トム・ブラウン。かつてのアーティスト写真。

北海道芸人の上京物語 第4話 [バックナンバー]

トム・ブラウンの上京物語(後編)

ここでがんばれば、なんとかなるかもしれない

13

812

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 77 685
  • 50 シェア

北海道出身芸人の活躍が注目を集める中、お笑いナタリーが立ち上げた新連載「北海道芸人の上京物語」。第4回は北海道出身のトム・ブラウンにインタビューを実施した。後編は、上京したときの思い出、幅広く交流のある北海道芸人、北海道の形が描かれているみちおの衣装の話などを届ける。

取材・/ 成田邦洋

ここでがんばれば、なんとかなるかもしれない

──上京時の話をお聞かせください。2009年2月に上京されたということですが、すでにコンビを組んでいたお二人の考えがぴったり合ったうえでの決断でしたか?

みちお そうですね。そこはまったく揉めなかったかな。

布川 覚えていることがあって、そのときコミュニティFMのラジオ終わりに車を運転して、みちおを家に送っていたんですよ。「東京に出たほうがいいと思うんだけど、どうする?」ってみちおに聞いたら、「コロッケ食べたいなあ……」って返ってきて、「は?」って(笑)。そしたら「あれ? なんか言ってた?」って自分がコロッケがどうとか言ってたのに気づいてなくて、「なんて人だ、この人は。この人と上京して大丈夫かよ」と思った記憶があります。

みちお 言っていることに意味があったらカッコよかったんだけど、ないんだよ。「ベスト・キッド」のミヤギさんみたいに、実は何か意味があればよかった。ただただコロッケが食べたかっただけです(笑)。

布川 でも、そのあとは普通に東京に出ようってことになりました。先輩のモリマンさんにもお世話になっているので、ご報告したら「偉い! 行くなら早いほうがいいから、ここで決断するのは偉いよ」と後押ししてくれました。

トム・ブラウン布川

トム・ブラウン布川

──東京に住み始めて、最初の印象は?

布川 電車に乗っていたら、膝を床につかなきゃ耐えられないくらい具合悪くなっちゃったときがあって、それが優先席の前だったんです。優先席に座っているサラリーマンやOLみたいな人と目があったんですけど、目があった瞬間に目をつぶって寝るフリをし始めたので、「なんて町だ、この町は! 優先席の意味を知ってるのかい」と。たまたま、そうだったのかもしれないですけど。

みちお 僕は人の多さに圧倒されました。最初のバイト先が麻布のデリバリーピザのお店で、みんなノリが軽い感じでした。20歳くらいの子たちが、クラブに行くとかバーに行くとか言っていて「東京ってみんなそうなんだ……」と。六本木のほうにピザの配達に行くとそこでパーティをしていて、「東京はいろんな場所で若者たちがパーティを……」と思いました。別店舗の店長もDJをやっている方で、ネオンの街なんだなと。

──みちおさん自身はそういうノリに染まりましたか?

みちお 1回だけVIPルームに通してもらって飲んだことがあって「みっちー、みっちー」ってかわいがってもらいましたけど、ソワソワしちゃってすぐに帰りました。あと、お笑いライブの数が北海道とは全然違うなとも感じました。東京だと毎日、しかも1日5本くらいはやっている。札幌だと月に2、3本あるかどうか。「ここでがんばれば、なんとかなるかもしれない!」という場所ではあるかと。そのぶん、あぶれて負けそうになる感じもありました。

トム・ブラウンみちお

トム・ブラウンみちお

ノブコブ吉村から届いた謎の招待状

──今、東京で交流のある北海道芸人の方は?

布川 錦鯉さん。昨日も一緒でした。

みちお あとはブーメラン学園さんですかねえ。

布川 ブーメラン学園を知っているのは国内でも4人くらいしかいないよ。

──そんなことはないです(笑)。トゥインクル・コーポレーションの芸人さんですよね。

みちお じゃあ、四天王はわかるかな?

──最近「決戦!お笑い有楽城」(ニッポン放送)に出ていました。

布川 出てましたよね。四天王の卓也っていう子と僕らで路上ライブをやっていたんです。

みちお 恵庭駅で、改札を出て右手の角のあたりでやってました。あとは石川ことみさん(元上海ドールのピン芸人)ですかね。

布川 あんまり知らないって! 石川ことみさん!

みちお あと最近、とにかく明るい安村さんにもごはんに連れて行ってもらっています。北海道の後輩だからなのか。本当にありがたい。

布川 タカトシのタカさんもちょくちょく誘ってくれてありがたいです。北海道の皆さん、優しくしてくださいます。「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の北海道芸人回のとき、ノブコブ(平成ノブシコブシ)の吉村さんと楽屋が一緒で、収録が終わったあとに僕が「あんまりうまくいかなかったなあ」と思っていたら、普段からそんなに絡みがあるほうじゃないのに、「なんでもいいから言っていけよ。あとは俺たちがどうにかするから」と言ってくれて、“胸熱”でしたねえ。

かつてのトム・ブラウン。

かつてのトム・ブラウン。

みちお 吉村さんも加藤浩次さんも、本当に優しい。僕らが「M-1」決勝に出てすぐの頃、「北海道会」に吉村さんに呼んでもらったんです。わざわざ楽屋に来てくれて「北海道(出身)だもんね?」って。直筆の招待状を事務所に送ってくれて。ただ、送り返す先の住所がどこにも書いていなくて、そのあとどう連絡を取ればいいかわからなかったです(笑)。

布川 初めて参加するから「北海道会ってそういうものなのかな? 自分で探して渡しに行くのかな? どういうこと?」って。ただ書き忘れていただけらしいんですけど。

みちお 謎解きでもなんでもなかった(笑)。

──北海道芸人に共通する特色はあるでしょうか?

布川 安村さんもこのコラムで言っていましたけど、人見知りが多くて、だからこそ声を張る人ばっかり。「東京に負けないぞー!」って叫んでいるような。タカトシさん以外は全員、声を張る人です。吉村さん、安村さん、ワタリ119、錦鯉の長谷川さん。僕らもそうですし。最近吉本で面白い、さんさんずさんも、これぞ北海道芸人の真骨頂。

みちお タカトシさんが正統派で、すごすぎるんですよ。この話は「やすとものいたって真剣です」(ABCテレビ)でも話したんですけど、タカトシさんのルートが通行止めみたいになっていて、みんな自分たちの道を見出すために、人見知りも相まって、大声を出すとか、僕らみたいに必死に動いて頭をつかむとかしている。

──関東芸人、関西芸人との違いみたいなことは意識されますか?

布川 ちょっと昔は萎縮しちゃいました。特に大阪出身の方がいたら。今でもしゃべるテンポの速さと“自分に自信があります感”に萎縮しちゃう。すごくいいことなんですけどね。北海道の人間は「いやー、自分なんか……」みたいなところがあるので。それをどうにかして大声でかき消すという作業をしています(笑)。

みちお 僕も同じようなことを感じるんですけど、テレビに出させていただくようになってすごく思うようになったのは、どこ出身とかではなく、芸人は芸人で仲間なんだなと。北海道は北海道でもちろん結束はありますけど。

布川 それはあります。たとえば福岡吉本だった華大(博多華丸・大吉)さんとか。僕らが出だしの頃に、華大さんが「札幌やんな? 俺らは福岡」と声をかけてくれて。同じくらいの大きさの地方都市から東京に出てきてがんばるみたいな。福岡とか九州によくしてくださる方は多いですし、北海道芸人と九州芸人で仲がいい方は多いです。

みちおが北海道の衣装を着るきっかけ論争

──みちおさんがよく着る衣装に、北海道の形があしらわれています。本日の取材でも着ていただきありがとうございます。どこで調達されたものでしょうか?

トム・ブラウン。みちお(右)の衣装に北海道が描かれている。

トム・ブラウン。みちお(右)の衣装に北海道が描かれている。

みちお これは絵を描けるスマホアプリで自分で描いて、衣装さんにお願いして作ってもらいました。あんまり僕らが「北海道出身」と言われないので、北海道出身だとわかるように入れました。今着ているのは「ペンギン」と「北海道」のデザインですが、また新しいデザインで作ろうかなと絵を描き始めているので変わるかもしれないです。最初は普段着のつもりで下北沢で買った服なんですけど、「それ、衣装にすればいいじゃん」ってみんなに言われて、衣装として着始めました。

布川 お前、その話をするとき、いつも「みんなに言われた」って言うけど、俺が言ったんだけどな。俺が。圧倒的に最初に俺が「衣装にしなよ」って言ったから、衣装になったんだけどな!

みちお 布川以外の人も言ってたよ。

布川 「この衣装にしたほうがいい」って言ったのは、俺以外考えられないからね!

みちお 俺がペンギンを着ていることに、自分が一番関わってるとみんなに知ってほしいってこと?

布川 なんで捏造するんだろう、って思うから! 俺が言ったのに、なんで「みんな」って言うのって。

みちお 布川を下げているんじゃなくて、そういうイメージだったから。

布川 捏造じゃなくて記憶が違ったってことね。今後は俺が言ったってことにしてね。

みちお いや、それはあくまで俺の思い出だから。

布川 なんでだよ! 俺が言ったんだから!

──平行線をたどって議論の終わりが見えませんが(笑)、そろそろお時間です。今のお二人の北海道への思いをまとめると?

布川 北海道が一番好きなので、北海道でレギュラー番組をやりたい気持ちは、かなりあります。東京に家を買うつもりはあまりなくて、家を買うなら北海道。北海道が終の住処と思っています。それくらい好きです。

かつてのトム・ブラウン。

かつてのトム・ブラウン。

みちお 僕も北海道で育ててもらって、こういう人間になって、こういう芸風になったので、最終的に札幌に家を持って終の住処に、と心のどこかで思っています。こっちからできることがあればなんでもやりたいです。いい場所にしていきたいし、盛り上げていきたいです。

布川 あと、北海道出身の芸人でデッカいイベントをやりたいです。

みちお そのときは村上ショージさんに開会宣言してもらいたいですね。「北海道は、でっかいどう!」って。

布川 ショージさんは北海道出身じゃないから、ちょっとブレるな(笑)。

トム・ブラウン

トム・ブラウン

トム・ブラウン

布川ひろき(ヌノカワヒロキ) 1984年1月28日生まれ、北海道札幌市出身。

みちお 1984年12月29日生まれ、北海道札幌市出身。

高校時代の先輩後輩で2008年よりコンビでの活動を開始し、2009年、正式に結成。「M-1グランプリ2018」決勝で披露した“合体漫才”で注目を集める。「有吉の壁」(日本テレビ)などに出演中。ケイダッシュステージ所属。

バックナンバー

この記事の画像(全7件)

読者の反応

::..-Nama2-..:: @OxTxMx

トム・ブラウンの上京物語(後編) | 北海道芸人の上京物語 『ここでがんばれば、なんとかなるかもしれない』 https://t.co/6GoVdewhxa

コメントを読む(13件)

関連記事

トム・ブラウンのほかの記事

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャのお笑いナタリー編集部が作成・配信しています。 トム・ブラウン の最新情報はリンク先をご覧ください。

お笑いナタリーではお笑い芸人・バラエティ番組のニュースを毎日配信!ライブレポートや記者会見、番組改編、賞レース速報など幅広い情報をお届けします。