米津玄師「BOOTLEG」 PR

米津玄師|オリジナルってなんだ? “海賊盤”に詰め込んだ美と本質

過去の自分の文脈へのオマージュ

──12曲目の「Nighthawks」についても聞かせてください。全体的にエレクトロニックな音色の曲が多いアルバムの中で、この曲はストレートなバンドサウンドです。これはどういう曲として作ったんですか?

これは自分が中高校生くらいのときに心の大半を占めていた、自分に対してどうしたらいいかわからない焦燥感や不安や怒りを思い出しながら作った曲です。「明日死んでしまったら、世界が終わってしまったらどうなるだろう」とか、そういうことを考えていた頃の自分が好きだった音楽が、それこそBUMP OF CHICKENやRADWIMPSだったんですね。そしてもっと言うと、BUMP OF CHICKENにはColdplayやU2にさかのぼっていく流れがあるわけじゃないですか。そういう文脈を踏まえたうえで、そこへのオマージュとして作りました。

──なるほど。「Nighthawks」以外にも、それぞれの曲にいろんな影響源や踏まえているバンドやアーティストがあるんでしょうか。

ありますね。例えば「Moonlight」はさっき言ったように昨今のフランク・オーシャン以降のR&Bからの影響があるし、「fogbound」には最近のトラップミュージックのイメージがある。

──「春雷」はどうでしょう?

「春雷」は、ある時期のPhoenixのようなフランスのインディーポップのバンドのイメージですね。ギターやシンセの使い方とかに、そういう感じがある。

──「かいじゅうのマーチ」は?

「かいじゅうのマーチ」はThe Cureですね。The Cureとか1980年代のネオアコって、音だけ聴くとすごくキラキラしてるじゃないですか。でも歌詞を見ていると、根底に「どうせ俺なんて」みたいなニュアンスがある。The Smithsを聴いても、すごくメロディアスでメロウできらびやかな音像なんだけれども、実際に歌っていることは、すごくひねくれている。そんな音楽の影響を受けています。

──なるほど。つまり、いろんな曲にちゃんと影響を受けた音楽、下敷きにしたものがある。そういうこと自体が「BOOTLEG」というタイトルが持つ意味の裏付けになっていると。

そうですね。

自分の実態は果たしてなんなのか

──ジャケットのイラストについても話を伺えたらと思います。今までと作風が変わりましたが、これも米津さんが自分で描かれたものですよね?

そうです。俺は自分の描く絵をマンガの絵だと思ってるんですけど、そこから離れてみても面白いんじゃないかと思って。昔からこういう絵を描きたいなとも思っていたので、今回やってみました。いろいろ試行錯誤はありましたけれど。

──絵の中央には首のない人が描かれています。このモチーフにも「自分の頭今すぐ引っこ抜いて」と歌っている「Moonlight」と通じ合うものを感じましたが、そのあたりはどうでしょう?

「本物なんて1つもない」と言うか、自分の実体は果たしてなんなのかっていうことだと思うんですよね。さっき話した“過剰なオリジナリティ”というところで言うと、自分というものは、所詮偽物である。いろんな人間から教えてもらったり、譲り受けたり、噛みちぎったものから成り立っている。そういう継ぎ接ぎのコラージュのような自分は、ある種ものすごく透明な存在だと思っているし、そういう人間がわざとらしく開け放たれた扉ではない“奥のほう”に進んで行けるんだと思う。そもそも俺は自分が歪な人間であるという自意識があって。そういう人間がこれほどまでに美しく、かつポップな音楽を作れる。それは、自分にとっては「Moonlight」っていう曲の歌詞にも出てくる、「文化祭の支度みたいにダイナマイトを作る」っていうことだと思うんです。

──ハチ時代の曲からそれは一貫していると思います。

そうですね。ずっとそうやって何かを作ってきたなと思います。偽物であるからこそ美しい。それはあえて言えば、それこそが自分のオリジナリティであって、それこそが自分にしかできないことである。そういうものを文化祭でダイナマイトを売るように作っている感じなんですよね。

砂漠に抱く救いの感情

──わかりました。もう1つ、先ほどお話の中で出てきた「普遍的なもの」について、もう少し深く掘り下げて聞ければと思います。というのも、米津玄師というアーティストはその普遍的なものを常に追い求めてきたと僕も考えているんですが、「Bremen」と「BOOTLEG」とでは、普遍性へのアプローチが違うと思っているんですね。

はい。

──「Bremen」では、自分と向き合って、自分の中にあるものをひたすら探っていった。結果、そのときのインタビューでも話しましたが(参照:米津玄師「Bremen」特集)、おとぎ話のような普遍性にたどり着いた。一方、「BOOTLEG」では、いろんな文化圏、いろんな場所にいる人と、あえて交流を図った。結果として「この人はこういうポイントでわかりあえる」という点と点を紡いでいったようなアルバムになった。

そうですね。1曲1曲でやっているのは本当にそういうことなんですよね。だから関係性のアルバムだと思います。そのリンクする部分をちゃんと見極める。自分はそれがものすごくうまくできるという自負があって。ずっとそういう引っ張り合いの中で音楽を作ってきたんだと思うんですよね。「ナンバーナイン」の歌詞の中にも「未来と過去が両手を掴んで引っ張り合う」という1節があるんですけど、それは自分が音楽を作る中でもっとも大切にしていることかもしれなくて。引っ張り合いの中で、どちらにも屈さずに、その両方がちょうどいい部分、お互い心地よい部分がどこにあるのかを探していくんです。

──「ナンバーナイン」からこのアルバムは始まったわけですよね。そして「砂の惑星」という曲もアルバムの重要なピースの1つになっている。どちらも砂漠をモチーフにした曲です。これに限らず、砂漠というのが米津さんの作品世界の中で重要なモチーフになっていると思うんですが、これはなぜなんでしょう。

なぜかと言われると難しいですね……まず最初に、バンド・デシネの巨匠のメビウスという人がいて、メビウスの描く砂漠が自分の中の原風景としてある。「風の谷のナウシカ」もそうですね。やっぱり、砂漠が好きなんですよね。それは、自分の中で矛盾に近いような感覚なんですけど。砂漠に救いのような感情を抱くことがあるんです。廃れていって荒廃しているというネガティブなイメージもあるんですけれど、同時に、救いと言うかすがすがしさみたいな、そういうポジティブな感情を抱くこともある。それが一体どういうものなのか、自分でもよくわからないんですが。

──今話してくれたような砂漠に救いを感じるという感覚は、実はこのアルバムの裏側にあるとても重要なポイントなのかもしれないと思いました。

そうですね。砂漠のイメージというものは、自分にとっては死ぬこととすごく近いところにある気がしていて。例えば「ナンバーナイン」は、100年後や200年後、はるか未来遠くの世界、東京が砂漠になってしまったらどうなるだろうっていうところから作り始めた曲で。今自分は東京に住んでますけど、砂漠になった東京には確実に自分は生きていないわけですよね。周りにいる人間もみんな、影も形もない。けれどそこで起きている出来事は、やっぱりどこかで今から脈々と受け継がれているものであって。そういうものを、すごくすがすがしいなと思う瞬間があるんですよ。結局みんな死んでしまうというところを救いに感じる、と言うか。そうだからこそ、今を美しく生きようと思うわけで。でもその一方で、死んでしまうことに対する恐ろしさや不安、いろんな至らなさによって何かが滅んでしまうこと、誰かの怠慢やミスで命を絶たれてしまうことへの痛みのような感覚も自分の中にある。そういう死に対して思うことと砂漠というのが、すごく近い感覚だなと自分の中では思ったんですよね。

米津玄師(Photo by Jiro konami)
米津玄師「BOOTLEG」
2017年11月1日発売 / Sony Music Records
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CD収録曲
  1. 飛燕
  2. LOSER
  3. ピースサイン
  4. 砂の惑星( +初音ミク )
  5. orion
  6. かいじゅうのマーチ
  7. Moonlight
  8. 春雷
  9. fogbound( +池田エライザ )
  10. ナンバーナイン
  11. 爱丽丝
  12. Nighthawks
  13. 打上花火
  14. 灰色と青( +菅田将暉 )
初回限定映像盤DVD収録内容
  • LOSER Music Video
  • orion Music Video
  • ピースサイン Music Video
  • ゆめくいしょうじょ Music Video

ツアー情報

米津玄師 2017 TOUR / Fogbound
  • 2017年11月1日(水)大阪府 フェスティバルホール
  • 2017年11月2日(木)大阪府 フェスティバルホール
  • 2017年11月4日(土)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
  • 2017年11月5日(日)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
  • 2017年11月8日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ
  • 2017年11月9日(木)埼玉県 大宮ソニックシティ
  • 2017年11月18日(土)徳島県 鳴門市文化会館
  • 2017年11月19日(日)愛媛県 松山市民会館
  • 2017年11月23日(木・祝)福岡県 福岡サンパレス
  • 2017年11月24日(金)福岡県 福岡サンパレス
  • 2017年11月26日(日)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
  • 2017年11月29日(水)新潟県 新潟県民会館
  • 2017年12月1日(金)北海道 ニトリ文化ホール
  • 2017年12月7日(木)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2017年12月9日(土)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
  • 2017年12月14日(木)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
  • 2017年12月16日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2017年12月17日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2017年12月23日(土・祝)岡山県 岡山市民会館
  • 2017年12月24日(日)広島県 上野学園ホール
米津玄師 2018 LIVE / Fogbound
  • 2018年1月9日(火)東京都 日本武道館
  • 2018年1月10日(水)東京都 日本武道館
米津玄師(ヨネヅケンシ)
男性シンガーソングライター。2009年より「ハチ」という名義でニコニコ動画にVocaloid楽曲を投稿し、総合2位の「マトリョシカ」をはじめ数々のヒット曲を連作。2012年5月に本名の米津玄師として初のアルバム「diorama」を発表した。全楽曲の作詞、作曲、編曲、ミックスを1人で手がけているほか、アルバムジャケットやブックレット掲載のイラスト、アニメーションでできたビデオクリップも自身の手によるもの。マルチな才能を有するクリエイターとして注目を集めている。2013年5月、シングル「サンタマリア」でメジャーデビュー。2014年4月に米津玄師名義としては2枚目のアルバム「YANKEE」を発表し、6月には初ライブのワンマン公演を東京・UNITで開催した。2015年8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」で野外フェス初出演を果たす。2016年にはルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」の公式イメージソングとして、新曲「ナンバーナイン」を書き下ろし、同年9月に両A面シングルとして「LOSER / ナンバーナイン」をリリース。10月には中田ヤスタカとタッグを組み、映画「何者」の主題歌「NANIMONO (feat. 米津玄師)」を発表、12月には初の単行本「かいじゅうずかん」を発売した。2017年2月にテレビアニメ「3月のライオン」のエンディングテーマを表題曲とする「orion」をリリース。6月にはテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニングテーマ「ピースサイン」をリリース。8月には、初音ミク「マジカルミライ2017」のテーマソング「砂の惑星」をハチ名義として、映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の主題歌をDAOKO×米津玄師名義としてプロデュースした。11月に4枚目のオリジナルアルバム「BOOTLEG」を発表する。