「横浜ダンスコレクション」の一環で行われてきた「青空ダンス」が、12月9日に開催される。“「ライブへのエール」「ライブからのエール」を日本中にひろげる”をキャッチコピーに掲げた「JAPAN LIVE YELL project」の1プログラムとして、コンドルズ・近藤良平振付の「レッド・シューズ」を柱に、Baobabの北尾亘ら多彩なゲストアーティストと公募メンバーがパフォーマンスを繰り広げる。
本特集では、ナビゲーターも務める近藤と、近藤作品に出演経験がある北尾が対談。12時から20時まで、8時間にわたって行われる同イベントについて、横浜への思い、ライブ配信への思いなどざっくばらんに語ってもらった。
取材・文 / 熊井玲
海を見るついでに、フラッと「青空ダンス」を
────JAPAN LIVE YELL project YOKOHAMA & KANAGAWA「青空ダンス in 横浜赤レンガ倉庫」は、横浜赤レンガ倉庫前で開催されるダンスと音楽の祭典で、プロからアマチュアまで約300名ものアーティストが、入れ替わり立ち替わり舞台に登場する予定です。
近藤良平 いろいろなジャンルの人たちが参加するそうで、うれしいですね。そんなにたくさん参加するって、亘は知ってた?
北尾亘 実は今、初めて知りました!(笑) でも良平さんと同じくうれしいです。コロナの状況があり自粛期間もあったので、孤立している気持ちになったり、「自分にできることは何だろうか」って考えがよぎったりしたこともあったので、劇場を飛び出して、踊りを通して会いに行くという気持ちで臨みたいですし、ほかのアーティストたちに会えるのも楽しみです。
──12時から20時まで開催される、1日がかりのビッグイベントです。
近藤 そうですね。赤レンガ倉庫の前って風が吹くと尋常じゃない寒さなので、それだけ心配ですけど(笑)。でも亘が言うように、今は集まれる場所や機会が失われていて、“青空ダンス”というネーミングには「フラッと来てね」という意味合いも込められているので、海を見に行くついでに、ふらっと観に来てもらえたらいいなって。
──近藤さんは2018年に象の鼻パークの特設ステージで「Fly Me to the MOON〜いとしのペリー〜」を披露されました(参照:横浜港前にコンドルズが過去作品の名場面を展開「Fly Me to the Moon」)。あのときは真夏でしたが……。
近藤 あれは暑かったですね! その記憶しかない(笑)。でも僕、大学が横浜なので、当時から港って出会いあり別れありの素敵な場所っていうイメージがあって。デートでも行ったし、船が来るとボーッと音がするし、昔は出航のときに紙テープを投げるセレモニーもあったりして、アガるわけです(笑)。「Fly Me to the MOON」のときもそういう場所でしか味わえない感じ、「人間ってちっぽけだな」って思いを感じながら踊りました。
──北尾さんは2017年の「横浜ダンスコレクション」の1プログラムとして開催した「青空ダンス」で、「笑う額縁〜黄昏の海辺ver.〜」を披露されました。
北尾 僕も海は大好きですね。仕事などで東京に向かうときと横浜に向かうときでは心持ちが全然違いますし、そもそも海が好きってこともあって、港町をイメージした作品を作ったこともありました。ただ前回、音響トラブルで焦った経験があって。僕のソロに途中からほかのダンサーたちが入ってきて、「さあクライマックス!」っていうときに音が出なくなって、無音で5分くらい踊ったということがあるんです(笑)。だから今回、非常にリベンジしたい気持ちです。
一同 あははは!
“リベンジ”の思いで臨む、今回の「青空ダンス」
──それぞれ、今回の作品について教えてください。近藤さんは2018年に振り付けした「レッド・シューズ」を3回にわたって披露します。
近藤 「レッド・シューズ」は、「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA2018」の1プログラムとして、みんなで一緒に踊れるもの、ワクワクするようなことができるものってことで作られた作品なんですね(参照:中華街や大さん橋で、近藤良平振付「レッド・シューズ」の動画が公開)。それ以前の2015年には「横浜大盆ダンス」の振付もしていたりするんだけど、「レッド・シューズ」では横浜を象徴する“赤い靴=レッド・シューズ”ってことで、ミドルテンポで、ちょっとエキゾチック横浜の香りを感じさせるようなテーマダンスみたいなものを作って。で、「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA2018」のフィナーレとして、横浜美術館の前にみんなで大集合して一緒に踊るはずだったんですけど、それが台風直撃でできなくなって。
北尾 えー! それは悲しい!
近藤 そうなんだよ(笑)。それも屋外の醍醐味ではあるんだけど。だから今回はその持ち越しという意味も含めて、横浜にちなんだ「レッド・シューズ」をみんなでやろうと。「踊りたいやついるかー? 踊れるやつはみんな集まって来い!」みたいな、いかりや長介みたいなノリで(笑)やりたいなって。
──「レッド・シューズ」では出演者を募集していました。何回か事前稽古はされるのでしょうか?
近藤 今回はプロダンサーを募集したんですよ。それって珍しいことで、以前作った「レッド・シューズ」の振付指導動画がYouTubeに上がってくるんだけど、今回はそれを観て踊れるようにしてきてください、というのが宿題で。
──そこに“プロ性”が求められるわけですね(笑)。
近藤 そうそう(笑)。それがちょっと面白いんだよね。参加者その人のモチベーションにかかってるっていうか、すごくきっちり覚えたい人もいるかもしれないけど、きっちり覚えなくてもいいかもしれないし。ひとまず僕が直接指導する必要がないっていうのはありがたいですね(笑)。
──近藤さんも出演されるのでしょうか?
近藤 もちろん入ります。だからその日は、青空に捧げます!(笑) それと今回、知り合いのミュージシャンが生演奏してくれるんですよ。それがいいですよね。さっき亘が言ってたような音響トラブルもないわけだ。
北尾 うらやましい!(笑)
近藤 気持ちいいと思いますよ。
──近藤さんにはナビゲーターという肩書きもついています。
近藤 MCの方もいるので僕は茶々を入れる役として。12時から夜の8時までカイロいっぱい貼って、ずっと会場にいますよ!
──北尾さんの作品は?
北尾 今回は群舞で臨もうと思っています。せっかくの青空で、フェスティバル感も感じられるので、普段からBaobabに参加してくれているメンバーや、僕が東京芸術劇場でやっているダンスワークショップ企画・東京ディグ/ライズ(参照:Baobab・北尾亘による「東京ディグ/ライズ」今年も開催、WS参加者募集中)のメンバーなどに声をかけて、プロからアマチュアまで年齢不問の15人くらいで踊りたいなって思っています。
──北尾さんはソロで踊られることも多いですが、あえての群舞なんですね。
北尾 あの開放的な赤レンガ倉庫の前で1人っていうのは、自然にはかなわないだろうと(笑)。というだけでなく、せっかくの機会なので、できるだけいろいろな人と場を分かち合いたいなって思っていて。ダンスは誰のものでもないし、できるだけたくさんの人と踊りたいなと思って。だから良平さんが言ったように、ふらっと通りかかった人が足を止めてダンスと出会っちゃうのが素敵だと思うんですよ。
──新作になるのでしょうか?
北尾 そうですね。僕も“青空に捧げる”1回きりのパフォーマンスになります。
──ほかには、遠田誠さん、大前光市さん、Aokidさんなども参加されます。
近藤 いいですよね。ダンスってくくりにはしてますけど、ふらりと立ち寄った一般の方に観てもらえるチャンスだし、ダンスが特別なものではないってことになるといいなって。
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ダンスの配信は、“生っぽさ”がキー?