音楽ナタリー Power Push - 女王蜂
“全員オフェンス”の4人が目指す先
昨年2月の本格活動再開以降、着実に歩み続けている女王蜂。特に今年に入ってからの動きは華々しく、1月に新メンバーのひばりくん(G)が加入、3月にはドラマ「怪奇恋愛作戦」にオープニングテーマとして「ヴィーナス」を提供、その「ヴィーナス」が収録された2年10カ月ぶりのフルアルバム「奇麗」を3月にリリースと、ますます勢いづいていっている。
そしてアルバムからわずか4カ月で、新作CD「失神」をリリースする彼女たち。破竹の勢いの原動力はなんなのか、活動再開やひばりくんの加入以降、バンドはどのように変化していったのか、3年ぶりの全国ツアーを終えた現在の心境を、アヴちゃん(Vo)に語ってもらった。
取材・文 / 今井智子 ライブ写真撮影 / 中野修也
ひばりくんは本当に恐ろしい子
──「失神」は「スリラ」をはじめ新曲がメインである一方、アルバム「奇麗」に収録されていた「売春」が「売旬」とタイトルを変え、さらに篠崎愛さん、ドレスコーズの志磨遼平さんとのデュエットで2パターン収録されていますね。「奇麗」の延長線上の作品なのか違うのか、気になります。
イレギュラーだったんですね、「失神」は。「奇麗」をリリースする寸前まで話はなかったんですけど、その前に発表した「ヴィーナス」が好調で、夏にまた活動を思い切ってやるぞというタイミングでターボをかけたいということで、出すことになりました。
──じゃあ、曲は「奇麗」の後に作ったんですか?
実は「ヴィーナス」ができた同時期に、既に「スリラ」はあって。基軸は似てるけど、「ヴィーナス」をよりバーストさせたのが「スリラ」。転調の回数にしてもね。「奇麗」はアルバムの10曲分で見せられるドラマ。「失神」で見せられるドラマはこれとは違って、より濃縮されたというか。全部ダンスビートで固めていて。
──「スリラ」の最後には「始発で帰ろう」という歌詞があって。
そう、「奇麗」に「始発」という曲があって、それとつながるの。
──「ギラギラ」「空中戦」もとてもダンサブル。
でも歌詞は全部悲しいという。そこは「奇麗」の流れ。
──「ギラギラ」はギターが立ったアレンジで、ひばりくん(G)が大活躍ですね。
あれはひばりくんがぶっちぎりで私のアイデアをバーストしてくれたというか。本当に恐ろしい子だから(笑)。私はもともとギターが弾けて、ギターのフレーズとか全然自分で作ってるんですけど、私のフレーズをひばりくんがトレースして、さらに私の行けないところまで行ってくれる。そこはすごく信頼感があるんです。
ゲストの2人は男性の理想、女性の理想
──「売旬」も「奇麗」の「売春」とつながりながら別なものになっていますよね。篠崎さんや志磨さんとデュエットするアイデアはどこから?
まず「奇麗」を出すずっと前、この「売春」という曲を閃いたときから、誰かゲストを呼びたいなと思ってて。でもレコーディング中に、まずは自分1人でやってみようと思って作って。で、よく考えたら、1人でできるってことは、1人じゃなくて2人(ゲストを)入れられると思ったの。誰を呼ぼうかしらと考えたときに浮かんだのが、篠崎愛ちゃんと志磨くん。2人とも色っぽいし、男性の理想、女性の理想をいってる2人だと思うんですね。この2人を召還できるのは私しかいないと思って。
──2人と歌ってみてどうでした?
1人変わるだけでこんなに曲の持つ表情が違うものになると思ってなくて。発見でした。
──タイトルの文字を「春」から「旬」に変えたのは?
単純にリリース時期が春じゃなくなったというのもあって、1年中聴いてほしいし。あと一番いい時期=旬を春と捉えるなら、みんなそうだと思うんですけど、私たちは自分の“いいとき”を売ってる仕事をしてるんだから、お仕事してる時期が旬だと思って。
──アヴちゃん自身が2役を歌うことで、発見はありましたか?
私、なんでもアリやなって(笑)。ミュージックビデオでも1人2役で、ホントに違う人がいるみたいで。自分で面白がってます。あとね、1人で歌うより楽! 息継ぎができる(笑)。
──(笑)。それはツアーファイナルのライブでも言ってましたね。歌詞についてはいかがですか?
お気に入りの歌詞なんです。男の人と女の人が恋愛したときに、女の人には被害者意識みたいなのがあって、男の人には加害者意識みたいのがありがちだと思う。でもそうじゃなくて、年下過ぎる女の子が男の人に、「ごめんね、私がもう少し大人で早く出会えてたら、あなたも後ろ暗い思いしなかったでしょ」って。そういうものを曲にすると、それぞれの感情から湿度を抜いた状態にできるから。湿度のある歌詞も女王蜂サウンドは除湿するから。そういうところはお気に入りです。
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- 「失神」2015年7月22日発売 / 女王レコード / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [Blu-Spec CD2] / 2000円 / AICL-30010
- 通常盤 [CD] / 1620円 / AICL-2921
初回限定盤収録曲
- スリラ
- 売旬 feat. 篠崎愛
- ギラギラ
- 売旬 feat. 志磨遼平(ドレスコーズ)
- 空中戦
- スリラ(instrumental)
- 売旬(カラオケ version A)
- ギラギラ(instrumental)
- 売旬(カラオケ Version B)
- 空中戦(instrumental)
初回限定盤特典:Blue Spec CD2+スペシャルEPサイズパッケージ+特大ポスター+特大歌詞カード
通常盤収録曲
- スリラ
- 売旬 feat. 篠崎愛
- ギラギラ
- 売旬 feat. 志磨遼平(ドレスコーズ)
- 空中戦
女王蜂(ジョオウバチ)
2009年神戸にて活動開始。2010年「FUJI ROCK FESTIVAL '10」のROOKIE A GO-GOステージに出演し、その衝撃的なルックスとパフォーマンスでオーディエンスの注目を集めた。2011年3月に初の全国流通盤アルバム「魔女狩り」をリリース。同年9月にはアルバム「孔雀」でソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューを果たす。収録曲「デスコ」は映画「モテキ」のメインテーマに抜擢されたほか、彼女たち自身も本人役として映画に初出演し話題を呼んだ。2012年5月にギギちゃん(G)が利き腕の長期治療に専念するためバンドを“降板”するも、アヴちゃん(Vo)、やしちゃん(B)、ルリちゃん(Dr)の3人編成に不特定多数の演者を迎える形でバンドは活動を継続。しかし同年12月にバンドは無期限活動休止を発表し、2013年2月のSHIBUYA-AX公演が休止前最後のライブに。このライブの模様はDVD「白兵戦」としてリリースされた。2013年12月に行われたDVD先行上映会の会場にて再始動が発表され、バンドは2014年2月のワンマンライブ「白熱戦」で1年ぶりの復活を果たしている。2015年1月に新ギタリスト・ひばりくんが正式加入。同年3月にドラマ「怪奇恋愛作戦」のオープニングテーマ「ヴィーナス」を収めたアルバム「奇麗」、7月に篠崎愛や志磨遼平(ドレスコーズ)が参加したナンバーを含む5曲入りCD「失神」をリリース。