北川尚弥・砂川脩弥がバディに!初共演の2人が語る、舞台「ブラッディ+メアリー」

「死にたい吸血鬼×生きたい神父の生死のすれ違い!?」をキャッチコピーに掲げたサマミヤアカザのマンガ「ブラッディ+メアリー」が、あやめ十八番の堀越涼演出により舞台化される。“死にたくても死ねない吸血鬼”ブラッディ・メアリー役を演じるのは、主演の北川尚弥。メアリーを殺す力を持ったエクソシストの一郎・ロザリオ・ディ・マリア役を砂川脩弥が務める。初共演ながら、すでに打ち解けた様子の2人に、バディを組むお互いの印象や「ブラッディ+メアリー」が持つ魅力について聞いた。

取材・文 / 興野汐里撮影 / 須田卓馬

2人は前世で会っていた!?

──「ブラッディ+メアリー」は、「バラッド×オペラ」や「Mr.マロウブルー」などで知られるマンガ家のサマミヤアカザさんが2013年から2017年にかけて「月刊ASUKA」(KADOKAWA)で連載していた作品です。“死にたくても死ねない吸血鬼”ブラッディ・メアリーと、彼を殺す力を持ったエクソシストの一郎・ロザリオ・ディ・マリアが織りなすバディもので、メアリーから殺してほしいと懇願されたマリアが、交換条件として自分の命を狙う吸血鬼から自分を守るよう持ちかけるところからストーリーが展開していきます。舞台「ブラッディ+メアリー」の稽古に臨むにあたって、お二人は原作を読まれましたか?

北川尚弥 読みました。とにかくサマミヤアカザ先生の絵が綺麗!

砂川脩弥 美しいよね。演出の堀越涼さんもおっしゃっていたんですけど、ほかのキャラクターがたくさんいる空間であっても、メアリーとマリアにフィーチャーした描き方をしているなって。

北川 確かに、ドラマを観るときと近い感覚になるかもしれない。ほかにも、けっこうグロテスクなシーンが可愛い作画で描かれていたり、セリフの字体が変わっていたりと、技巧のバリエーションが豊富なのでどんどん読み進められる作品だなと思いました。

左から北川尚弥、砂川脩弥。

左から北川尚弥、砂川脩弥。

──メアリーとマリアとしてバディを組むお二人は、今回が初共演だそうですね。

北川 全然そんな感じしないですよね?

砂川 うん。もしかすると、前世で会ってたのかな?(笑)

北川 ははは! 2人とも共通の友人からお互いの印象を聞いていたり、稽古が始まる前にビジュアル撮影で会ったりしていたので、すぐに打ち解けられたのかもしれないですね。

砂川 あと、撮影するときにお互いの距離が近い作品だとなじむのが早い気がする。

舞台「ブラッディ+メアリー」ビジュアル

舞台「ブラッディ+メアリー」ビジュアル

北川 確かに! 稽古はまだ始まったばかりですが(編集注:取材は1月上旬に行われた)、脩弥くんとお芝居するのはすごくやりやすいなって思います。

砂川 ありがとう。ちなみに、尚弥くんってのんびりしてるタイプ? それともせっかち?

北川 ……めっちゃせっかちです!(笑)

砂川 本当に!? 全然そんなイメージなかったな。俺はめっちゃスロー(笑)。

──違う価値観を持った方と組むほうがバランスが取りやすいこともありますよね。本作では北川さんが主演を務めますが、砂川さんから見て北川さんはどんな座長ですか?

砂川 尚弥くんは2つ年下なんですけど、包み込んでくれるような器の大きい人。なので、今回は頼りきろうと思います!

北川 僕は脩弥くんのことをお兄ちゃんだと思ってます(笑)。

砂川 俺も尚弥くんのことをお兄ちゃんだと思ってる(笑)。これからも仲良くしてください!

北川 ははは! という感じで、兄弟みたいな関係性です(笑)。

──北川さんがXに投稿しているお写真を拝見しましたが、お二人を含め和やかな雰囲気でお稽古をされていると感じました。

砂川 人見知りなので座組に慣れるまではいつも大変なんですけど、皆さん本当に良い人たちで助かりました。稽古場に行くのが全然苦じゃない!(笑)

北川 堀越さんも現場を盛り上げてくださる方だから、すごくやりやすいですよね。みんなでディスカッションしながら作品の土台を一から作っていて、とても有意義な稽古になっていると思います。

砂川 堀越さんは稽古中に疑問がわいたら都度「これ、どういうことだと思う?」と問題提起してくれるから、そのテーマについてみんなで1時間くらい話すこともあるよね。面白かったのは、「『ブラッディ+メアリー』には、一郎・ロザリオ・ディ・マリア、イザーク・ロザリオ・ディ・マリア、結生・ロザリオ・ディ・マリアのように、たくさんの“マリア”が出てくるけど、みんなは何と呼称してる?」という話題。そこからどんどん派生していって、「そもそも“ディ・マリア”って何?」という問いに行き着いて。みんなで調べながら話し合いをしたのが楽しかったです(笑)。

北川 あのディスカッション、面白かったですよね(笑)。「間違っていたら改めて固め直すから、ひとまず今はこの形でやってみよう」とみんなの解釈を統一して、座組の方向性を決めることができたんじゃないかと思います。

実は吸血シーンは…

──大まかなミザンス(立ち位置)もついて、これからそれぞれのキャラクターを深く掘り下げる作業をしていくと思うのですが、現段階ではご自身の役に対してどのようにアプローチしたいと考えていますか?

砂川 読み合わせの段階では、マリアはクールなイメージなんじゃないかと思っていたんです。でも、意外とえげつないアメリカンジョークをサラッと言ったり、学園ではニコニコ過ごしていたりするし、もう少し明るいキャラクターとして立ち上げても良いのかなって。メアリーに対しては、“祓いの力”を手に入れるために利用している部分もあるし、ある種の独占欲のような感情も抱いている。マリアの中でいろいろな気持ちが渦巻いているので、どのように発露するのが良いか模索しているところです。

砂川脩弥

砂川脩弥

北川 「ブラッディ+メアリー」の登場人物は心のどこかに闇を抱えているキャラクターが多いから、その明暗をどう表現するかが難しいなと思います。明暗がはっきりしているのはメアリーくらいかもしれません。

──北川さんが演じるメアリーは、人懐っこく真っすぐな性格のメアリーと、気性が激しく好戦的なブラッディという二面性を持ったキャラクターです。

北川 攻撃的なブラッディとの対比をつけるために、メアリーを演じるときはマリアを困らせるぐらい自由に動いてやろう!と思ってます(笑)。

砂川 メアリーからブラッディに変わる瞬間の尚弥くん、読み合わせの段階からすでにめっちゃカッコよかったんですよ! ここからまだまだ芝居が進化するんだなと思うとすごく楽しみです。……というか、マリアのほうもかなりメアリーのことを困らせてるよね?(笑)

北川 確かに。メアリーとマリアはお互いにお互いを振り回し合ってる(笑)。

──メアリーとマリアの、持ちつ持たれつの関係性が「ブラッディ+メアリー」の見どころの1つではないでしょうか。先ほど、ビジュアルにおいてメアリーとマリアの距離が近いというお話が出ましたが、その距離感をお二人がどのように表現するのか楽しみです。また今回、ドキッとするような吸血シーンがありますが……。

北川 演じている側は実はそこまでドキドキしないんですよ! メアリーを演じる自分としては“吸血=お食事”みたいな感覚なので(笑)。もしかするとお客さんのほうがドキッとするかもしれませんね。

北川尚弥

北川尚弥

砂川 首元、いわゆる急所を人に預けるわけなので、吸血される側としてはドキッとしますよ!(笑) でも、自分たちの日常生活において吸血シーンはかなり特殊なシチュエーションだけど、「ブラッディ+メアリー」の世界では当たり前の光景なんだよね。

北川 「ブラッディ+メアリー」は、自分たちの日常生活とかけ離れたところが多いお話だから、いかに違和感なくその世界観を表現するかが鍵になると思っていて。「こんなにオーバーな表現をして大丈夫かな?」と心配になったりすることもあるんですが、あえてそうしたほうがお客さんに伝わりやすい場合もある。あとは実際に劇場に入って、舞台美術や衣裳、照明、音響、映像などが加わることによって、お客さんもより作品世界に入りやすくなるんじゃないかと思います。