「ブクロがノッていた」の真相
──ここからは各コントのお話をしていきたいと思います。
森田 オープニングコントは「八百長」になぞらえて相撲の設定にしてみたものの、世間的にイメージが結びついているのかなっていう不安との戦いではありました。多くを言わずして伝えたかったので、その難しさがあったと思います。ただ、イメージがないものに対して僕らが押し付けすぎるのはよくないし、「どこまで伝わってたんかな?」とか、逆に「言いすぎてたんかな?」って終わった今でも思います。
──直接的な「八百長」という言葉を避けながら想像させる作りが個人的にも好きでした。それができるのは、お二人が観客を信じているからこそなのかなと思ったのですが、“さらばファン”ってどういう人たちだと思いますか?
森田 昔から来てくれている人は特にそうですけど、ちゃんとネタを観に来てくれている印象はありますね。なんでも観られればいい、というわけではなく。だから、ちゃんとウケないときもある(笑)。
東ブクロ 汲み取ろうともしてくれるけど、「お前ら笑かせよ?」という視線は感じます。「そんな簡単には笑いませんよ」みたいな(笑)。特にこのオープニングコントは、僕がまわし姿で出てきて、その見た目で笑ってくれればありがたいですけど、そこで笑わせにきているわけじゃないってわかってくれているからこそ、そのあとのやり取りに注目してくれているのかなと思います。
森田 そんな人たちだから、「伝わってくれよ」という思いでやっていました。
東ブクロ 確かにこのネタ、けっこう入り組んでいて難しいと思うんですよ。わかりやすくしたところもありますけど、お客さんの感度に頼る部分もあったかもしれないです。
──2本目の「命の授業」は、1年間クラスで育ててきたニワトリのタロウを最後に食べるのか、食べるならどういう調理法がよいのか、先生を交えて話し合うというコントです。
森田 このネタも、各々の感覚によってどう受け取られるかけっこう考えました。
東ブクロ (生徒たちが選択した調理方法が)「残酷」なのか、「危ない」なのか。
──ここではネタバレのため伏せますが、その調理方法を高校生が選んだというのが面白いです。
森田 でも、生徒からしたら本当にニワトリを大事に思うならその方法以外にないっていう強い思いがあるわけですよ。その命に対する熱量だけはブレないように気をつけました。こいつ(東ブクロ演じる生徒)はとにかくピュアな奴っていう。
東ブクロ 「先生のほうがおかしいこと言ってるよ」って言う感覚ですね。
──3本目はMCで語るタイプの路上ミュージシャンのコント「伝えたいことがあるんだ」です。
森田 これが一番緊張しました。絶対に一文字もミスれないんですよ。もともと役は逆にしていて、作家陣はブクロをミュージシャン役にしようと言っていましたけど、僕はこの台本をブクロに覚えてくれとは言えませんでしたね。さすがに機嫌を損ねるので(笑)。MCも歌詞も飛したら終わりなので、これだけは毎公演リハでやっていました。
──コント中の楽曲はお見送り芸人しんいちさんが作っているんですよね。
森田 歌詞はこっちで考えているんですけど、竹原ピストルとか、ソウルな感じで作ってもらいました。
──4本目の駅のホームを舞台にしたコント「鉄」。東ブクロさんが一風変わったジャンルの鉄道オタクで、森田さんがその暴走を止める駅員役を演じました。
森田 今回の公演が重いか、軽いかのバロメーターになっていたのがこのネタです。鉄オタの情緒が行ったり来たりするからブクロはやりにくそうにしていましたけど、千秋楽でやっとものにしたなっていう感じでした。
──千秋楽のエンディングで「ブクロがノッていた」とおっしゃっていましたよね。(参考記事:千秋楽ライブレポート)
森田 そうなんですよ。このネタでブクロが一番おもろかったのは千秋楽なので、DVDにはいいのが収められていると思います。
──「これがラスト」という心境がそうさせたのでしょうか?
東ブクロ そうですね。千秋楽はDVD撮影も入っていたし、いつもよりはテンションが高くなっていたのかもしれません。このネタ、7本の中でちょうど真ん中なんですよ。本当に申し訳ないんですけど、いつも「ここでガッと行きすぎると次持たないな」とか考えてペース配分を重視している部分があって。
森田 そんなこと考えてやってたんや?(笑)
東ブクロ しゃべりながら次のことを考えていたりするので、あんまり気持ちを入れすぎるとセリフが出てこなくなるんです。間違えずにやるためのテンションのキープが必要というか。
──千秋楽ではそのストッパーを外した熱演だったわけですね。5本目は「コント『宇宙人カフェ』」、というコントなんですよね?
森田 そうです。ガッツリ、メタ構造ですね。劇中劇みたいな。
──最初に「コント、○○!」とタイトルを言ってコントを始めるのは昔のさらばもやっていましたよね。
森田 最初はそれもなしだったんですけど、もっとベタに見せたほうがいいってことで付け加えました。「キングオブコント2025」でトム・ブラウンさんがコントタイトルを言ってからネタをやって、審査員のかまいたち山内さんから「今どきそんなん言ってる奴おらん」って言われていましたけど、まさにそれです。一昔前のコントの感じを落とし込もうと、どんどんベタにしていきました。
東ブクロ 昔の森田が好きそうなネタだなと思いました。コントを“崩す”というか、ルミネtheよしもと(吉本興業の代表的な劇場)でやったら怒る兄さん方もおるよな、みたいなタイプのネタ。その感じは懐かしかったですね。
森田 初日が全然ウケなかったから差し替えようと思ったんですけど、単独全体として見たときに箸休めとしてめっちゃいい役割をしている感じがあったんですよね。だから、差し替えるとしても箸休め的な別のネタにしないとあかんかったから、それはそれで難しくて。設定(が効いている)のネタが続いてきたから、ここでこういうネタがあるのもアクセントとして結果よかった気がしますね。
──6本目のコント「社会の灰皿」は、携帯灰皿の小道具が画期的です。
森田 あれがあったらどこでもタバコ吸えますからね(笑)。
東ブクロ ネタバラシを灰皿がやってくれるので、言葉の間を気をつけなあかん、とかもなかったですし、どの地方に行ってもウケてたからやっててありがたかったですね。途中、タバコも吸えるし(笑)。
森田 もしかしたら大阪には響かないのかなと思ったんですけど、ちゃんとウケましたね。路上喫煙の街なので。
東ブクロ 昔の大阪ね。
──最後は「DVボクサー」。今までのさらばにあまりなかった、長尺のストーリーものになりましたね。
森田 ウケてホッとしました。本当にテレビではできないようなネタなので。もっと長くしようかとも思っていたんですが、やってみたらこれだけで20分もあって尺もちょうどよかったと思います。
東ブクロ 暗転を挟むコントはあまりやらないから、1幕目が終わって暗転したときに、まだ続きはあるんですけど拍手が起こった回もあったんですよ。そういう部分も含めて確かに僕らがやらないテイストではありましたけど、締まりがいいコントになったと思います。
「また観たい」単独にするために
──ここまで振り返って、「八百長」はどんな単独ライブだったと言えるでしょうか?
森田 今までで一番バランスがよかったかなって思います。歌もあればメタもあって、暗転を挟んだ長尺ネタもあって、いろんなタイプのネタが集まったなと。
東ブクロ 見た目の派手さも一番あると思う。裸(まわし)、宇宙人、珍しい小道具とか、飽きずに観られる2時間弱だと思います。
──来年以降もツアーは続いていくと思いますが、前回からおっしゃっている「ただ動員数を増やすだけではない目標」についてお聞かせいただけますか?
森田 「こういうことでもいいんかな」っていう目論見はあるんですが、まだ言えないです。動員数を増やす作業をずっと続けていくのかというのは話し合っていて、そればっかりだと本当にしんどいから1回のキャパを増やす手もあるけど、コントが伝わるキャパじゃないと成り立たんし……という。
──これまで動員を増やそうと突き進んできたさらば青春の光が、新しいフェーズに進んでいく感じがしますね。
森田 そうですね。やっと1000人キャパの会場は慣れた気がしますけど、2000は本当に多いんですよ。1500までがギリかなとか、そういう話もしています。
──東ブクロさんはさらば青春の光の軸となるこの単独ツアーをどうしていきたいですか?
東ブクロ 今回で41公演という僕の中でのMAXは超えたので、数を増やすだけが正解なのか?とは確かに思うんですよ。僕としては、この単独シリーズを続けていく中で、1回観てやめてしまう人っていうのがおらんようになるようになるのが一番いいかな。「さらばの単独は人気でチケットが取りにくいらしい、そんなおもろいなら観てみようか」っていう人に「こんなもんか」と思われるのは嫌なので、そこから毎年来てくれるお客さんになってもらえることが大事なんちゃうかなって思います。
イベント情報
DVD発売記念オンラインイベント
日時
2026年1月11日(日)19:00~(予定)
申込方法
初回限定生産版に封入されている参加申込券でエントリー。
出演者
さらば青春の光
(株)ザ・森東 《第12期株主総会》
日時
2026年2月11日(水・祝)17:00開場 18:00開演 20:00終演予定
会場
神奈川・ぴあアリーナMM
出演者
さらば青春の光
プロフィール
さらば青春の光(サラバセイシュンノヒカリ)
森田哲矢(モリタテツヤ)
生年月日:1981年8月23日
出身地:大阪府
東ブクロ(ヒガシブクロ)
生年月日:1985年10月6日
出身地:大阪府
2008年8月結成。大阪で活動したのち2013年に上京し、個人事務所「ザ・森東」を設立する。第1回大会から出場してきた「キングオブコント」では6度決勝に進出した。「さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ」(TBSラジオ)ほか、レギュラー番組多数。YouTubeチャンネル「さらば青春の光Official Youtube Channel」でさまざまな企画やコントを公開している。
さらば青春の光Official Youtube Channel | YouTube




