとジュリエット』」(2幕)のVRキャプチャ。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

耳福のハイレゾ音源を1コインで堪能

次は「ハイレゾ」へ。宝塚歌劇の音楽配信タカラヅカレビュー ミュージックでハイレゾ音源配信されるのは今回が初。ここでは、CDよりも細かくデジタル化された、原音に近い高音質音源が楽しめる。宝塚歌劇では高音質音源を配信していなかったのだが、さまざまな楽しみ方にアプローチする「タカラヅカワンダーランド」の開催と、さらには音楽ダウンロードサービス・moraがハイレゾ音源配信開始10周年を迎えるというタイミングが重なり、moraでのタカラヅカレビュー ミュージック初のハイレゾ配信が実施されることになったそう。

今回用意されたのは全49曲。各組の近年の宝塚大劇場公演主題歌や男役スターのソロ曲、宝塚大劇場公演のパレード曲に加え、9月22日に発売された「Special Blu-ray BOX REI YUZUKA」に収録されている、柚香がカバーしたL'Arc-en-Cielのアップテンポなナンバー「READY STEADY GO」などが早くもラインナップされている。そのほか、ミュージカル「ME AND MY GIRL」での好演も記憶に新しい水美舞斗が歌う「街灯によりかかって」、瀬央の主演作「ミュージカル・コメディ『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~』」から主題歌「ザ・ジェントル・ライアー」が新たに収録された。

1曲税込500円という手軽さもうれしいが、劇場の臨場感や息遣いさえも聴こえそうな高音質音源は、まるで劇場や録音ブースで聴いているかのよう。この1年をがんばった自分へのご褒美として、1コインで最上級の癒やしを得てみては?

降り注ぐ美声、まばゆい輝き…ミュージカル「1789」の劇世界に没入

「シネマ」のパビリオンでは、映画館で宝塚歌劇の舞台を楽しめる「タカラヅカ・レビュー・シネマ」より、ドルビーシネマ&ドルビーアトモスのリミテッド上映のお知らせが。ドルビーアトモスとは立体音響技術を駆使して優れた音響効果を可能にしたもので、そのドルビーアトモスの音響技術を使いながらさらに広い色域でコントラストのある映像に仕上げるのがドルビーシネマだ。ただし、ドルビーアトモスはすでに公開終了しているため、ここではドルビーシネマについて紹介する。

今回上映される星組「スペクタクル・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』」は2023年7月2日に宝塚大劇場で収録されたもので、立体音響によって、礼演じる青年ロナンと革命のさなかに一緒にいるかのような臨場感と、天から降り注ぐような歌声に包まれる体験ができる。また、奥行きのある映像美が特徴のドルビーシネマでは、出演者の色鮮やかな衣裳のディテールや銀橋でスポットライトを浴びたスターの姿、そしてその細やかな表情をより一層楽しむことができる。本作のグレーディング担当者によると、ドルビーシネマでは「宝塚大劇場での観劇体験を再現することを目指した」そうで、色彩の解像度がぐんと上がったドルビーシネマならではの鑑賞体験と劇場での観劇体験、どちらも経験することで、「1789」の魅力を多角的に感じられるはずだ。

ドルビーシネマ版最新の上映情報は公式サイトで確認しよう。ちなみに、ドルビーアトモス公開初日に瀬央が行った3都市での初日挨拶行脚の様子と未公開映像をまとめた動画が、動画配信サービスのタカラヅカ・オン・デマンドで配信されている。

「スペクタクル・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』」ドルビー版ビジュアル©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「スペクタクル・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』」ドルビー版ビジュアル©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

こっそりと“自分時間”に楽しみたい、貴重な期間限定デジタルブック

「デジタルブック」のパビリオンでは、電子雑誌配信サービス・MAGASTOREを介して、これまでに発売された書籍の一部をデジタルで購入・閲覧できる。宝塚クリエイティブアーツから刊行されている紙媒体がデジタルで読めるのは現在、ステージ写真集・雑誌「ル・サンク」とムック「ル・サンク特別編集」、そしてフリーペーパーの「TCA PRESS」のみ。ここでは期間限定で、各組トップスターの「宝塚ファーストフォトブック」「宝塚1stフォトブック2019」から一部ポートレート、2021年から2023年にかけてのパーソナルカレンダーから撮り下ろしポートレート、そして「宝塚GRAPH」から巻頭企画「ZUCASINO」と連載中の「波瀾爆笑!? 我が人生」から各組トップコンビのエピソードが、各デバイスで楽しめる。通勤・通学時間や家事の合間のちょっとした“自分時間”に、こっそりと好きなスターを眺め、エピソードを読み返すにはぴったり。ぜひ気になるコーナーをチェックしてみて。

バーチャルとリアルを行き来するスタンプラリーでスターとパチリ!

「タカラヅカワンダーランド」はオンライン特設会場で楽しむイベントだが、「スタンプラリー」のパビリオンは、リアルとバーチャルが融合して展開する。今回、「タカラヅカワンダーランド」で展開するスタンプラリーは、オンライン上で花組・月組・雪組・星組・宙組から好きな“台紙”を選び、兵庫と東京の2都市にある宝塚歌劇の劇場周辺と大阪・キャトルレーヴ梅田店に用意されたスタンプポイントでQRコードを読み取ってデジタルスタンプを押すというもの。さらにキャトルレーヴ各店で税込3000円以上買い物すればゴールとなり、選んだ台紙の組のトップコンビがキュートなポーズを決める、スペシャルフォトフレームがもらえる。スタンプ2つでもオリジナル壁紙をゲットできるので、忙しい人でも気軽にトライできるはず。なお、イベント開催初期からスタンプポイントの場所が変更された。スタンプラリーは12月25日まで、フォトフレームでの撮影は12月31日までとなっているので早めにチャレンジしよう。

さらにスタンプラリー中にチェックしてほしいのが、各所に展示されている35種類のブックマークパネル。ブックマークはスターの舞台写真がブックマークになった人気のグッズで、今回はその2023年版が300%サイズでパネル展示されている。スタンプラリーをしながら好きなスターのブックマークパネルを探してみよう。

スターフレーム ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

スターフレーム ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

スタンプラリー台紙。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

スタンプラリー台紙。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

一瞬にしてあなたも“タカラジェンヌ”

これまでのイベントでもたびたび登場している「ARフォトフレーム」。今回の「ARフォトフレーム」では、スマートフォンやPCの撮影機能を使って、衣裳や小物と一緒に撮影ができる。“衣装A”と“衣装B”が用意されており、画面上でそれぞれの衣裳のスタンプを使ってデコレーションでき、誰でもどこでも、一瞬でタカラジェンヌ風写真を撮ることができるというわけだ。ピンチイン / アウトして衣裳・小物の大きさを変えられるほか、何個でもスタンプを押せるので、大人数のグループでわいわい撮影するのも楽しそう。また、衣裳だけでなく白い羽根扇やヘッドドレス、シャンシャンも用意されている。イベント会期が延びたことで、新たなARフォトフレーム“ワンダーランドARステージフォト”も登場した。そのほか、各組のトップスターが並ぶ「タカラヅカワンダーランド」メインビジュアル内にオリジナル写真を配置できるARフォトフレームや、イラストレーター・ますっくのスター似顔絵キャラクターと一緒に写真が撮れるARフォトフレームなども用意されている。

「TCA PRESS」の表紙を眺めて思い出にふける

「フォトギャラリー」のパビリオンは、フリーペーパー「TCA PRESS」の表紙が並ぶデジタルギャラリー。「TCA PRESS」では、宝塚歌劇のグッズやタカラヅカ・スカイ・ステージ番組表、ライブ配信・ライブビューイングの詳細、宝塚歌劇のOGや演劇人が宝塚歌劇の魅力を語るインタビューなど、毎月特盛の情報で構成されている。これまでは劇場やキャトルレーヴ、送付購読でのみ入手できたが、2022年8月号からはデジタル版もスタートし、より親しみやすくなった。

今回は、2019年12月のリニューアル号から「タカラヅカワンダーランド」を表紙にした2023年10月号、そしてドルビーシネマ「1789」を表紙にした2023年12月号まで、49の「TCA PRESS」の表紙の変遷を見ることができる。「TCA PRESS」では、公演がある組のトップスターの写真が表紙を飾る号のほかにも、ミュージカル「ファントム」や「ロミオとジュリエット」のような宝塚歌劇で幾度となく上演されてきた演目がかかるタイミングには、歴代の舞台写真が表紙に一堂に会するなど、読者を飽きさせない工夫がたくさん。その歩みを一気に振り返ろう。

コンテンツを購入して「おみくじ」で運試し

「おみくじ」のパビリオンにあるタカラヅカレビュー ミュージック&タカラヅカ・オン・デマンドの音楽や動画を購入すると、撮り下ろしのスペシャル壁紙、おまけ動画などのランダム特典が1点プレゼントされる。購入できる音楽・動画コンテンツの中には終了してしまったものもあるが、イベントの期間延長に合わせて新たなラインナップが配信中。各組のオフステージ3本パック(動画)や各組トップスターによるイベント限定オリジナルミニアルバムが楽しめるので、ぜひここで、2023年最後の運試しに挑んでみよう。

そのほか、「ライブ配信」のパビリオンではイベント期間中に行われる公演に限り、プログラム付ライブ配信チケットを楽天TVにて販売。また、「公開収録」のパビリオンでは、タカラヅカ・スカイ・ステージ加入者またはその同居家族が抽選で番組公開収録に招待された。ただし予定されていた公開収録イベントは「タカラヅカワンダーランド Meet & Greet ~花組編~」を除き中止に。だが、「Meet & Greet ~77期編~」と「Meet & Greet ~95期編~」は番組「タカラヅカワンダーランド Special Talk」としてそれぞれ12月15日、19日にタカラヅカ・スカイ・ステージでの初回放送が決定した。なお、「Meet&Greet ~花組編~」の未公開映像付き映像が、タカラヅカ・オン・デマンド(RakutenTV)で配信されている。

バーチャル店舗で新たな思い出を手に入れる

最後、11番目に紹介するのは「グッズ」パビリオン。ここから入店できるバーチャル店舗で、思い出を手に入れよう。「グッズ」に入ると、仮想空間「タカラヅカワンダーランド」の景色が立ち上がる。360°見渡せるバーチャル店舗の壁にはポスターやバッグといった「タカラヅカワンダーランド」のイベントグッズ、ショーケースにはリアル会場で展示されていたブックマークの実物が並ぶなど、コンパクトな店内で誰にも邪魔をされずに買い物を楽しむことができる。また、商品の値段を記したボードの設置や、ぴかぴかの天井に店内の様子が反射されるなど、細かい作り込みにも注目だ。さらに、ますっくによる似顔絵イラストのトップスターたちが、代わる代わる現れては消えていく一角も。イベントグッズは、期間延長に合わせて「Meet&Greet ~花組編~」「Special Talk ~95期編~」のブロマイドが販売されたり、キャトルレーヴ梅田店ではキャトルレーヴ ネームステッカーの販売期間が延びたりしているので、グッズを“買い尽くした”という人もぜひ確認してみてほしい。

また、「タカラヅカワンダーランド」のサイト内にSpecial Giftのポップがランダムで現れることがある。24時間限定で、どこかに出現するそのポップを探してクリックすると、20種類以上の限定動画やスターの画像が楽しめる。いつ出現するかわからないので、毎日「タカラヅカワンダーランド」を訪れてみよう。

イラストレーター・ますっくによるトップスター5人のイラストが出迎えてくれる。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

イラストレーター・ますっくによるトップスター5人のイラストが出迎えてくれる。©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

“初”に挑み、“らしさ”も残す

舞台映像のVR配信、ドルビーアトモス・ドルビーシネマ上映、高音質音源のハイレゾ配信など、“挑戦し続ける宝塚歌劇”という「タカラヅカワンダーランド」の主題を見事に体現している今回の11のパビリオン。新しさに挑戦する一方で、古参のファンになじみのあるコンテンツや豊富なグッズのバリエーションで“らしさ”を残し、ファンに宝塚歌劇の“楽しみ方”をバランス良く提供している。「タカラヅカワンダーランド」の開催期間が延長されたことで、すでに予告されているもの以外にも、まだまだ新しいコンテンツが登場するはず。劇場とファンをつなぐ架け橋として、宝塚歌劇と共に走り続けてきた宝塚クリエイティブアーツによる、バーチャルかつリアルな“心に響く挑戦”を、期間いっぱい楽しみ尽くそう。

「タカラヅカワンダーランド」はこちら


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