ナタリー PowerPush - ZEPPET STORE

結成25周年で到達した 色彩豊かで“刺激的”なアルバム

2011年に木村世治(Vo, G)、中村雄一(B)、YANA(Dr)、赤羽根謙二(G)、五味誠(G)という5人体制で再結成を果たしたZEPPET STOREが、復活後2作目となるオリジナルアルバム「SPICE」をリリースする。ZEPPET STORE史上初のトリプルギター編成で制作された前作「SHAPE 5」に続く「SPICE」は、アグレッシブさに加えてより色彩豊かなサウンドが楽しめる、聴き応えのある1枚に仕上がっている。

前作に伴うツアー終了後まもなく、彼らはこのアルバムの制作に突入したという。今年結成25周年を迎えるベテランバンドがなぜ間髪入れずにレコーディングに向かったのか。木村、赤羽根、五味の3人に話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

今はほかのメンバーに委ねることができる

──まずは前作「SHAPE 5」リリース後に行った5人編成での初ツアーについて聞きたいと思います。五味さんと赤羽根さんというギタリストが2人いて、さらに世治さんもギターを弾くトリプルギター編成でのツアーはこれが初めてだったわけですが、新曲以外にも解散以前の曲を今の音で鳴らしていたのが非常に興味深かったです。

左から赤羽根謙二(G)、木村世治(Vo, G)、五味誠(G)。

赤羽根謙二(G) ライブもそうですけど、最初は音作りがやっぱり大変でしたね。こっちのギターも歪んでるし、向こう(五味)も歪んでるしで。ツアーの一発目がいわきで、ハコの鳴りもあるのかもしれないですけど、音がグワングワン鳴ってる感じがして。やっぱりギターが3本同時に鳴るって相当の音圧だと思うし、そこにベースの音も混ざるわけだから、そのへんはツアー中にいろいろ調整していって、ツアー終盤にはだいぶまとまってきたと思うんです。

──世治さんもギターが3本鳴ってる状況で歌うのは、それまでのZEPPET STOREとかなり違うと思うんですが。

木村世治(Vo, G) まったく違いますよね。でも2人のギターが鳴ってることで抜き差しできるようになったというか、自分は弾かなくてもいいかなって考えられるようになって。初めてギターを弾かずにハンドマイクで歌うことも増えたし、面白いですよ。

──以前のZEPPET STOREを引き継ぐというよりは、新しいZEPPET STOREを作ってる印象が強い?

五味誠(G) ああ、その通りかもしれないですね。もう全然違うものでしょう。トリプルじゃなかった……正常だったときは(笑)、世治も言ってましたけど逆に抜き差しできないっていうか、自分ががんばらなきゃっていう意識が強かったけど、今は本当にほかのメンバーに対して「はい、どうぞ!」と委ねることができるというか。ライブをやりながら、どこかで俯瞰で見られる自分もいるし、そういう中でみんなの持ち味を楽しんでる感覚ですよね。

赤羽根 例えばまこっちゃん(五味)がすごく歪んだ音を出していたら、こっちはもっと歪まなくてもいいかなとか音の混ざり具合もいろいろ考えられるようになったし、あえて歪まさないほうがアンサンブル的にいいと思えるようにもなったし。それにライブの場合、ギターのうち誰か1人がトラブってもほかに2人いるから大丈夫っていう安心感もあるし、そういう利点も増えましたよね。

ZEPPET STOREは音源を作ることに刺激を求めるバンド

──それでは、早くも完成したニューアルバム「SPICE」について話を聞いていきたいと思います。前作「SHAPE 5」から1年1カ月で新作が届けられるとは思ってなかったので、正直驚きました。

五味 結果的にそうなっただけなんですよ。「SHAPE 5」を作ってるときはこの5人で2作目も出そうっていう話はなくて、個人的にはツアーの手応えからちょっと次のアクションを考えようかなと思ってたんです。で、ツアーに出るとどの会場でもお客さんの反応がすごくて。さらに「SHAPE 5」で初めて体験した5人での活動がとても刺激的だったので、わりと自然に2作目を作ろうかっていうノリになっていた気がしますね。

──じゃあメンバーの誰かが「もう1枚作ろう」と言ったわけではなく?

五味 ツアーをやってみたらやっぱり楽しくて、「活動継続だね」みたいな。そうなると、ZEPPET STOREの場合は音源を作るのが自然な流れなんです。

木村世治(Vo, G)

木村 そうだね。ZEPPET STOREはライブをどんどんやるっていうよりは、音源を作ることに刺激を求めるバンドなんですよ。

──7月にはツアーの様子を収めたライブCD&DVD「COME AND GO -Live 2013-」、秋にはライブ会場限定シングル「SPY」のリリースもありましたし、2013年は常にZEPPET STOREとして動いていた印象があります。

木村 意外とリリースが続いてたんですね。

五味 がんばっちゃったね(笑)。

赤羽根 確かに常に作業をしてた感じではあります。

──すごく貪欲だなと思ったんですけど、意図せずこうなったんですか?

木村 そうです。メンバーみんな、きっとZEPPET STOREとして活動することが楽しかったんでしょうね。

──実際に制作が決まったのはいつ頃だったんですか?

木村 ツアーが終わってちょっと落ち着いて、DVDを作ろうと動き出してるくらいに2枚目を制作することが決まって。春くらいかな?

五味 5人編成で最初のアルバム「SHAPE 5」はZEPPET STOREを5人でリスタートするという意味で、初期衝動で作った印象が強くて。で、1stアルバムを出したばかりのど新人なんだから、2ndもこの勢いで作らなきゃと思ったんです。ツェッペリンの2ndアルバムみたいに。

赤羽根 いいね、その例え。

──再結成バンドの中には復活作を1枚作ると次のアルバムまでかなり間隔が空く人たちも少なくないですが、ZEPPET STOREの場合は解散前と同じペースで作品を発表し続けているのが興味深い点でして。

木村 「SHAPE 5」の制作時に、自分たちが思ってた以上に曲がすんなりできたことが大きいのかもしれないですね。正直曲作りにはもうちょっと時間がかかるかなと思ってたんですけど、ポポポンと出てきて。「このままいけるんじゃないの?」みたいなところもあったと思うんです。あとはみんな、「SHAPE 5」だけでは出し切れなかった部分をもうちょっと見せていきたいという気持ちもあったのかもしれないしね。

ニューアルバム「SPICE」/ 2014年1月15日発売 / DELIGHTS RECORDS / DRSCD-1001
[CD] 2800円 / DRSCD-1001
収録曲
  1. DELIGHT
  2. 夜に這う
  3. DAZZLING SUN
  4. 星くずと少年
  5. 無情な世界
  6. SELFISH
  7. MELODY
  8. DRIVE AWAY
  9. BREAKETHROUGH
  10. WALKING IN THE MOONLIGHT
  11. SPY
ZEPPET STORE Tour 2014
"GREAT DELIGHT"
  • 2014年3月7日(金)
    東京都 渋谷CLUB QUATTRO
  • 2014年3月15日(土)
    福島県 club SONIC iwaki
  • 2014年3月16日(日)
    宮城県 enn 2nd
  • 2014年3月21日(金・祝)
    大阪府 FANJ twice
  • 2014年3月22日(土)
    愛知県 池下CLUB UPSET
ZEPPET STORE(ぜぺっとすとあ)

1989年に結成されたロックバンド。1994年に1stアルバム「Swing, Slide, Sandpit」をリリース。このアルバムがhide(X JAPAN)の目に留まり、彼の設立したレーベルLEMONedから1996年に 2ndアルバム「716」をリリースした。1996年にアルバム「CUE」でメジャーデビュー。その後もライブやリリースなどの活動を精力的に展開するが、2005年に解散。6年後の2011年、東日本大震災を受けて楽曲配信でのチャリティを目的に再結成を果たす。再結成時より初代ギタリストの五味誠(G)も加わり、木村世治(Vo, G)、赤羽根謙二(G)、中村雄一(B)、YANA(Dr)との5人編成で活動を行う。8月には新曲「SMILE」を配信およびライブ会場限定CDでリリース。2012年5月、hideのメモリアルイベント「hide FILM ALIVE!! ~hide Memorial Day 2012~」にて再結成後初のライブを開催。同年12月に約8年ぶりのオリジナルフルアルバム「SHAPE 5」を発表した。2014年1月には10thアルバムであり、5人編成での2ndアルバムともなる「SPICE」をリリース。3月にはトリプルギター5人編成でのライブツアー「Tour 2014 "GREAT DELIGHT"」の開催が決定している。