音楽ナタリー Power Push - 女王蜂
“全員オフェンス”の4人が目指す先
私が毅然としていられるのは女王蜂のおかげ
──女王蜂というバンドは、「ここまで」とか「これはダメ」とかがない、さまざまな境界線を越えている越境バンドだと私は思っているんですよ。
(笑)。その通りやと思う。何かしちゃいけないってことはないし、アーティスト写真もカンバスとして捉えてるからそこに収まるときには一番面白いこと、面白いけどかわいいしカッコいいことがしたい、みたいな。でもこうしなくちゃということはいっぱいある。自分の話を聴いてほしいなら人の話もちゃんと聴かないとダメとか、身だしなみはよくするとか。そういうことは育ちが人の見え方を決めていくということだから。でも明日死ぬかもわからへんからカッコいいものやらへんとな、とも思ってて。明日死んだって後悔ないかと言われるとまた難しいけど。楽しいものをいっぱい作っていくためには何も厭わないというか、傷つくことは恐れてないですね。
──アヴちゃんにとって女王蜂というバンドはどういうもの?
女王蜂は私にとって、なんていうのかしら……難しいわね。すごく優しいんです。絶対にここにいてくれる、そういったものかもしれない。私自身がすごくファンだし、ついて行こうって思う(笑)。発明ですから、私の。
──アヴちゃんの発明?
例えば街に繰り出して男の人に声かけられたり、初対面の人と会ったり。そういうときに女王蜂を知ってる人と知らない人だと扱われ方が全然違う。知ってる人はみんな物腰も柔らかいし。一生懸命きれいにして、素敵なお洋服着て、一生懸命生きてるのに、なんでこんなに手垢のついた手で無下に扱われて、蔑称で呼ばれたり、こんなことされないといけないんだろうと、ずっと悲しく思っていた私が、1人のお嬢さんとして扱っていただける場所が女王蜂だから。すごく大切に思ってる。話すと涙が出そうなくらい、くじけそうなことはあったけど、私が毅然としていられるのは女王蜂のおかげというか。
──アヴちゃんがアヴちゃんでいられるためのスペース?
でも単なるスペースだったら、クローゼットの中に入れておけばよかったと思う。わかる人にだけわかってもらえればよかったと思うけど、なんの縁かちゃんとしたレコード会社やちゃんとしたチームが付いてくれて、失礼なことを言う人がまったくいない環境に地ならしをしてくれて、だから私はいい感じのお嬢さんとして生きられてるしお仕事をさせていただいてる。男性の声女性の声とか関係なく、誰もが表現しないような方法で、手段を選ばずに表現しているからだと思うけど、みんな敬意を持って接してくださるし。ファンの方もすごく洒落がわかるし、ライブでは泣いて歌ってかけ声もかけてくれて。ジュリ扇勝手に持って来て、あんなの持って来いと言ったこと1回もないのに(笑)、物販でも売ってへんのに。ホントに洒落がわかる。女王蜂のファンのよさはそこかもしれないですね。洒落がわかるけど、私たちへの向き合い方はわきまえてくれてる。
──確かに女王蜂のライブは独特な一体感がありますね。手作りのジュリ扇を持ってくる人もいるし、圧巻で。
私のコスプレとかね。「失神」がリリースされたら孫悟空のコスプレする子とかいるんじゃない?
──ちなみに、今回のアートワークはなぜ孫悟空に?
「失神」は完全にバキバキのダンスサウンドだけど、どこか東洋のカッコよさを出したかったと言うか。「スリラ」のミュージックビデオでも「幽幻道士」をやったんです。キョンシーの衣装を作って、右京と左近というダンサーの男の子2人入れて。最後には私たちもキョンシーになっちゃう。ずっと小さいときからキョンシーごっこやりたかったから。アートワークも、普通は三蔵法師と沙悟浄と悟空、みたいになるけど、女王蜂は全員オフェンスやから全員が孫悟空(笑)。
──なるほどね。そこから次が始まるんでしょう?
そう、孫悟空たちが見ている先が神様で。でもケンカ売ってるという(笑)。この先も、皆さんが驚くようなことをやっていきたいと思っています。
- 「失神」2015年7月22日発売 / 女王レコード / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [Blu-Spec CD2] / 2000円 / AICL-30010
- 通常盤 [CD] / 1620円 / AICL-2921
初回限定盤収録曲
- スリラ
- 売旬 feat. 篠崎愛
- ギラギラ
- 売旬 feat. 志磨遼平(ドレスコーズ)
- 空中戦
- スリラ(instrumental)
- 売旬(カラオケ version A)
- ギラギラ(instrumental)
- 売旬(カラオケ Version B)
- 空中戦(instrumental)
初回限定盤特典:Blue Spec CD2+スペシャルEPサイズパッケージ+特大ポスター+特大歌詞カード
通常盤収録曲
- スリラ
- 売旬 feat. 篠崎愛
- ギラギラ
- 売旬 feat. 志磨遼平(ドレスコーズ)
- 空中戦
女王蜂(ジョオウバチ)
2009年神戸にて活動開始。2010年「FUJI ROCK FESTIVAL '10」のROOKIE A GO-GOステージに出演し、その衝撃的なルックスとパフォーマンスでオーディエンスの注目を集めた。2011年3月に初の全国流通盤アルバム「魔女狩り」をリリース。同年9月にはアルバム「孔雀」でソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューを果たす。収録曲「デスコ」は映画「モテキ」のメインテーマに抜擢されたほか、彼女たち自身も本人役として映画に初出演し話題を呼んだ。2012年5月にギギちゃん(G)が利き腕の長期治療に専念するためバンドを“降板”するも、アヴちゃん(Vo)、やしちゃん(B)、ルリちゃん(Dr)の3人編成に不特定多数の演者を迎える形でバンドは活動を継続。しかし同年12月にバンドは無期限活動休止を発表し、2013年2月のSHIBUYA-AX公演が休止前最後のライブに。このライブの模様はDVD「白兵戦」としてリリースされた。2013年12月に行われたDVD先行上映会の会場にて再始動が発表され、バンドは2014年2月のワンマンライブ「白熱戦」で1年ぶりの復活を果たしている。2015年1月に新ギタリスト・ひばりくんが正式加入。同年3月にドラマ「怪奇恋愛作戦」のオープニングテーマ「ヴィーナス」を収めたアルバム「奇麗」、7月に篠崎愛や志磨遼平(ドレスコーズ)が参加したナンバーを含む5曲入りCD「失神」をリリース。