yonkey|「人生全額ベット」覚悟を決めた次世代アーティスト

音楽と生きていく覚悟を決めた夜

──新曲「iCON」はどのような思いで作ったんですか?

Klang Rulerとしてリリースする最初の曲なので「俺たち、これからやるぜ」っていう思いをしっかりと正直に出したくて。なので歌詞もメッセージもシンプルにしたかった。「iCON」という言葉には「新世代を象徴するアイコンになりたい」という意味も込めているし、もっと言うと、僕が好きなジェイデン・スミスの「Icon」という曲に対するリスペクトも込めました。

──歌詞の中にある「忘れない誓った18の夜」というのは、何があった夜なんですか?

僕がバンドを始めるきっかけになった夜ですね。UVERworldのライブを観た帰りに、そのまま家が隣だったドラマー(清水翔太)をバンドに誘ったのが18歳の夜だったんです。そこに自分の音楽作りに対する初期衝動があると思うし、あの景色をそのまま正直に書きたいなと思ったんです。

──バンドとしての曲作りはどのように?

基本的な骨組みは僕がやるんですけど、そこからのアレンジに関しては楽器陣のアイデアを取り入れるようにしているんです。Klang Rulerのメンバーは聴いている音楽のジャンルが全然違うんですよ。ジャズがめっちゃ好きなやつもいれば、邦ロックが好きなやつもいれば、R&Bが好きなやつもいて。

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──そうしたバンド内の多様性が音楽の独自性にもつながっているんですね。それぞれ好きなものが違ったうえで、それでもKlang Rulerが5人組バンドとして成立できているのはなぜなのだと思いますか?

僕らは音楽によってつながっているというよりは、人によってつながっている部分が大きいバンドだと思うんです。「こういう音楽をやりたいから、メンバーが集まった」というのではなくて、「こいつと一緒に音楽をやりたいからバンドをやっている」っていう感じなんです。バンドをやるってそこが大事で。いろんな苦悩を共にしていく仲間だからこそ、好きな音楽だけじゃなくて、人として分かち合える部分が必要だなと思う。それができるやつらだから一緒にバンドをやっているんだと思います。

──バンドとして活動する中で苦悩したこともありますか?

そうですね。高校生の頃からやっているバンドなので、怪しい大人に騙されたこともあったんです。変なイベントを組まされて、そのイベントの負債を背負わされたり。始めた頃は右も左もわからなかったのでいろいろありました。

──そうなんですね。それでも「iCON」でyonkeyさんは「人生全額ベット」と歌っている。なぜそこまで音楽と生きていく覚悟を決めることができたんですか?

音楽をやるって決めるまでは何も見つからなくて、全部が中途半端で「自分は何がやりたいんだろう?」とずっと思っていて、高校の頃は「俺、このまま大学に進んでもいいのかな?」ってモヤモヤした気持ちがあったんです。そんなときに自分を突き動かしてくれたのが音楽で、本当に直感だけで「俺はこれをやろう」と思った。当時は音楽の作り方なんて何も知らなかったんですけどね。そのときの衝動だけでここまで来たなって思います。

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Shazamで引っかかるまで完コピ

──「iCON」とほぼ同タイミングで、ソロ名義の新曲「タイムトリップ(feat. さなり)」もリリースされますが、ソロは「ダウナーラブ(feat. AAAMYYY)」(2019年7月リリース)、「Haunter(feat. Ace Hashimoto)」(2020年2月リリース)に続いての3曲目となりますね。楽曲がリリースされるごとに、トラックメーカーとしてのyonkeyさんの記名性を強く感じさせます。

ありがとうございます。これまでの3曲は確かに「これ、yonkeyっぽいな」とちょっとでも思ってもらえればいいなと思って作ってきました。サビでシンセの音が一気に分厚く鳴るアクセントとか、パーカッションの音だったりとか、「これはyonkeyの曲だな」と思ってもらえる要素は突き詰めてきた感じがあります。

──そういった独自の音作りは、恐らく「こうしよう」と頭で考えるだけではできないですよね。曲を作り続けることによって身に付くものというか。

そうですね。何百曲と作って、その中で見つけた「自分はこれだな」という音を集めてくるような感覚です。「キックはこれだな、スネアはこれだな」と音を集めていって、最終的にyonkeyのプリセットにたどり着く……そこまでいくには、やっぱりいろんな曲をカバーしたり、自分でも作り続けていくしかないですね。いきなり「自分はこの音だ」っていうものを見つけるのは難しいです。ひたすら作り続けるしかない。

──具体的にはどんな鍛錬を積まれてきたんですか?

専門学校に入った19歳の頃、2年間くらいを“修行期間”として、毎日誰かの曲のトラックをそのままコピーしていたんです。時間制限を設けたり、全部をシンセ1台だけで作ったりとかルールも定めつつ、「この曲はどうやったら作れるんだろう?」と考えて。やっぱり最初は全然違うものしか作れないんですよ。でも繰り返しているうちにだんだんと精度が上がっていって、最終的にはShazamで引っかかるくらいになりました(笑)。

──すごい!

スクリレックスの曲を完コピしたときに引っかかりました(笑)。途中から曲を聴くだけで「この曲はこのシンセを使っているな」とか「パラメータはこれくらいだな」とかわかるようになって。それでもぶっ飛んでいるサウンドの曲を聴くと「なんだ、これ?」と思うし、今でもカバーしたりします。

──最近ぶっ飛んでるなと思ったアーティストは?

そうだな……スクリレックスがやっているOwslaっていうレーベルがあるんですけど、そこからもリリースしたことがあるTennysonっていうエレクトロニックデュオがいるんです。その人たちは日本人ではないんですけど、今は藤沢に住んでいるらしくて。Instagramでやり取りもしているんですけど、兄のルークが作るサウンドはぶっ飛んでるなと思います。彼の曲を聴くと「どうなっているんだろう?」って思うんですよね。ところが彼は親切にも、自分のトラックをアナライズする動画をライブでアップしていたりするんです。それを見るとトラックが200個くらいあったり、わけのわからないプラグインをかけていたり……いろいろ発見がありましたね(笑)。

──トラックメーカー同士でのインスタを経由してのやり取りも多いんですか?

頻繁にやり取りをしている海外のトラックメーカーもけっこういます。海外の人にも積極的にデモや音源を送るようにしているし、「そっちにイケてるアーティストいる?」って聞いたりして。気になる人を見つけたら、まずはインスタを見るっていう感じです。