さらば青春の光が9月20日にDVD「さらば青春の光単独公演『会心の一撃』」を発売した。2013年10月に個人事務所ザ・森東を立ち上げてから初のメジャー流通版としてリリースする本作には、今年4月に開催した“単独ライブ新装一発目”と称する渾身の公演が収められている。
お笑いナタリーでは発売に先がけて、さらば青春の光にインタビューを実施。これまでとは意識を変えて臨んだ単独ライブの手応えを聞いた。また、この作品をPRするべくDVDメーカーのポニーキャニオンが森東広告堂に依頼したCM制作の現場に潜入。その様子をレポートする。
取材・文 / 狩野有理 インタビュー撮影 / 辺見真也
インタビュー “国が認めたコント師”さらば青春の光!
まさに「会心の一撃」
──本作には今年4月に実施した単独ライブ「会心の一撃」が収められています。このライブの開催発表時、お二人は「今までで一番気合いの入った単独ライブ」「新装一発目」とコメントを出していました。これまでと何か意識を変えて臨んだライブだったんですか?
森田哲矢 そうですね。ズボラなもんで、今まではけっこうギリギリまでネタを作ってたんですけど、今回はいつもより前倒しで取り掛かりました。
東ブクロ 「このネタで行こう」って決まったのはいつもより早かったですね。その結果、細かいところを詰めていく時間があったので、余裕を持って準備できたと思います。
森田 あと、音響・照明のすごくいいスタッフさんたちが付いてくれて。SEの声を自分で入れてくれたり、「こういう照明どうですか?」って案を出してくれたり。コント「予備校」は照明で廊下を作ってくれたんですが、僕が廊下を歩くだけでめっちゃウケるようになりました。
東ブクロ 今まではギリギリまでネタが固まっていなかったので、スタッフさんに見せることがなかったんですよ。今回は2回くらいネタ見せできたからそういうアイデアをいただけました。
──意識を変えようと思ったのには何かきっかけがあるんですか?
森田 今までが荒すぎたというか、稽古期間も短いまま新ネタを下ろしていたので、改善しないといけないなっていうのは常々感じていて。というのと、(主催の)TBSラジオが設定してきたチケット料のプレッシャーです(笑)。
東ブクロ 僕ら、2012年に初めて「キングオブコント」の決勝に出たあとの単独ライブでも1500円とかでやってましたから。
森田 そんな僕らが4300円っていうお金をお客さんから取るんだって思ったら、ほんま吐きそうで!
──決して高いとは思いませんが、そのときのお客さんからしたら驚く金額かもしれませんね。
森田 絶対に文句言われないようなものにしようと思いました。実際この環境でやれてよかったです。今までは音とか照明とか、面倒くさいと思っていたんですよ。でもせっかくいいチームがそろったから、ちょっとわがまま言わせてもらって細部までこだわることができました。
──では、まさしく「会心の一撃」といえる単独ライブになりましたか?
森田 いや本当に! タイトルはわりと適当に付けたんですけど(笑)。
東ブクロ 単独ライブとしては今までで一番「成功」と言えると思いますね。
東ブクロの“他の追随を許さない人間味の薄さ”
──ネタの着想はどんなところから?
森田 ほんまに日常生活で感じたことです。「金メダリスト」はニュースを見ていて思ったことですし、「小説家」はある映画監督が他人の映画を2倍速で観るって聞いて、そこからですね。「そんなことあんの!?」っていう。「居酒屋」は最後にできたネタなんですけど、作家と2人で入った中華料理屋で自分が体験したことが元になっています。「これネタにしたらおもろいな」って話しながら2時間くらいで完成しました。
──ボケ、ツッコミはネタによって決めているんですか?
森田 キャラクターをまず振り分けてっていう感じですね。このキャラは東ブクロがやったほうが合ってるな、だったらボケかな、みたいな。東ブクロは冷徹な役がうまいんです。うまいというか、素なんで。
東ブクロ いやいや、そんなことないよ!
森田 人間味の薄さが持ち味ですから。他の追随を許さない。「キングオブコント」でやった「ぼったくりバー」とか、ハマったときはめちゃくちゃでかいですね。あとは変な奴、おとぼけ、ミステリアスな奴をやらせたら右に出る者はいません。
──「お葬式」の東ブクロさんは変な奴を通り越して狂気すら感じました。
森田 そうでしょ? 演じてるっていうよりそういう人間なんです。
東ブクロ 違いますよ! やりにくくてしょうがない。嫌々演じてますから(笑)。
「キングオブコント」の呪縛
──お二人はフリーになってから今まで数々単独ライブを打っています。そのモチベーションはどこから来るんでしょうか?
森田 そこばっかり目指したらアカンのですけど、やっぱり賞レース、とくに「キングオブコント」ですね。その呪縛から早く解放されたいっていう気持ちがあるんだと思います。どうしても「キングオブコント」の決勝で活躍したい。そのために今のネタ数では足らんなって思って単独ライブをやっている部分はありますね。
東ブクロ だから「キングオブコント」で優勝したら、単独ライブでやるネタも変わってくるのかもしれません。
──決勝常連のお二人が、昨年の「キングオブコント」ではまさかの2回戦敗退でした。何があったんですか?
森田 何もないです、シンプルにスベったんです。
東ブクロ いうても僕ら、4年連続決勝進出してますから、準決勝に行けないことはないんやろうなと思っていたんです。そしたら足元すくわれました。
森田 2回戦終わりで周りの芸人に「どうやった?」って聞かれて、イキって「正直あんまりウケなかったですけど、さらば青春の光じゃなかったら落ちてますね」みたいなことを言ってしまったんです。フタ開けたらさらば青春の光でちゃんと落ちてるやん!っていう(笑)。
──その後は「M-1グランプリ」決勝進出を果たし(参照:さらば青春の光「M-1」初の決勝「なんの先入観もなく見て」)、東ブクロさん改名(参照:さらば青春の光・東口が「東ブクロ」に改名)、森東広告堂の立ち上げ(参照:さらば青春の光が「森東広告堂」立ち上げ、CM制作依頼を募集中)など、この1年でいろいろな出来事がありました。マネージャーさんがついたことで、いろんなことにチャレンジできている印象です。
東ブクロ 雑務だったり、スケジュールの管理だったり、いろいろやってくれているので動き方は変わりましたね。
──ちなみに東ブクロさんが改名して運気が上がってきたと感じられることはありましたか?
森田 改名するにあたって呼んだ占い師が、むちゃくちゃ胡散臭いおばはんやったんですよ。こーんなでっかいフクロウの指輪してて。で、改名して1週間後に僕がケガして入院(参照:さらば青春の光・森田が車と接触して入院、しばらくは東ブクロのみで活動)したので「全然アカンやんけ!」って思ってたんですけど……。
東ブクロ 「水曜日のダウンタウン」(TBS)とか「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ系)とか、大きめのテレビの仕事が決まったのであながち否定もできないっていう(笑)。
森田 ただ、純粋に僕らがやってきた努力の賜物って説もありますよね(笑)。でも「キングオブコント」優勝したら改名効果やと思うようにします。
──努力の賜物ではなく?
森田 努力の賜物じゃないです。素直に「フクロウのおばはん、ありがとう」です(笑)。
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さらば青春の光、初歩的プロフィール作成
- さらば青春の光
「さらば青春の光単独公演『会心の一撃』」 - 2017年9月20日発売 / ポニーキャニオン
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[DVD]
3600円 / PCBE-12130
- 収録内容
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- オープニングコント
- コント「医学部」
- コント「気絶」
- コント「小説家」
- コント「金メダリスト」
- 漫才
- コント「予備校」
- コント「居酒屋」
- コント「葬式」
- エンディングトーク
- リリース記念イベント開催!
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- 日時:2017年9月25日(月)19:00スタート
- 会場:東京・タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
※タワーレコード新宿店で本作を購入した人に配布される参加券が必要。
- さらば青春の光(サラバセイシュンノヒカリ)
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- 左 / 森田哲矢(モリタテツヤ)
- 生年月日:1981年8月23日
- 出身地:大阪府
- 右 / 東ブクロ(ヒガシブクロ)
- 本名:東口宜隆(ヒガシグチヨシタカ)
- 生年月日:1985年10月6日
- 出身地:大阪府
- 2008年結成。大阪で活動したのち2013年に上京し、森田が社長、東ブクロが副社長を務める個人事務所「ザ・森東」を設立した。「キングオブコント」では4年連続(2012年から2015年まで)ファイナリストに選出された唯一のコンビ。コントを武器とするが、「THE MANZAI」では認定漫才師として本戦サーキットに3度進出、「M-1グランプリ2016」でも決勝進出を果たすなど漫才にも定評がある。「さらば青春の光の『青春デストロイヤー』」(NBCラジオ佐賀)がレギュラー放送中。