吉澤嘉代子|10個の変化と手放したくないもの

変化95kgやせた

──作曲で煮詰まったりすることはなかったですか?

サビを何度か作り直しました。歌詞では恋人たちが異世界にたどり着いた瞬間にラジオが途切れて静寂に包まれる瞬間を書いているので、そこで元気だったら違うと思って静かにしたかったんですけど、でもそうすると地味になっちゃったので何回か修正して。

──編曲のゴンドウトモヒコさんとはどういう話を?

吉澤嘉代子

ゴンドウさんには曲のイメージを伝えて、打ち込みと生楽器が融合した感じにしてほしいとリクエストしました。アレンジを何回も修正してもらって。最終的にはすっごくお気に入りになりました。ゴンドウさんって本当にキテレツだな、カッコいいなって思いました。

──カップリングには吉澤さんが私立恵比寿中学に提供した「曇天」のセルフカバーが収録されています。オリジナルはシューゲイザーかと思うような暗いムードが大人になりかけているエビ中にハマっていましたが、吉澤さんのバージョンは“曇天”の向こうを見ているような明るさを感じます。これはあえてそうしたのでしょうか。

はい。もともと「曇天」は「大人のエビ中が見たい」というオーダーをいただいて作ったんです。自分が20歳ぐらいのときに書いた曲が元になっているんですが、当時の自分と同い年ぐらいのエビ中に歌ってほしいなと思って。自分では歌わないつもりで出した曲だったんですけど、去年のエビ中フェス(2019年6月開催「『MUSiC』フェス~私立恵比寿中学開校10周年記念 in 赤レンガ倉庫~」 / 参照:エビ中開校10年史を音楽でつないだ「MUSiC」フェスで豪華共演)でセルフカバーしたときにお客さんから「音源化してほしい」というお声をいただいたので、ちょっと作っちゃおうかなと思って録りました。ただ、今の私が歌うと怨念みたいなものになってしまいそうでどうしようかと。もう少し主人公との距離を置くというか、自分自身が主人公というよりも、この主人公の幸せを願うような気持ちで曇天の向こうに導けるような歌にしようと思いました。

──管楽器が入ることですごく晴れやかに、軽やかに聞こえますね。

うれしいです。

──レコーディング期間には特に変化したことはないですか?

うーん、なんでしょうかね……えーと……5kgやせた!

──(笑)。自粛期間中に運動か何かしたんですか?

それはありますね。ヨガとかしてました(笑)。

変化10初めての配信ライブ

──最近あった新しいことと言えば、配信ライブがありましたね(参照:吉澤嘉代子がスナックのママに扮してライブ配信、君島大空もゲスト出演)。観客がいない状態だと気持ちが乗らなかったり、戸惑ったりしませんでした?

緊張しいなので、お客さんがいると本当にもうわけわかんなくなっちゃうんですけど、配信ライブではスナックという設定で、愛犬ウィンディと常連客の君島大空さんだけという落ち着く環境で歌えたのですごくよかったですね。でも、どこを向いたらいいんだろうと、君島さんのことばっかり見ちゃって、なんか申し訳なかったです。

──ライブができないことはやっぱり寂しいですか?

寂しいですね。あとお客さんが「会いたい」って言ってくれると「私も会いたいよー!」って思う。そんなことを言ってくれるなんてかわいいですよね。あと、ライブをやっていると歌を歌ったり体を動かしたり、いろいろとバランスが取れるというか。家にいるとどんどん硬くなってしまうんですよ、体も心も。

──いっそ音楽活動を全部やめて、家で楽しく暮らすようなことは考えないですか?

考えられないですね。いや、どうなのかな……本当に向いてないなと思うときもあるし、これが天職だって思うときもあるし。天国と地獄の振り幅が大きいのでしんどいですけど、曲を作っているときと一緒で、完成した直後の数時間はもう本当に「自分が生きていることを許される時間」みたいに感じるんです。まだまだおばあちゃんになるまで続けたいなと思っています。続けられる限り。

──吉澤さんは意外と強いんですね。

そうなんですよ。私、けっこうバイトとかも続くし。

──意外と社会性がある(笑)。

社会性は本当にないんですけど、我慢強い。我慢強さは最近感じますね。

──我慢強いし、やり遂げた瞬間の全能感をひたすら求めている。

そうですね。本当に一番なりたかった仕事を今やっているので、大事にして手放したくないなと思います。

吉澤嘉代子