ついに開幕、平野良・鎌苅健太・髙木俊が語る「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.5 -最後の事件-」 (2/2)

緻密に作られた和製オリジナルミュージカル

──歌唱、または演奏される“音”の連なりによって、芝居の温度も変わるのですね。キャストの皆さんの歌声、ピアノとバイオリンの音色がそれぞれ独立した“楽器”となって重厚なメロディを奏でるところに、モリミュの音楽的な魅力が詰まっていると感じるのですが、皆さんはただすけさんが手がけるモリミュの音楽についてどのように捉えていますか?

髙木 ピアノの(境田)桃子さんとバイオリンの林(周雅)くんが生演奏で参加してくれるのが、モリミュの大きな特徴ですよね。ただ楽曲を演奏するだけじゃなく、BGMの役割も担ってくれる。2人とのセッションを通して、自分たちの芝居のバリエーションも増えた気がします。特に「Op.4」では、林くんの演奏ありきのネタをたくさんやらせてもらいました(笑)。

平野 周ちゃん(林)、イップスになってましたよね(笑)。「あれ!? おかしいな……さっきはこの音が出せたのに!」みたいな。

平野良

平野良

髙木 そんなこともあったねえ(笑)。林くんには僕の個人イベントにも出てもらって、2人でセッションしました。「君の素晴らしい能力をこんなことに使ってごめんね」と毎回思うんですけど、「しゅんりーさんのおかげで、別の仕事につながりました」と言ってもらえてありがたかったですね。ということで、「Op.5」でも遠慮なく林くんの力を借りようと思います!(笑)

平野鎌苅 ははは!

鎌苅 僕はただすけさんが作る音楽のおかげで、いろいろな音楽理論を勉強させてもらいました。ただすけさんの音楽って、1音1音にしっかりと意味があって、その音を奏でるとパッと情景が浮かぶじゃないですか。それがすごいなって毎回思うんです。「Op.5」の楽曲では、登場人物の苦しみや喜びがどのように表現されるのか、今から楽しみですね。

鎌苅健太

鎌苅健太

平野 モリミュの音楽の大きな特徴は、和製オリジナルミュージカルであることだと思います。ただ「憂国のモリアーティ」という作品自体はアーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズを下敷きにしているので、19世紀末のイギリスの雰囲気をまとっている。原作者の竹内(良輔)先生と三好(輝)先生、編集者の方が当時の時代背景をよくご存じということに加えて、ただすけさんと西森(英行)さんが「この時代ではこういう音楽が流行していたけど、こういう世界観にしたいから、別の時代の音楽も取り入れてみよう」と試行錯誤しながらとても緻密に曲を作ってくださっているんです。欧米のクラシカルな雰囲気漂う楽曲を、俳優たちが自分に合ったキーで日本語で歌い、ピアノとバイオリンのお二人が音楽と物語の架け橋になる。すべての要素がうまく合致して、魅力的な音作りができていると思います。

長いトンネルを抜けた先にあるもの

──息を飲むようなストーリー展開、重厚な楽曲、ウィリアムやシャーロックをはじめとする奥行きのあるキャラクターなど、モリミュはさまざまな角度から楽しむことができる作品ですが、「Op.1」から出演されているお三方にとって「これぞモリミュだ」と感じる要素は?

平野 アンサンブルの力ですね。アンサンブルがM1(編集注:ミュージカルにおいて1番目に歌唱される楽曲)を歌うことが多いんですけど、彼らがまずモリミュの世界観をしっかりと作ってくれるから、僕らも自然と入っていくことができる。彼らの熱いパフォーマンスを観ると、「ああ、これぞモリミュだ」と感じますね。

髙木 各キャストの完成度の高さかな。これだけのキャストを集めるって、素晴らしいことですよ! 演技も歌もレベルが高いし、何よりお芝居に対する熱量がすごい。みんな妥協することなく作品作りをしているから、「この人たちなら大丈夫だ」という安心感があります。

髙木俊

髙木俊

鎌苅 モリミュを象徴するものは……やっぱり“鈴木と平野”ですかね。「憂国のモリアーティ」では、登場人物たちがみんなウィリアムやシャーロックの魅力に惹かれて、心を動かされていくじゃないですか。モリミュでもしっかりとそれを表現できているのは、勝吾と良くんが真ん中にいてくれるから。最後にこの2人がどういうラストシーンを作り上げるのか、僕らもすごく楽しみにしています。

──キャストの皆さんも、鈴木さん演じるウィリアムと平野さん演じるシャーロックの行く末に注目しているんですね。「Op.5」を楽しみにしている観客の皆さんにメッセージをいただけますか?

平野 感染予防対策が緩和されて、規制なしで上演できるのは2019年の「Op.1」以来。「Op.2」のときにコロナが蔓延して、エンタテインメントは不要不急なものなのでは?という意見が出る中で、僕たちのようにエンタテインメントに関わる人はみんな「自分は一体何のために仕事をしているんだろう?」と考えたと思うんです。自分自身、自粛期間でずっと家にいた時期に、どんどん表情が暗くなっていくのを感じて。そのときに改めて、エンタテインメントに触れることによって心を動かすことが、生きる糧になると感じたんです。これまでずっと長いトンネルの中を走っている感じだったんですが、同じような気持ちを抱えている人にこそ劇場へ来てもらいたい。僕たちと一緒に、トンネルを抜けた先の景色を見ましょう。

髙木 ……えっ、急にめっちゃカッコいいこと言うじゃん!

平野 へへっ(笑)。

鎌苅 最後の最後に“役者平野”が出てきたな。さすが役者、心を揺さぶってきますよね。

一同 ははは!

左から鎌苅健太、平野良、髙木俊。

左から鎌苅健太、平野良、髙木俊。

プロフィール

平野良(ヒラノリョウ)

1984年、神奈川県生まれ。俳優。テレビドラマ「3年B組金八先生」(第5シリーズ)で映像デビューを果たす。2008年、「ミュージカル『テニスの王子様』1stシーズン」に出演。近年の主な出演作に、「信長未満-転生光秀が倒せない-」、舞台「HELI-X」シリーズほか。日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブの情報バラエティ番組「2.5次元ナビ!」でMCを務める。10月に「ハンサム落語2023」、2024年2・3月にミュージカル「伝説のリトルバスケットボール団」に出演予定。

鎌苅健太(カマカリケンタ)

1984年、大阪府生まれ。俳優。2005年、「ミュージカル『テニスの王子様』1stシーズン」に出演。近年の主な出演作に、ミュージカル「Dear my パパ」、「ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』」シリーズほか。テレビ神奈川の情報バラエティ「猫のひたいほどワイド」で火曜MCを務める。10月に「ハンサム落語2023」に出演予定。

髙木俊(タカギシュン)

1981年、アメリカ生まれ。俳優・声優。2003年、「ミュージカル『テニスの王子様』1stシーズン」に出演。近年の主な出演作に、キ上の空論 10周年記念公演「幾度の群青に溺れ」、「ロンドンコメディ『Run For Your Wife』」ほか。宮野真守とのユニットSMILY SPIKYによるラジオ番組「なまはこっうぇ!」が隔週火曜に放送されている。