yonkey|「人生全額ベット」覚悟を決めた次世代アーティスト

yonkeyが新曲「タイムトリップ(feat. さなり)」を4月1日に配信リリース。続けて自身が率いるバンド・Klang Rulerの配信シングル「iCON」を4月10日に発表した。

yonkeyは2018年にアソビシステムが行った全国オーディション「ASOBISYSTEM THE AUDITION 2018」で頭角を現した若手トラックメーカー / シンガー。AAAMYYYやアメリカのラッパー・Ace Hashimotoをフィーチャーしたソロ名義の楽曲を次々と発表したり、Klang RulerとしてはさまざまなアーティストとコラボするYouTube企画「Midnight Session」を配信したりと、話題を集めている。

音楽ナタリーではバンドの活動や新曲「iCON」に込めた思い、さなりを迎えたソロ名義曲第3弾「タイムトリップ」について詳しく話を聞いた。

取材・文 / 天野史彬 撮影 / 永峰拓也

僕らの世代には「界隈」の壁がない

──この間、居酒屋さんでお店の人に偶然「Midnight Session」の動画をお薦めされたんですよ。

えっ、本当ですか。うれしい。

──さまざまなアーティストとコラボする「Midnight Session」をきっかけにKlang Rulerやyonkeyさんの存在を知った人も多いんじゃないかと思うんですけど、そもそも「Midnight Session」はどのようなきっかけで始めたものだったんですか?

「Midnight Session」は最初からYouTubeにアップしようと思って始めたものではなかったんです。InstagramのIGTV用のコンテンツとして、既存の曲を僕ら流にアレンジしたもののショートバージョンをどんどん上げていこうってことで、tofubeatsさんやkZmさんの曲をカバーし始めたんです。そうしたら反応がすごくよくて、kZmさんご本人が反応してくれたりもしたんですよね。ここまで反応がいいならフルサイズで動画をしっかりと作りたいなと思ったし、さらにフィーチャリングアーティストを呼んでいろんな人を巻き込んだらもっと面白くなるんじゃないかと思って。それでまずはkojikojiちゃんを呼んで、tofubeatsさんの「RIVER」と、くるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」を撮ったんです。それが始まりですね。

──フィーチャーする人はどういう基準で選んでいるんですか?

世代感をすごく意識しています。僕らと年齢が近い、これから世間に認知されていくであろうアーティストたちに声をかけることで、同世代で一緒に盛り上げていけたらいいなと思って。

──配信リリースされるKlang Rulerの「iCON」という曲も“世代”について歌っている曲だと感じました。yonkeyさんは1997年生まれで今年23歳になりますけど、自分たちの世代の特別さはどんな部分にあると思いますか?

今までは“ジャンルの界隈”っていうものが明確にあったと思うんですよ。ラウドだったらラウド界隈、ヒップホップはヒップホップ界隈、ハードコアはハードコア界隈みたいな。でも僕らの世代は、そういう界隈の壁はほとんどなくなってきているなと思います。ジャンルで人が固まらず、むしろそこにある壁を取っ払って、お互いがお互いを受け入れながら集まることができる。そういう世代なんですよね、僕らは。自分の感覚でカッコいいなと思えたら、ジャンル関係なく仲良くなれる。

yonkey

昭和歌謡の魅力

──「Midnight Session」は映像の質感も独特ですよね。

映像に関してもこだわりがあって、メインの映像はシネマカメラを使ってミュージックビデオっぽく撮っているんですけど、そこにiPhoneで撮った映像をこまめに挿し込んでいるんです。それも万華鏡みたいなエフェクトがかかるグラスをiPhoneのカメラに近付けて撮るっていうアナログなやり方をしていて。そういう面白い仕組みを毎回入れていくのも楽しいんですよね。

──アナログと言えば、カバーする曲の中には山本リンダさんや和田アキ子さんといったアーティストたちの、いわゆる昭和の名曲といった風情の曲もありますよね。

そうですね。きっかけとしては、新しい学校のリーダーズをフィーチャーしたときに、山本リンダさんと和田アキ子さんのカバーをやったんですけど、そこで昭和歌謡の楽曲の完成度の高さに驚かされたんです。あの時代の曲を今のサウンドで再構築したら絶対に面白いなと思ったし、そこから昭和の楽曲を自分でディグることにもハマったんですよね。歌謡曲をカバーするときは、リスペクトを込めながら僕らの解釈を見せるというのがテーマで。ただの“歌ってみた”やカバー動画にはしたくないんですよね。どちらかというとリミックス的な感覚で見せることができればいいなと思っているんです。

──現代のトラックメーカーとして、昭和歌謡のどのような部分に魅力を感じますか?

例えば松田聖子さんの「赤いスイートピー」のような曲を聴くと、選ばれた言葉がすごくきれいだし、言葉遣いにも年代感がありますよね。あと一瞬を切り取ったかのような描写の美しさもいいなと思います。それに歌詞、メロディ、コード進行……いろんな部分で懐かしさを感じさせる。その時代に生きていない人にも懐かしさを感じさせるというのはすごく魅力的だなと思うんです。ヨーロッパの友達で日本の歌謡曲をすごく好きな子がいるんですけど、その子も「歌謡曲は懐かしい感じがする」って言うんですよ。

──面白いですよね、触れてきた言葉や文化が違うはずなのに懐かしいと感じさせるのは。懐かしさは音楽にとって重要な要素だと思いますか?

思います。最近は「いかに新鮮さと懐かしさを共存させることができるだろう?」ということをよく考えていて。新しいんだけど、なんだか懐かしいという音楽を作りたいんですよね。それができたらベストだと思う。そういう意味でも、歌謡曲は今後自分の中から外せないルーツになると思います。それに最近は歌謡曲のもっと前をたどりたいなと思ってシャンソンも掘るようになりました。そうするともっと歌謡曲を好きになるし、そうやって自分が影響を受けてきたものは正直に表現していきたいなと思います。