杉浦タカオが、2013年に立ち上げた“次世代型エンターテイメントユニット”SEPTが、10月に結成10周年を迎えた。10年という月日を夢中で駆け抜けてきたSEPTが、11月に上演される新作公演「DREAM TELLER」で新たなスタートを切る。
音楽に携わる若者たちの姿を描く「DREAM TELLER」の上演に向け、総合プロデュース・脚本を手がける杉浦、メインキャストのhibiki(lol)、佐藤たかみち、NORISTRY、倉丸莉子、演出・振付・出演の後藤健流にインタビュー。SEPTが歩んできた日々を振り返ると共に、10年間で得たすべてを注ぎ込んだ集大成「DREAM TELLER」への思いを語ってもらった。
※出演者の倉丸莉子は持病の悪化により降板となりました。本記事には降板前に取材した内容を掲載しています。
取材・文 / 興野汐里撮影 / 曽我美芽
夢中で走り続けた10年間
──今回は、SEPTの新作公演「DREAM TELLER」で総合プロデュース・脚本を手がける杉浦タカオさん、演出・振付を担う後藤健流さん、そして、メインキャストの4名にお集まりいただきました。SEPTは、杉浦さんが音楽と芝居のコラボレーションをテーマに発足した“次世代型エンターテイメントユニット”です。10月に結成10周年を迎えましたが、改めて2013年にSEPTを立ち上げたときのことを振り返っていただけますか?
杉浦タカオ 僕はずっと音楽とお芝居をやってきたんですが、自分の力でステージを作ってみたいと思って、いわゆる対バンライブのようなイベントをライブハウスで開催したんです。当時から総合エンタメをやりたいという意識があったので、2013年に実施した第1回公演「SEPT pleasant party night!!!!」では、各アーティストのMVを作って流したり、芸人さんにMCをやってもらったりして。最初は単発イベントのつもりだったんですけど、第1回が楽しすぎたので第2回もやることになったんです。俳優のウチクリ内倉と出会ったことがきっかけで、第2回公演「SEPT pleasant party night!!!! Vol.2 ~公開放送風、お芝居というアクセントをのせて~」では、芝居の要素を盛り込んでみたんですよ。そこで、今のSEPTに近い形ができあがったと思います。
──杉浦さんにとって、この10年間はあっという間でしたか?
杉浦 夢中で走り続けていたら10年経っていた、という感じですね。10周年を目前にコロナ禍を迎えて、舞台を諦める団体が増える中、僕たちは諦めきれなかったんです。今回の「DREAM TELLER」も2022年にコロナの影響で一度中止になっていて、声出しをしない作品としてお届けする予定だったんですけど、声出しも解禁されたということで、2023年版「DREAM TELLER」は、ライブの要素をふんだんに盛り込んだ作品にできればと思っています。
──SEPTの作品には毎回さまざまなジャンルのアーティストが参加していますが、新作「DREAM TELLER」のメインキャストには、男女混成ダンス&ボーカルグループ・lolのメンバーとして活動するhibikiさん、俳優の佐藤たかみちさん、歌い手のNORISTRYさん、声優の倉丸莉子さんといった多彩な方々が顔をそろえています。
杉浦 佐藤くんにはお芝居パート、hibikiちゃんとNORISTRYくんにはライブパートを牽引してもらいたいと思っていて、声のお仕事がメインの倉丸さんには、佐藤くんとは少し違った角度でお芝居パートをお任せできればと考えています。健流くんは第2回公演からずっと一緒にやっているので、もう語ることがないぐらい信頼しています!
佐藤たかみち そんなに長くご一緒されているんですか! すごい!
杉浦 今まで発表した作品のうち、大多数に関わってもらっているかな。出演はたくさんあったけど、演出してもらうのは今回で2回目だね。
ダンスボーカル、俳優、歌い手、声優…第一線で活躍するキャストが集結
──「DREAM TELLER」では、音楽に携わる若者たちが、夢の世界と現実の世界を行き来するファンタジーが描かれます。今回が初舞台となるhibikiさんは、自分に自信が持てないことで苦悩するアーティスト・水瀬二湖を演じます。
hibiki これまで、lolのメンバーや友人のお芝居は観たことがあったんですが、自分にとって舞台は本当に未知の世界なので、最初はお受けするかすごく迷ったんですよ。でも、マネージャーと相談したときに、「二湖は、役作りが必要ないくらいhibikiにぴったりな役だから挑戦してほしい」と言われて。「DREAM TELLER」ではない作品、二湖ではない役だったら不安な気持ちが強かったかもしれないんですけど、自分の中でやりたいという気持ちが勝って、「ぜひやらせてください!」とお返事しました。
杉浦 いやあ、本当にありがたいです。
──佐藤さんは、人とのつながりを大切にする熱血漢のピアニスト・須藤路刻役を演じます。
佐藤 僕も路刻と一緒で熱血漢っす! 元気だけが取り柄なので(笑)。
一同 ははは!
佐藤 「ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』」でご一緒した健流さんに、成長した姿をお見せできればと思います!
後藤健流 頼りにしてるよ。
佐藤 普段出演している舞台だと、今回のようにいろいろなジャンルのメンバーが集まることってあまりないじゃないですか。だから僕、みんなと仲良くなれるかな?って心配しているんですけど……。
杉浦 まったく問題なさそうな気がするよ(笑)。
佐藤 よかったー!
杉浦 そういえば今回、佐藤くんには劇中でピアノを弾いてもらおうと思っています。
佐藤 それも心配で……趣味でピアノをやっていて、時々SNSに演奏動画を上げているんですけど、人前で弾くのはやっぱり緊張しますね。
杉浦 その動画を観て、路刻をピアニストの役にしようと思ったんだよ。
後藤 へえ!
──ご縁がつながりますね。hibikiさんと同じく、NORISTRYさんも今回が初舞台となります。
杉浦 NORISTRYくんはとにかく歌声が素敵なんですよ! なので、NORISTRYくんが演じるシンガーの神鵙弥彦にはたくさん歌ってもらう予定です。
NORISTRY 歌唱パートがメインだと思っていたら、「ONE PIECE」の麦わらの一味くらいセリフあるじゃん!とびっくりして(笑)。
杉浦 麦わらの一味でいうと、ゾロやサンジくらいセリフが多いかも(笑)。
NORISTRY ちゃんとできるか心配で、今からめちゃくちゃ震えてます……(笑)。ミュージカル風のライブやドラマCDのお仕事をやらせていただく中で、自分以外のキャラクターを演じることに難しさを感じていたんですが、ちょうど舞台に興味を持っていたタイミングで「DREAM TELLER」のオファーをいただいたので、がんばって演じきりたいと思います。
──倉丸さんが演じる江南朔弥は、物語の鍵を握るキャラクターだそうですが……。
杉浦 朔弥は、メインキャラクターたちが集まるきっかけを作った人物なので、特に丁寧に作り込んでもらいたいと思っていて。だから、声だけでもキャラクターの機微を繊細に表現できる、声優の倉丸さんにお願いすることにしました。
倉丸莉子 以前私は、22/7というデジタル声優アイドルグループのメンバーとして活動していたんですけど、卒業してからはファンの方々の前で歌ったり踊ったりする機会がなくて。舞台出演経験があまりないので緊張しているんですが、SEPTさんの作品なら歌やダンスにまた挑戦することができるし、ファンの皆さんも喜んでくださるんじゃないかと思って、私自身もすごく楽しみにしています。
──演出・振付を手がける後藤さんは、SEPTの過去作にも登場した伝説のダンサー・リアム役として出演もします。
後藤 リアムは劇中で、自ら「伝説のダンサー」って名乗るんですよ! ヤバくないですか!? NORISTRYくんじゃないけど、怖くて震えてますよ、僕も(笑)。
杉浦 ははは! 一見、ダサそうではあるんだけど、その人が言うと不思議とカッコよく聞こえることってあるじゃん? そのギリギリのラインを攻めてます(笑)。リアムは“ダンスレジェンド”のような存在で、今回の「DREAM TELLER」では、リアムが引退したあとの出来事が描かれます。
それぞれの得意ジャンルを生かした「DREAM TELLER」
──後藤さんは演出・振付家として、どのようなことを意識して「DREAM TELLER」を立ち上げたいと考えていますか?
後藤 1つ目は、“画を作る感覚”で舞台を作ること。2つ目は、キャストそれぞれの得意ジャンルを生かすことですね。お芝居パートは俳優たちにお任せして、歌唱パートはアーティストさんたちに引っ張ってもらう。そのあとでバランスを整えるのが僕の仕事。今回は、これまでSEPTの作品を演出してきたウチクラさんもキャストとして参加しているし、脚本家のタカオさんも現場にいてくれる。皆さんに力を貸していただきながら、良いものができるようにがんばります。3つ目は、バンドを生かしたステージを成立させることですね。
──「DREAM TELLER」では、hoto-Dさん、okamu.さん、三代慶長さんが音楽を担当します。今作ではどのような楽曲が披露されるのか、現段階での構想を教えてください。
杉浦 健流くんとタッグを組むことが決まった段階で、ダンスの要素が豊富な作品になることはわかっていたので、必然的にダンスナンバーが多くなると思います。ただ、メインキャストが歌う曲に関しては、聴かせる系の曲になるかもしれません。今、鋭意作曲中なのですが、最高なものができあがってくるだろうという自信しかないですね!
──キャストの皆さんは、「DREAM TELLER」に出演するにあたって、楽しみにしていること、挑戦してみたいことはありますか?
佐藤 普段僕たちって、接する人との関係性によってキャラクターが変わるじゃないですか。例えば、家族と一緒にいるときと友達と一緒にいるときでも違いますよね。今回の作品ではその差が明確に表れるシーンが多いので、その部分をしっかりと表現できたら良いなと思っています。
hibiki まず、舞台自体が初めての経験なので、新しい発見があることも楽しみだし、“自分がどれぐらいできないのか”を知ることも大切なことだと思っていて。ああ……がんばらないと!
杉浦 周りのキャストが助けてくれるから心配いらないよ。
hibiki ありがとうございます!
NORISTRY 僕、友達が大好きで、友達を大切にしてきたことに関してだけは自信を持っているんです。初めて「DREAM TELLER」の台本を読んだとき、劇中で描かれている友情物語に、思わず涙してしまったんですよ。そのときの感情を自分なりに咀嚼して、歌やお芝居に落とし込めたら良いなって。あとは、今までソロアーティストとして活動してきたぶん、皆さんと呼吸を合わせて一緒に作品を作ることも楽しみです。
倉丸 これまでは割と元気な女の子の役を演じることが多かったんですけど、今回演じる朔弥ははかなげな女の子なので、自分の引き出しを増やす良いきっかけになるんじゃないかなとワクワクしています!
10年間で得たすべてを注ぎ込んだ集大成に
──SEPTは2023年に10周年の節目を迎えました。皆さんはこの10年間でずっと継続していることはありますか?
杉浦 逆に、この10年の間に捨てたもののほうが多いかもしれません。10年続けているのはSEPTだけ。SEPT1本に絞った、といっても過言ではないと思います。
佐藤 うわあ、カッコいいなあ……。僕、10年前は高校生だったんですけど、その頃からずっと「週刊少年ジャンプ」を買い続けてます!
hibiki えっ! すごい!
杉浦 実は俺、20年ぐらいジャンプ買い続けてんねん(笑)。
佐藤 20年! ここに先輩がいました(笑)。
hibiki (笑)。私は所属事務所のavexに入ったのがちょうど10年くらい前なんです。当時は歌を歌ったことがなかったし、とにかくダンスだけがやりたかったんですけど、この10年の間に歌うことも楽しいと感じるようになりましたね。歌とダンスを10年間続けられたからこそ、“今の自分”を丸ごと愛せるようになった気がします。
NORISTRY 僕はニコニコ動画出身なんですが、動画投稿を10年以上続けています。動画投稿って労力がかかるからすごく大変なんですけど……それがきっかけでお仕事の幅が広がったので、今でも月に1回は投稿するようにしています。
倉丸 すごいですね! 私はそうだなあ……声優を目指して、声の勉強を始めたのがちょうど10年くらい前だったかもしれません。
後藤 僕が10年続けているのは、ダンスワークショップかなあ。そういえば、この前開催したワークショップですごくエモい出来事があったんですよ。8年前にレッスンを受けに来てくれた子がまた来てくれて、当時僕と撮った写真を見せてくれたんです。それが本当にうれしくて……何かを根気強く続けるって、素晴らしいことだなと改めて思いました。
──皆さんそれぞれ、現在につながる経験をした10年間だったんですね。最後に、杉浦さんから「DREAM TELLER」にかける意気込み、そして“これからのSEPT”についての展望をお話しいただければと思います。
杉浦 今回の「DREAM TELLER」は、この10年間で得たすべてを注ぎ込んだ集大成のような作品になると思います。SEPTではこれまで、現代劇とファンタジー作品の両方を上演してきましたが、「DREAM TELLER」は両方の要素を持った作品、かつダンスに特化した少しテイストの異なる作品になるので、SEPTの新たな可能性をお見せできるんじゃないかと。10周年は終着点ではなく、スタート地点。「DREAM TELLER」をきっかけに、新たなスタートを切れたら良いなと思っています。より多くの方にSEPTの活動を知ってもらうために、これからもいろいろなエンタテインメントを企画するので、“これからのSEPT”も楽しみにしていただけたらうれしいです!
プロフィール
SEPT(セプト)
杉浦タカオが2013年に立ち上げた“次世代型エンターテイメントユニット”。音楽と芝居のコラボレーションをテーマに、生バンド演奏、歌、芝居、ダンス、アクロバット、殺陣、プロジェクションマッピングなどを盛り込んだオリジナル作品を発表し続けている。
杉浦タカオ(スギウラタカオ)
1983年、大阪府生まれ。俳優・イベントプロデューサー。2013年、音楽と芝居のコラボレーションをテーマにした“次世代型エンターテイメントユニット”SEPTを立ち上げた。
hibiki(ヒビキ)
1997年、愛知県生まれ。歌手・ダンサー。avex artist academy名古屋校出身。2015年、男女混成ダンス&ボーカルグループ・lolのメンバーとしてデビューした。
hibiki - PROFILE | lol(エルオーエル) OFFICIAL WEBSITE
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佐藤たかみち(サトウタカミチ)
1998年、埼玉県生まれ。俳優。2018年、舞台「母の桜が散った夜」で俳優デビューを果たす。2024年1月に「舞台『ブルーロック』2nd STAGE」、3月に「青山オペレッタ THE STAGE 第6弾『メッザ公演』」に出演予定。
佐藤たかみちOFFICIAL SITE「よりみち たかみち」
NORISTRY(ノリストリー)
大阪府生まれ。歌い手。2012年、ニコニコ動画に“歌ってみた”の動画投稿を行い、音楽活動を開始した。本名の山本教貴名義でも活動している。
PROFILE | NORISTRY | SPACE AGENCY
NORISTRY / 山本教貴 (@NORISTRY2525) | X
倉丸莉子(クラマルリコ)
滋賀県生まれ。声優。2016年から2021年まで、デジタル声優アイドルグループ・22/7に所属。グループ卒業後は主に声優として活動している。
後藤健流(ゴトウタケル)
1988年、東京都生まれ。ダンサー・振付家・演出家・俳優。2010年、妹の後藤紗亜弥とダンスボーカルユニット・BLOODLINEを結成。2020年、後藤兄妹に改名し、活動を行っている。