次世代バンドKlang Rulerの司令塔yonkeyインタビュー|初のアナログリリースから見えてくる“今”の音楽とは

Klang Rulerが初のフィジカル作品となるアナログ盤「ジェネリックラブ / タイミング ~Timing~」を9月にリリースする。

昨年12月に配信リリースしたブラックビスケッツ「タイミング ~Timing~」のカバーがTikTokを中心に広く拡散され、一躍その名を広く知らしめたKlang Ruler。これまでデジタルでしか音源をリリースしてこなかった彼らが、初のフィジカル作品の媒体にCDではなくアナログを選んだ理由はなんなのか。

音楽ナタリーではバンドのフロントマンであり、他アーティストへの楽曲提供を行うプロデューサーでもあるyonkey(Vo)に、バンドの成り立ちや初のアナログ盤の制作について話を聞いた。

取材・文 / 白鳥純一撮影 / 入江達也

5人それぞれの経験が何よりの強み

──yonkeyさん自身はプロデューサーとして音楽ナタリーの特集に登場してくださっていますが、Klang Rulerとしては“はじめまして”となります。まずはKlang Ruler結成時のお話から伺えますか。

高校3年生の頃に僕が「バンドをやりたいな」と思って、当時、まだドラムを一度も叩いたことがなかったSimiSho(Dr)を誘ったのがきっかけです。それからSimiShoと音楽の専門学校に進学して、かと(たくみ / B)と出会って。今でもそういった青春時代の衝動をときどき思い出しては、制作活動の励みにしています。

yonkey(Vo)

yonkey(Vo)

──高校時代に結成したということは、Klang Rulerはyonkeyさんがトラックメイカーとして活動を始める2019年よりも前から存在していたバンドなんですね(参照:yonkey×AAAMYYY「ダウナーラブ feat. AAAMYYY」対談)。そんなyonkeyさんのルーツとなるバンドが昨年11月に「ビビデバビビ」でメジャーデビューを果たしたわけですが、デビューしてからメンバーの関係性や心境に変化はありましたか?

関係性については、今でも当時のようにくだらない動画を観ながらみんなで笑い合ったりする変わらないところもあります。ただ楽しいというだけでやっていたバンドの活動が仕事に変わったということは大きいですね。徐々に僕らに関わってくださる方が増える中で、僕自身、仕事としての責任感が芽生えてきたように思いますし。メンバーのバンドに対する向き合い方や取り組み方にも変化があったように感じます。

──ちなみに資料によると、Klang Rulerの結成時、皆さんは「The Beatlesを目指す」と言っていたそうですね。

そうですね。高校生の頃はビートルズくらいしか音楽の偉人が思い浮かばなかったので、そのように言っていました(笑)。でも「多くの人に愛してもらえるようなポップスを作りたい」という目標は、今でも変わらずに持ち続けています。

──メジャーデビュー直前の昨年の夏、サポートギタリストだったGyoshiさん(G)、ソロアーティストとしても活動しているやすだちひろさん(Vo)の2名を正式メンバーとして迎えました。Klang Rulerは、yonkeyさんがプロデューサーとしてほかのアーティストに楽曲を提供するのみならず、メンバーそれぞれがさまざまなフィールドで活躍していますよね。

そうですね。例えばやすだは「POLY」という自身のファッションブランドを展開していることもあって、バンドの衣装を決めるときに頼りになりますし、SimiShoは照明の専門知識を持っているんですけど、それがミュージックビデオの撮影やライブのときに役立つ。そうやってそれぞれの経験を持ち寄ってバンドに還元できるところが、僕らの何よりの強みだなと思っています。

──さまざまな場所で活躍するメンバーの皆さんが、yonkeyさんが作る楽曲の魅力に惹かれて集まっているんですね。

僕の作る楽曲をみんなが信頼してくれていることがうれしいですね。僕が日々感じている「みんなの人生を背負っている」ような感覚や、「バンドを絶対に成功させる」という覚悟を、みんなにきちんと受け止めてもらえているので、それらが僕のモチベーションにつながっています。

──プロデューサーの役割を担う一方で、yonkeyさんはボーカリストとしてフロントマンの役割も担ってます。ボーカルに関してのこだわりは?

ボーカルは本当に難しくて……僕が今一番の課題としている部分でもあります。歌詞を正しく発音し、何を歌っているのかがわかるようにすることをとにかく心がけています。今回アナログでリリースする「タイミング ~Timing~」に関しても、原曲をじっくり聴き込みながら、自分らしく歌うことを重視しました。

yonkey(Vo)

yonkey(Vo)

海外のトレンドサウンドとアナログは相性がいい

──「ジェネリックラブ / タイミング ~Timing~」は、Klang Rulerとしては初めてのパッケージ作品になります。それがCDではなく、アナログレコードのみでの発売というのは珍しいですね。yonkeyさんが感じるアナログレコードの魅力を聞かせていただけますか。

僕自身を含め、今の若い子たちの中にはアナログレコードの再生機を購入する人もいるし、プレーヤーを持っていなくても、気に入ったジャケットのレコードを買って、家に飾って楽しんでいるという人が多いんです。温かみのあるサウンドはもちろんですが、ジャケットのデザインを楽しめる点でも、僕はアナログ盤を気に入っていて。日本のポップスに比べて海外は音数の少ないアレンジがトレンドになっているので、今作の2曲もできる限り音数を減らし、引き算を意識した音作りをしています。そういったサウンドは情報量をあまり詰め込めないアナログに乗せても決して“劣化”にならず、素直に楽曲を楽しんでもらえるから相性がいいんです。

yonkey(Vo)

yonkey(Vo)

──とはいえ、まだパッケージという意味ではCDが主流ですよね。今作であえてアナログを選択したことにこだわりを感じました。

僕も小学生の頃はCDを買っていましたけど、今の時代に「CDが発売された」と言われても、僕がリスナーだったら正直あまり響かなそうな気がして。

──そういう世代なんですね。

収益面に関しても、CDを買うことが当たり前だった時代以上の収益をストリーミングで得られているアーティストさんもいらっしゃると聞きます。それを考えると、アーティストにとってまず大事なのは、多くの人に楽曲を聴いてもらうこと。そのためには楽曲はもちろんですが、ミュージックビデオなども丁寧に作り込みながら、バンド活動全体のクオリティを高めていくことが必要だと思っています。そして、音楽を聴いてもらいやすくなった時代だからこそ、楽曲に触れてくださった方々にライブにも足を運んでもらって、グッズなどを買ってもらう。僕らをはじめとする若手ミュージシャンが活動を続けていくためには、そういったことが大切になっていくのではないかなと思います。

──ライブといえば、多くのアーティストと同様に、Klang Rulerもライブ活動を再開されたようですね。

そうですね。ライブでは、まだ音源としてリリースしていない楽曲も演奏しているんですよ。音源をきっかけに興味を持った方には、僕らの新しい曲を聴きに来てもらえたらうれしいですし、「ライブに行く価値があるバンドでありたい」という僕らの思いを直接感じて受け取ってほしいです。