新型コロナウイルスの流行で図らずも特別な年になった2020年。私たちお笑いナタリーの記者も連日届くライブ中止の知らせをやるせない気持ちで記事にする日々を過ごしました。一方で、これまでにはなかったオンラインでの試みや、万全の対策をとったうえで開催に踏み切る公演に勇気をもらうことも少なくありませんでした。往年の名作バラエティの再放送に腹を抱えて笑ったり、自宅からの生配信で近況を伝えてくれる芸人の姿に安心感を覚えたり、来年必ず開催すると約束してくれたイベントが今から待ち遠しかったり、お笑いが持つポジティブな力に励まされた1年でもありました。
この企画はそんな、コロナ禍という状況においても笑いを提供しようとしてくれていた芸人や裏方に話を聞くインタビュー連載。といってもあまり堅苦しくなく、気のおもむくままに今年1年を振り返ってもらった様子をお届けしていきます。
第1回は、まだ対面での取材を再開していない、感染防止対策バッチリのテレビ東京本社で行った「勇者ああああ」の板川侑右プロデューサーと放送初期から準レギュラー的存在として番組に愛されている
取材・
勇者ああああ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~
2017年4月にテレビ東京でスタートした
板川侑右P×ラブレターズ インタビュー
ぶん殴られて泣きながら「ありがとうございます!」って言える
──ファンにはおなじみの顔ぶれではありますが、改めてみなさんの関係性をお聞かせいただけますか?
板川侑右プロデューサー なんか知らないですけど、最初から準レギュラーみたいな感じで「勇者ああああ」に出ていただいていますよね。
ラブレターズ塚本直毅 「なんか知らないけど」って(笑)。あなたが呼んでくれてるんじゃないですか。
板川 僕たちスタッフの中でラブレターズさんは“困ったときにとりあえずホワイトボードに書く人たち”です。
ラブレターズ溜口佑太朗 あ、いまだに書いてくれてます?
板川 書いてますよ。今度また来ていただきますしね。あとは“大林素子さんと仲いい人たち”って感じでしょうか。
塚本 それが我々の2個目?(笑)
──頼りにしているということですよね。
板川 そうですね。真面目な話になりますけど、企画を成立させてくれる人ってけっこう大事で。めちゃくちゃなことをやる企画が多いので、「こういうものですよ」っていうのを形にして見せてくれるラブレターズさんのような芸人さんの存在はありがたいんです。
溜口 そう言っていただいてすごくうれしいんですけど、番組始まってからのこの3年半で僕ら一切ゲームに詳しくなっていないんですよ。
板川 あはははは(笑)。
溜口 視聴者の方も、番組で僕らがゲームしているイメージないんじゃないですか? 罰ばっかり食らってて。
塚本 電流の強さとかだけは体感でわかるようになりましたけど。
──素朴な疑問で、板川さんはラブレターズのコントを見たことはありますよね?
板川 もちろん、もちろん。
──というのも、バラエティ的な能力だけを買って番組に起用しているのかなと気になりまして。
板川 ああ、なるほど(笑)。ラブレターズさんしかりネタが面白い芸人さんはたくさんいますけど、単純にネタを披露するだけの企画にはならないようにしているんですよ。やっぱり平場で生まれるものが面白いし、編集でいろいろしたいっていう気持ちがあるので。たとえネタをやるにしても、
溜口 あんまりこんな裏側を言うもんじゃないですが、わかってくれてますよね、我々の起用法を。肌に合う監督に出会えたなって感じです。僕らは使い方次第でどうにでもなるので。最近、芸人さんの地位が上がっているというか、あんまり粗末に扱えない雰囲気もあるじゃないですか。板川さんはそれを全部取っ払って、思いっきり上からぶん殴ってくれる人なんです。
板川 あはははは!(笑)
塚本 ドンキーコングのハンマーみたいにぶっ叩いてきますから。気持ちがいいですよ。
溜口 僕らも泣きながら「ありがとうございます!」って言える。
板川 緊張しない現場ではありますよね?
溜口 緊張はしないです。
板川 この現場って偉い人が誰もいないじゃないですか。僕もアルピーさん以上のランクの演者さんだと打ち合わせでも緊張しちゃうんですよ。「モヤモヤさまぁ~ず2」を担当しているときはめちゃくちゃ真面目でしたから。
溜口 板川さんも緊張することがあるんですね。
塚本 別の顔があるんだなー。
板川 「勇者」の現場にはちょいちょい寝坊してます。油断してるんでしょうね、緊張しないから。
溜口 それはそれでダメだろ!(笑) そういえば、
板川 あのとき誰も怒らなかったですからね。全員、「ああ、遅刻しましたか」っていうくらいの反応。というのは、自分も寝坊する可能性があるからなんですよ。誰かに怒るってことは自分も怒られるってことじゃないですか。
溜口 え、自分に返ってくるから?
塚本 そのブーメランのために怒らないんだ。
溜口 そんな現場よくないよ!(笑)
※1:クールポコ。が2001年頃から名乗っていたコンビ名。当時はヒップホップ漫才を披露していた。「勇者ああああ」では「リズム-1グランプリ」3連覇中。
新しいことを思いつくきっかけになった
──みなさんの関係性がわかったところで、2020年の振り返りに移りましょう。1月頃に中国・武漢で肺炎が流行しているという報道があって、そこからあれよあれよと日本でも新型コロナウイルスが広がり、テレビ業界、お笑い界もさまざまな影響を受けます。
板川 影響は多少ありましたけど、うちの番組は外ロケでもないし、けっこうリモートと相性のいい番組なんだなって思いましたね。4月頃からの収録は天王洲スタジオでやっていて、演者さんと会わないまま撮ったりするのもそれはそれで面白かった。「新しいことできるんだ」っていう発見がいろいろあって、そのときにはんにゃさん、
──2010年にタイムスリップして、当時の人気者たちがゲームで対決する「RIFUJIN FIGHTING FEDERATION 2010」(参考記事:「今年は2010年」大人気芸人はんにゃ、フルーツポンチ、しずるがゲーム対決)ですね。
板川 リモートでやる理由を何か作らないといけないということで考えたんですよ。大忙しの人が現場に来れずにやむを得ずリモート出演する、っていうのは自然じゃないですか。でも実際に大忙しの人は呼べない。じゃあ昔売れてた芸人さんを呼んで、当時のテイでやれば成立するんじゃないかなと思ってタイムスリップさせました。
溜口 変な味付けするなあ(笑)。
板川 7月に実施したテレ東無観客フェスもこのパッケージでできましたし、大変な時期ではありましたけど新しいことを思いつくきっかけになったような気はします。でもそのくらいからあまりラブレターズさんに会わなくなりましたね。
溜口 そうそう。みなさん自宅からリモート出演で「もじぴったん」(パズルゲーム「ことばのパズル もじぴったん」)をやっていたじゃないですか。出ているメンバーを見て、「あ、実はシソンヌさんとか呼びたかったんだ」って(笑)。
板川 ああ(笑)。
溜口 僕らはこの番組のただのファンなので、普段出ない芸人さんが出ていると新鮮でうれしいですけど。自分もスタッフ側だったら、こういう時期にしか呼べない人を呼んでみたいと思うでしょうから。
──では板川さんとしてはプラスに作用することも多かった?
板川 そうですね。休みも増えましたし、働きやすくなりました。オンラインの会議も不自由なくて、コロナが明けてもそれはずっと続けると思います。まあ、リモート収録のときにテレ東のWi-Fiが弱くて園山真希絵の声が聞こえなくなるっていう事件はありましたけど。
塚本 え、放送局のWi-Fiですよね?(笑)
──ラブレターズのお二人はコロナの影響が大きかった上半期、どうお過ごしでした?
塚本 6月に単独ライブを予定していたんですができなくなり、7月にもそれぞれ個人で公演があって準備してきたんですが、それも延期になりました。
──外出自粛期間中はZoomを使ってトーク配信にチャレンジしていましたね。
溜口 序盤からYouTubeに切り替えていろいろやっている芸人さんが多かったですけど、我々はメカにあんまり強くないし、コント動画はそれまでも上げていたんですが企画っぽいことはやっていなかったので、出遅れた感はありました(笑)。
──4月に撮影でお会いした際に「トークとかはやらないんですか?」と尋ねたこと覚えていらっしゃいますか?
溜口 はいはい。
──「いや、そういうのはやらないんです」とハッキリした口調でおっしゃっていた直後にトーク配信を始められていて、一瞬「は?」と思いました。
板川 あはははは(笑)。
溜口 なんですか「は?」って! そのくらいやったっていいでしょ!
塚本 嘘つかれた(笑)。
溜口 いや、状況が状況だったんでね? このままだとずっと人と話せなくなりそうだったし、お客さんとも触れ合う機会がないしってことで急遽始めたんですよ。ちなみに板川さんの周りでコロナ陽性だった人っています? キャスティングした芸人さんとか。
板川 キャスティングした芸人さん……。あ、だからあれです、無観客フェスの翌々日くらいにはんにゃの金田さんが……。
塚本 ああ! あったあった。
板川 変な人狼の舞台があったじゃないですか。
溜口 変な人狼の舞台(笑)。有村昆さん企画のね。
──クラスターが発生した「『THE☆JINRO』―イケメン人狼アイドルは誰だ!!」にはんにゃ金田さんが日替わりゲストとして出演していて、PCR検査の結果は陰性ということでした。
板川 金田さんが有村昆の人狼の舞台に出ていたこと自体に僕ら大爆笑してたんですよ。今年の会議で一番盛り上がったかもしれない。
溜口 それが一番?(笑)
板川Pが佐久間Pに対して思うこと
──お話が出たテレ東無観客フェスの一環として実施された配信イベント「生勇者ああああ」(参考記事:「ピラメキ」真の最終回が「生勇者ああああ」で実現、アルピーら総立ちの大団円)のこともお聞きしたいです。ステージ上の時間を2011年に戻し、板川さんが当時担当されていた「ピラメキーノG」(編集部注※2)幻の最終回を「勇者ああああ」流に行おうという内容でしたが。
板川 無観客フェス、金田さんが本当に感動したって言って、めちゃめちゃ熱くなって終わりでみんなを飲みに誘っていたんですよ。でも溜口さんと(アルコ&ピース)酒井さんは本当に嫌がっていて。
溜口 金田さん、かなり手応えがあったみたいで楽屋でもホクホクだったんですよ。
──チケットの売れ行きもよかったそうですね。
板川 おかげさまで好調でしたね。無観客フェスのラインナップの中では、「やりすぎ都市伝説」と佐久間(宣行)さんのイベントに次いで3番目に売れました。
──イベント冒頭で板川さんが佐久間プロデューサーに言及する場面がありました。日頃から佐久間さんの存在は意識されていますか?
塚本 そこの関係性気になりますね。
溜口 止まらなかったですよね、佐久間さんへの噛みつき。
板川 うーん。いや、「もうちょっと俺に興味持ってもいいんじゃねえかな」っていうのは思いますね。
塚本・溜口 あはははは!(笑)
溜口 そういう気持ちなんですね。
板川 あんまり僕に興味ない感じじゃないですか。なんか気持ち悪い発言になっていますけど。
塚本 確かに、お笑い番組を撮ってる同士だから交流があってもおかしくないのに。
板川 一応その系譜の中で育ってきたはずなんですけど、僕の番宣はあんまりしてくれない。
塚本 あはははは(笑)。「僕のこと見てくれてない!」。
板川 そうそう。もうちょっと気にしてくれてもいいんじゃないかなっていうのはあります。
──ラブレターズのお二人は無観客フェス、どうでしたか?
溜口 めちゃくちゃ面白かったです。ただゲームに関してはちょっと……。
塚本 一応これ、ゲーム番組のイベントなんですよね?
板川 ゲーム番組発のイベントです。
溜口 ゲーム番組としての見どころは一切なかったですけど(笑)、バラエティ番組としては楽しかったです。かつて時代の人気者たちと「ピラメキーノ」みたいなメジャー番組を板川さんがやっていたと思うとなんだか皮肉っぽくもありますよね。今でもああいうのやりたいですか? ど真ん中の人気芸人とタッグ組んで。
板川 全然やりたいですよ。ただ意外と実は裏があって、ゲームのCMに起用されているような人気芸人さんはそもそも呼べない可能性があるんですよ。売れっ子だと、スケジュールは空いていてもスポンサーNGということがある。ここまで「勇者ああああ」で呼んできた芸人さんは奇跡的にCMに出ていない人たちだったからよかったですけど。
溜口 奇跡でもなんでもねえよ!(笑) CM出てるような奴もともと使わないだろ!
※2:人気絶頂のはんにゃ、フルーツポンチが出演していた子供向け番組。オンエアされる予定だった最終回が東日本大震災の影響でお蔵入りとなっていた。
プライム帯進出とコロナ後の罰ゲーム
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ルイ @tundratiger
#勇者ああああ の罰ゲームは基本“3密”なので平子祐希がどうなるのかと思ったら(笑)
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