米津玄師|あの頃の自分との対話

ボカロ曲との向き合い方の変化

──そして3曲目には「ゆめくいしょうじょ」を収録。これは2010年にハチ名義で発表したボカロ曲「沙上の夢喰い少女」のセルフカバーですね。

ボカロ曲のカバーはライブではやってたんですが、音源として発表したことは1回もなかったんです。その理由はいろいろあるんですが、まず、ボカロ曲として出したものを自分で歌う必要性をまったく感じていなかったんですね。自分で歌うために作ったものではないという気持ちが強くあったと言うか。よく「ボカロ曲をカバーしてください」って言われてたんだけど、望まれてることはやりたくないというひねくれ精神もあったし。

──では、なぜこのタイミングでボカロ曲を歌ってみようと?

最近、ハチとして作ったボカロ曲がいい意味で“過去”になってきたんです。ちょっと(カバーすることを)匂わせる形で、この曲の歌詞のテキストファイルの写真をTwitterに上げたら、「新曲ですか?」という人がすごく多くて。この曲を知らないってことが、すごくうれしかったんですよね。俺にとっても過去のものになりつつあったし、そもそも曲の存在自体を知らない人がこんなにいる。この曲を自分で歌って、再構築するにはちょうどいいタイミングなのかなと思ったんですよね。

──実際、この曲を自分で歌ってみた感触はどうでした?

まず、発表当時とはまったく違う形の曲になってるんですよ。原曲はもっと疾走感があったんだけど、今回の「ゆめくいしょうじょ」はかなりBPMを下げているので。「今自分が歌うなら、この曲はこういう形になる」ということだと思うし、歌っていても全然違和感はありませんでした。例えば1年前に歌っていたら、もしかしたらしっくりこなかったかもしれないし、アレンジや歌のニュアンスも違ったものになったかもしれない。そういう意味でも、やっぱりこのタイミングだったんだろうなと思います。

──「ゆめくいしょうじょ」のボーカルはすごく生々しいし、声自体が含んでいる情報量もすごくて。キャリアを重ねるにつれて、米津さんの歌に対する重心のかけ方が重くなっている印象もあります。

そうですね。以前はホントに自分の声が好きじゃなかったんですよ。理想に近付けるためにはどうしたらいいかずっと考えてきたし、周りの音で補ったり、いろいろな試行錯誤をしてきて。でも、作品を重ねるごとに音楽的にも成長できてると思うし、歌の表現力も上がってきて、少しずつ自分の声を許せるようになってきたんです。それは音楽の作り方にも反映されているかもしれないですね。ただ、歌が真ん中にあるというのはずっと変わらないんですよ。音楽を作るというよりも、自分は歌を作る人間なんだという感覚でここまでやってきてるので。それがブレたことはいままで一度もないですね。

初音ミクとの間に感じた距離

──今回のシングルとは別に、初音ミク「マジカルミライ2017」のテーマソング「砂の惑星」をハチ名義で発表したことも話題を集めています。

初音ミクを使って楽曲を作ったのは7年ぶりだったんですが、そのときに印象深い出来事がありました。自分自身と初音ミクの声にちょっと距離ができてたんですよね。それはたぶん、自分の声に慣れ過ぎたからだと思うんですよね。さっき「自分の声が好きではなかった」と言いましたが、「自分で歌う」って決めてからは自分の声との格闘だったんです。活動を続けていく中で少しずつ自分の声が許せるようになってきたんですが、そうすると不思議なことに、ボカロの声があまりよいと思えなくなって。それはつまり、自分とボカロの間に距離ができたからだと思うんです。今回「砂の惑星」という曲を作るにあたっては、その距離感に対応する必要があったし、そのためにかなり長い時間を要したんですよ。すごく悩みましたけど、ちょうどいい落としどころを見つけられたと思ってます。

──「ゆめくいしょうじょ」「砂の惑星」を通して、VOCALOIDとの関係を再確認したのかもしれないですね。

うん、そうですね。「砂の惑星」は初音ミクの10周年を記念した「マジカルミライ 2017」のテーマソングの依頼を受けて作った曲で、その話がなければ、このタイミングでボカロ曲を作ってなかったと思うんです。そういう出会いやきっかけ、いろいろな関係性の中で音楽が生まれるんだなって改めて感じたというか。

──自分と向き合うだけではなくて、他者、外部との関わりも重要だと。

はい。それはたぶん、誰でもそうだと思うんですよ。何かとの関係によって自分が存在するのであって、孤立無援で生活しているわけではないので。すべての人が社会において、周囲の人たちとの心地いい距離を探しながら生きてるわけじゃないですか。自覚しているかどうかの差があるだけで、それはごく当たり前の営みだと思いますね。

米津玄師

ピースクロス

タテのカギ 16
値段などが「高い」の対義語は?

米津玄師のクロスワード・ピースクロス実施中。
詳しくは週刊少年ジャンプ6月21日発売号の「米津玄師のクロスワードパズルの設問」をご覧ください。

米津玄師「ピースサイン」
2017年6月21日発売 / Sony Music Records
米津玄師「ピースサイン」ピース盤

ピース盤[CD+DVD+ピースリング]
2052円 / SRCL-9454~6

Amazon.co.jp

米津玄師「ピースサイン」ヒーロー盤

ヒーロー盤[CD+赤ジュエルケース+ヒロアカTGCカード]
1620円 / SRCL-9457

Amazon.co.jp

米津玄師「ピースサイン」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / SRCL-9458

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. ピースサイン
  2. Neighbourhood
  3. ゆめくいしょうじょ
  4. ピースサイン(Instrumental)
ピース盤付属DVD
  • 「僕のヒーローアカデミア」ノンクレジットオープニングムービー
米津玄師 2017 TOUR / Fogbound
  • 2017年11月1日(水)大阪府 フェスティバルホール
  • 2017年11月2日(木)大阪府 フェスティバルホール
  • 2017年11月4日(土)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2017年11月5日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2017年11月8日(水)埼玉県 大宮ソニックシティ
  • 2017年11月9日(木)埼玉県 大宮ソニックシティ
  • 2017年11月18日(土)徳島県 鳴門市文化会館
  • 2017年11月19日(日)愛媛県 松山市民会館
  • 2017年11月23日(木・祝)福岡県 福岡サンパレス
  • 2017年11月24日(金)福岡県 福岡サンパレス
  • 2017年11月26日(日)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
  • 2017年11月29日(水)新潟県 新潟県民会館
  • 2017年12月1日(金)北海道 ニトリ文化ホール
  • 2017年12月7日(木)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2017年12月9日(土)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
  • 2017年12月14日(木)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
  • 2017年12月16日(土)愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール
  • 2017年12月17日(日)愛知県 名古屋国際会議場 センチュリーホール
  • 2017年12月23日(土・祝)岡山県 岡山市民会館
  • 2017年12月24日(日)広島県 上野学園ホール
米津玄師(ヨネヅケンシ)
男性シンガーソングライター。2009年より「ハチ」という名義でニコニコ動画にVocaloid楽曲を投稿し、総合2位の「マトリョシカ」をはじめ数々のヒット曲を連作。2012年5月に本名の米津玄師として初のアルバム「diorama」を発表した。全楽曲の作詞、作曲、編曲、ミックスを1人で手がけているほか、アルバムジャケットやブックレット掲載のイラスト、アニメーションでできたビデオクリップも自身の手によるもの。マルチな才能を有するクリエイターとして注目を集めている。2013年5月、シングル「サンタマリア」でメジャーデビュー。2014年4月に米津玄師名義としては2枚目のアルバム「YANKEE」を発表し、6月には初ライブのワンマン公演を東京・UNITで開催した。2015年8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」で野外フェス初出演を果たす。2016年にはルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」の公式イメージソングとして、新曲「ナンバーナイン」を書き下ろし、同年9月に両A面シングルとして「LOSER / ナンバーナイン」をリリース。10月には中田ヤスタカとタッグを組み、映画「何者」の主題歌「NANIMONO (feat. 米津玄師)」を発表、12月には初の単行本「かいじゅうずかん」を発売した。2017年2月15日にテレビアニメ「3月のライオン」のエンディングテーマを表題曲とする「orion」をリリース。6月にはテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」オープニングテーマを表題曲とする「ピースサイン」を発表する。また11月からは全国各地を回るワンマンツアー「米津玄師 2017 TOUR / Fogbound」を開催することも決定した。