5人が同じスタンスでいれるポジションを探した

──ライブのMCでも世治さんは、「5人の個性が表れた、『SHAPE 5』というタイトルに恥じぬアルバムだ」とおっしゃっていましたよね。

木村　そうすね。お互い何も口出ししないっていうか。昔からそうなんですけどね。お互い好き勝手にやりながらインスピレーションを得る、そこが必然的に個性になっていくんじゃないかなって。

──ただ、好き勝手やって、ぶつかり合うことってないんですか？

五味　俺が最終的にミックスでまとめたんですけど、その今回のテーマが、みんなから集まった主張を出すっていうところだったんですよ。それって逆に言うと平坦になりがちだし、本当は主張が強い音を前に出したほうが伝わりやすいじゃないですか。それを、あえてバランスをとりながら作ったんですけど、僕としては再結成のテーマがそこにあったので。全員が主張し切れてないで終わるのが嫌だったっていう。

赤羽根　そこでちゃんとバランスをとれているんですよね。説明しにくいんですけど、音の定位っていうのがあるんですよ。それもちゃんと理に叶っているんで、エンジニアとしてもすごいなあって。

木村　今回、リズム録りでは外部のエンジニアがいたんですけど、ギター録りとミックスをどうしようかってなったときに、まこっちゃんはエンジニアもやっているので、いいんじゃないの？って。結果的には大成功だったよね。

五味　メンバー以外の人がやると、どうしてもわからないところがあったりすると思いますけど、結局人間関係を含めてリスタートだったわけで、自分がやったほうがいいんじゃないのかな、って。中村くんが見えないなあってなったら「中村くんを出さなきゃ！」とか、バネが多いと思ったら「バネはもうちょっとこのへんにいて」って外したりとか（笑）。5人が同じスタンスでいれるポジションを探そうと思って。

赤羽根　自分だったらギター出したいじゃないですか。でも、ここは自分以外の楽器を見せたほうがいいとか、客観的にジャッジできるようになりましたね、年を重ねたからか。

──自分がどうこうっていうより、バンドとしていいものを作ろうっていう心意気が見えますね。ただ、歌詞には世治さんのパーソナルな思いが出ている楽曲が多いなあと思って。特に10曲目の「心の花」とか。

木村　歌詞に関してはZEPPETらしさとか、外に向かって発信するっていうことよりも、自分の心の中にケジメをつけていくとか、前に向かっていくっていう部分を大事に書いたんですよね。それが特に出ているのはその曲だと思うんです。ちょっと不幸なことがいろいろと重なったから、それに対して向き合っていかなきゃいけないなっていう意思表示もあって。

──震災に限らず、いろいろありましたもんね。

木村　そうですね。このアルバムを作るにあたって、プロデューサーがいたんですけど、大阪で起きた通り魔事件で亡くなったんですよね……だからこれは彼の遺作というか、彼がやろうとしていた最後の作品になったんですけど……事件も、ちょうど俺のソロツアーのときの出来事だったので。あと、馬場育三（Dragon Ash）も亡くなっちゃってね。そういうこともあって……曲を書くことによって、必然的にお尻を叩かれるっていうね。

「がんばれよ」じゃなく「一緒にやろうぜ」

──ただ、今作に悲しいムードはないんですよね。むしろかつてのZEPPETよりも、優しさを感じさせてくれる作品になっているというか。そこには願いも込められているのかなって。

木村　うん、やっぱり願いですよね。悲しいことって乗り越えていかなければいけないんですけど、人それぞれやり方があって。人は悲しいときに泣くけれど、それは恥ずかしいことではないし、涙を流すことは美しいことだと思うんです。そういうことを乗り越えていけば明るくなっていくんじゃないかな、俺は正直に泣いてるよって、そう書けたことが大きかったな。前は強がりで、人前じゃ泣かないよって思っていたかもしれないんですけど。

──それって、本当につらいときに言ってほしい言葉だと思います。泣かないでがんばれよじゃなく、私も泣いているから一緒に泣いていいんだよって言われたほうが、どんなに気が楽か。

木村　そうですね。「がんばれよ」じゃなく「一緒にやろうぜ」っていうことが大事だと思って。震災でも、たまたま被害が大きい地区の出身ですけど、東京にいても気持ちを近づけないとって。うまく言えないですけど……そういう気持ちになっていましたね。

──そして、そんな世治さんの故郷のいわきを皮切りにツアーも始まりますね。でも、「二度と観られないかもしれないトリプルギター5人編成でのライブツアー！」っていうキャッチコピーが気になってしまったんですが（笑）。

木村　いやあ、なんと説明していいか（笑）。まだライブも2本しかやっていなくて、今後どうしていくかわからないままツアーを決めなきゃいけなかったので、なんとなく大げさに（笑）。

──うれしさと同時に「これからどうなるの!?」とも思わせられますが、そこはご本人たちも、ライブをやりながら考えていきたいということでしょうか？

木村　ま、それが本音ですね。

五味　この先のことを決めて動くっていうことを、まだ現段階ではしなくていいと思うし、やっていくうちにつまんなくなっちゃうかもしれない。でも、今はすごく楽しいですよ。

木村　俺もねえ、想像をはるかに超えて楽しいんですよ。アルバムも、ファンと同じ気持ちで聴けるんですよね。これって大事だなって思います。