とにかく明るい安村

北海道芸人の上京物語 第1話 [バックナンバー]

とにかく明るい安村の上京物語(後編)

東京ってすごい。北海道もすごい

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北海道出身芸人たちに話を聞く連載「北海道芸人の上京物語」。初回は旭川市出身のとにかく明るい安村にインタビューを行い、先日掲載した前編では、野球、父親とのごはん、スノーボードなどについて語ってもらった。後編では、東京の気候、歌ネタ「東京ってすごい」誕生秘話、北海道芸人の特色などの話を紹介する。

取材・ / 成田邦洋

「東京ってすごい」は「有吉の壁」の状況がよかった

──上京されてからの話をお聞きします。最初の東京への印象は?

本当にビビリました。18歳くらいでNSCに入って、男5人くらいで渋谷に行ったんです。「109行きたいね」って。みんなでジャージ穿いて「すげー」って。田舎者丸出しです(笑)。あと、道端でゴキブリを見たのが本当に気持ち悪かったです(笑)。

──北海道はあまり出ないですもんね。

一度も見たことなかったです。あと、夏はめちゃくちゃ暑いですよね。

──暑いです。気候には慣れました?

慣れないです。東京にいて、それが一番辛いかもしれないです。しかも9月、10月くらいまで暑いじゃないですか。北海道だと10月、11月くらいにはもう雪が降ってきますからね。雪虫が飛んで「あ、来週くらいには雪か。そろそろ寒くて指が痛いからキャッチボールできないな」みたいな感じですよ。その感覚が違いますね。「こんな暑いの?」って。気候に関しては北海道もいいなって思います。

──安村さんの代表作の1つと言える歌ネタ「東京ってすごい」についても改めてお聞きします。「有吉の壁」(日本テレビ系)で有名になった印象ですが「歌ネタ王決定戦2019」が初出しなんですよね?(参照:とにかく明るい安村、マジメイト大槻ら異彩放つ歌ネタ王準決勝、発表はLINE LIVE

「歌ネタ王決定戦2019」の準決勝で「東京ってすごい」を披露する、とにかく明るい安村。

「歌ネタ王決定戦2019」の準決勝で「東京ってすごい」を披露する、とにかく明るい安村。

「歌ネタ王」のために作りました。そのときの「歌ネタ王」は動画審査で受かったらもう準決勝で、あとは決勝なんですよ。優勝したら300万円なので「めちゃくちゃいいじゃないか!」と思って(笑)。参加者もそんなに多くないのでチャンスだと思って作りました。裸ネタのイメージがあるので、服を着ているとお客さんに「服着てるんだ。いつ裸のネタやるんだろう?」という違和感があるみたいなんですよね。それで裸のままでやれる歌ネタを考えたんです。まずは「なんで俺は裸でやってるんだ」という自問自答から始まりました(笑)。

──そもそもの話が、そうですね(笑)。

相方に誘われて上京して、自分の意思があまりないままに芸人をやり初めて、解散して俺がピンになって、しかも裸でネタやってる今、どういうことなんだと。「これは全部東京のせいだ」と(笑)。東京が人を変える力はすごいなというのを歌にしました。

──筋の通った話だと思います。

それで「歌ネタ王」の準決勝でやったんですけど、死ぬほどスベりました(笑)。

──そうでしたか!

はい。みんな楽器弾いたり、曲を作って流したりしている中、アカペラで勝負したんですが。別のライブでやってもスベりましたね。ただ、ほかの芸人はみんな面白いと言ってくれたんですよ。そのあと「壁」でやる機会があったので、せっかくだからとやったんです。そのときは朝からロケをしていて、みんなも疲れ切ってたし、俺も髪の毛を剃っていて落ち武者みたいだったんですよ(笑)。その状態で「東京のせいでこんなになったんだ」という歌を歌っていたので、より面白がってくれたのかもしれないです。ほかの番組でやってもウケないことがあるので、やっぱり「壁」の状況がよかったんだと思います。

北海道芸人は人見知り

──ところで、北海道芸人の方々に何か共通点はあるでしょうか?

人見知りだと思います。タカトシのタカさんも、意外とトシさんも、ノブコブ(平成ノブシコブシ)吉村さんも。僕の勝手な予想ですけど、北海道って隣近所が遠いっていうのがあるんですよ。

──家屋の一軒一軒が、少なくとも東京よりは離れていると。

そうです。土地が広いから。ご近所付き合いはありましたけど、そこまで接する機会はなかったような気がします。あくまで勝手な意見ですよ。僕がNSCを卒業して1年くらい経った19歳くらいのときに吉村さんと初めて会ったんです。年齢的にも芸歴的にも1年先輩で、同じ北海道だからよくしてくれています。若手の頃、吉村さんに「うちに泊まりに来なよ」って言ってもらって、泊まりに行ったことがあるんです。で、誘ったくせに、家で一言もしゃべらないんですよ(笑)。

──吉村さんから声をかけておいて(笑)。

結局、過去に録画していた「水曜どうでしょう」をずっと2人で観て過ごしました。今でも吉村さんとは、そういうことが多いです。「有吉の夏休み」(フジテレビ系)でハワイに行ったときも、空き時間があったときに吉村さんが「ヤス、ちょっと部屋来いよ」って呼ぶんですけど、まったくしゃべらない(笑)。

──普段、北海道芸人であることを意識することはありますか?

芸人同士で「あ、北海道なんだ!」とうれしい気持ちにはなります。ただ、北海道は広いから、ほかの町のことをまったく知らないんですね。芸人以外にも仕事で北海道の人に会うことはあるんですけど、だいたい皆さん札幌出身で、僕は旭川なのでまったくわからない。同じ北海道人でもそこが盛り上がらないポイントかもしれないです。

──北海道出身の著名人が集まる「北海道会」が有名ですが、参加されたことはありますか?

2回くらいあります。そのときは吉村さんが中心になって盛り上げてくれて、僕が付いていく感じ。そこでカラオケに行ったことがあって、吉村さんが前に出て僕も一緒に盛り上げるんですけど、トム・ブラウンとかほかの芸人たちは人見知りしちゃって、みんな後ろの端っこのほうで肩をすぼめてました(笑)。きっとみんないつも無理してるんじゃないですかね。あれが本当の姿だと思います。

東京を知ってしまった

幼稚園の頃のとにかく明るい安村(手前左)。

幼稚園の頃のとにかく明るい安村(手前左)。

──安村さんは2015年に旭川観光大使に就任されました。観光大使になったあと「旭川冬まつり」にゲスト出演されたんですよね。

裸で出ました。すごく人が集まってくれたんですけど、寒すぎて……。全裸ポーズをやっても、みんな盛り上がるというよりは「がんばれー!」ってただ応援してくれるという謎の状況でした(笑)。

──地元での仕事はまた格別な思いがあるのでは?

そうですね。旭川冬まつりは小さい頃からずっと行っていたので。冬になったらそこに行くのが当たり前で、ゴムボートみたいなものに乗って、雪の滑り台を滑ったりしていました。そんなイベントのステージに出て、みんなが見に来てくれるのはうれしいです。

──安村さんの芸人活動についてご家族の反応は?

テレビに出ているときはすごく喜んで、実家に帰ったときに大量のサインを書いてくれとお願いされました。応援してくれています。

──将来的には地元に戻りたいとか、あるいはずっと東京のままがいいとかを考えることはありますか?

いやー、東京のままなんじゃないですかね。やっぱり便利です。なんでもある。テレビで観ておいしそうだなと思ったお店に次の日に行ける。東京を知ってしまって、東京のすごさを痛感しました。旭川では芸能人も見たことがなかったですし「幻のものだ。本当はないんだ」という感覚でした。

──本当に「東京ってすごい」と。

本当にすごいです。もう戻れないです(笑)。

──最後に、安村さんの北海道への思いをまとめると?

「東京ってすごい」って言っていますけど、北海道もすごいです。ごはんでもなんでも魅力的だし、気候もいいし、「北海道出身です」って胸を張って言えるのがうれしいです。あえて溜めて言いますもん。「僕……北海道出身なんですよ」って(笑)。自慢です。ファイターズといい、北海道会といい、僕が何もしなくても魅力がたくさんあるので、頼っています(笑)。

とにかく明るい安村

とにかく明るい安村

とにかく明るい安村(トニカクアカルイヤスムラ)

1982年3月15日生まれ。高校卒業まで北海道旭川市で生まれ育った。NSC東京校6期生。コンビでの活動後、ピン芸人に。2015年に「安心してください、穿いてますよ!」のネタで一躍人気者となり、同年、旭川観光大使に就任。「歌ネタ王決定戦」や「有吉の壁」(日本テレビ系)で披露した歌ネタ「東京ってすごい」も大きな話題となった。

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読者の反応

てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u

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