やしちゃん、ひばりくんに“おんぶに抱っこ”でいいんだ
──今のお話を聞くと、「悪」の1曲目「紫」の「あなたたちに出会えてほんとうによかった」や「わたしたちになれて、ほんとうによかった!」という歌詞にもいろんな意味があるような気がしてきますが、「紫」は今のアヴちゃんにとってどんな曲ですか?
すごく素敵な曲だと思うけど、やるときによってイメージがまったく変わる曲だなと思います。「あなたたちに出会えてほんとうによかった」と本気で思っているし、ライブで歌うたびに、相対する全員に対して本気で思っている。でも、私があの曲で一番言いたいことは「生まれて来てよかったって思う!」ということ。それが私は何よりも言いたい。それは私の中のエゴかもしれないけど、本当に「生まれて来てよかった」と思わなくちゃ、やっていられないから。それを叫んでいる曲ですね。
──最初に「自分と向き合う1年だった」とも言っていましたけど、この1年間で、アヴちゃんは自分という存在と向き合ったときに、どんなことを感じましたか?
「アヴちゃんって、すごいんだなあ」って(笑)。
──(笑)。
エネルギーの塊。「ステージ上で生きるんだ」という気持ちが、私は本当に強かったから。もちろん今もその気持ちはあるけど、前は「それしかない」と平然と断言していたことが、すごいなと思います。でも、いろいろ見渡して、今も「これしかない」と思うんです。客体化したわけではないけど、客観視はしたかな。
──去年は、やしちゃん、ひばりくんとはどのようなコミュニケーションを取られましたか?
2人ともすごく優しくて。外に連れ出してくれるし、アレンジひとつとっても心がこもっているし。おんぶに抱っこ、してもらってもいいんだなと思いました。「だってバンドやもん」って。そのくらい優しくしてくれるから。「危ない、甘えちゃダメだ」と思っていたのは、案外私だけだった。彼氏が2人いる、みたいな状態です(笑)。サポートメンバーの2人も優しいし。すごく支えてくれていますね。
──アヴちゃん個人の意思決定以上に、女王蜂というバンドに引っ張られていく感覚もありますか?
うん、あります。「女王蜂のアヴちゃん」という感覚。バンドはいつもフルスロットルでキュインキュインですけど、一番の結果を決める私が仕上がっているかどうかが大事で。そこで「女王蜂のアヴちゃん」じゃないアヴちゃんが出てきたら……でも、そもそも「女王蜂のアヴちゃんじゃないアヴちゃんって、どんなの?」とも思うし。バンドあっての自分、ということはすごく感じます。多くのバンドは、その人の名字の上にバンド名があると思うんですよ。でも、私たちは名前に「女王蜂」がタトゥーされちゃっている感じがする。それがすごく大切なことだと思うし、人生とバンドが直結していると思います。
それでも生きていかなくちゃね
──ここからは最新シングル「PERSONAL」の話を伺えればと思います。表題曲「PERSONAL」はアニメ「地獄楽」第二期のエンディングテーマですが、アヴちゃんは「地獄楽」という作品からどんなものを受け取り、この曲を作られたのでしょうか?
「地獄楽」は、もともと純粋に面白くて原作を読んでいました。今回お話をいただいたとき「女王蜂のムードにぴったりだな」と思いました。「地獄楽」は満身創痍な状態でキャラクターたちが突き進んでいく物語なんです。ろくに寝ていないのに戦わなきゃいけない、みたいな。しかも原作の巻数は重ねられているけど、物語としては短い期間の話なんですよね。その、短い時間の中でものすごくいろんなことが起きているという状況が、当時の私と似ているなと思って。なので、ツルッと書けました。
──「PERSONAL」は曲調的にはメロディアスで穏やかですけど、この曲調に結実したのはなぜですか?
「地獄楽」のキャラクターたちに私が声をかけられるとしたら「休んで」という言葉だと思う。でも、私は2次元の存在ではないので声はかけることができなくて。だから「それでも生きていかなくちゃね」ということ、戦いは果てしなくてはかないよね、ということ……それを伝えたかったんだと思います。原作を読んでいるときに浮かんだのが、中華的なのか日本的なのかわからない幻想的な曲調だったんです。マンガを開けばキャラクターたちが必死に戦っていて、テレビをつければその中でも人が戦っていて、今日も街が動いていて、それを動かすために人はがんばっていて……そういうことが「すごいな、すごいことだな」と思えて。それに対する私のアプローチが、あの曲調なのかなという気がします。
──人と目が合うようになった今のアヴちゃんだからこそ生まれている曲調ですよね、きっと。
今、私は曲と一緒に成長しているんだと思うんです。前は曲がバーンと前に出て、そこに追いついていくという感覚だったけど、今は自分の中にあるものを出している。そういうタームなのかなと。
──「強火」のカップリングの「いばらの海」もそうですけど、最近のアヴちゃんの中からは曲調として穏やかなものがたくさん出てきている印象があるんです。それは安寧や優しさを感じさせる……と言ったら言葉足らずかもしれない。もっと悲しくて、はかなくて、残酷なこともそこには含まれていると思うけど、ひとえに、生きることに対しての慈しみを感じさせる曲たちが生まれている。それも、今まさにアヴちゃんが曲とともに成長しているからなんですかね。
そう思います。以前が「筆が止まらない!」という感じだったとしたら、今は1つずつ刻んで書いている感覚があります。
──「PERSONAL」では「壊しそうで怖かった手のひら / あの日はただ繋いだ」と歌われていて、カップリングの「HELTZ」では「あなたはまだその指の形を気にしているのだろうか」と歌われています。そして、次のツアーのタイトルも「PERSONAL DISTANCE」で、人と人との繋がり、あるいは人と人との間にある距離を感じさせる。「手を繋ぐ」というイメージが、今のアヴちゃんの曲において重要なインスピレーションになっているのかな、という気がしました。
うん、そうですね。「手を繋ぐ」ということが、私にとってすごく印象的なことで。メンバーと手を繋ぐこともあるし、スタッフとも手を繋ぐこともあるし、握手もそうだし。「01」という曲では「繋げていない手がこんなにあるのにな」と歌っているんです。「手を繋ぐ」というのは、私の中で大きなメタファーなんだろうなと思います。
──ちなみに、「地獄楽」の中で特に好きなキャラクターを挙げるとすると、誰を挙げますか?
ええー! 誰だろう……杠ちゃんは、すごくいい生き方をしてると思う(笑)。いい根性してる。「自分があっての世界だ」と、しっかり思えているところがいいなと思います。
──確かに、杠は“根性”という印象ですね。
うん、「ド根性!」という感じ(笑)。
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「手放すこともまた一興」とやっと言えるようになった





