音楽ナタリー PowerPush - 矢沢洋子

紆余曲折経て見つけた“大切な場所”

矢沢洋子がニューアルバム「Lady No.5」をリリースする。前作「Bad Cat」に引き続きLA在住ギタリストのToshi Yanagiがプロデュースした本作は、THE NEATBEATSの真鍋崇(Mr.PAN)作曲のロッキンな表題曲に加え、四つ打ち、The Banglesのカバーなど、さまざまなサウンドが詰め込まれた作品に仕上がっている。このバラエティに富んだ作品と、彼女の音楽活動全般について本人に話を聞いた。

取材・文 / 宮崎敬太 インタビュー撮影 / 雨宮貴透

ライブハウスとの出会い

──今作「Lady No.5」は前作「Bad Cat」に引き続き、かなりバラエティに富んだ内容で、アーティスト・矢沢洋子のさまざまな表情を垣間見ることができました。

ありがとうございます。

──でも今作と前作の内容が多彩すぎることに加えて、前々作「ROUTE 405」とも方向性が違うので、逆に洋子さんの幹になる部分はどこにあるんだろうと感じてしまったんです。なので、本日は“アーティスト・矢沢洋子”についていろいろお話を伺いたいと思います。

なるほど。

──そもそも洋子さんが音楽をスタートさせたきっかけはなんだったんですか?

矢沢洋子

私、小さい頃はアメリカのロサンゼルスで暮らしていたんです。大学のタイミングで日本に戻ってきたんですけど、最初は本当に普通の女子大生でした。ライブハウスに行くような人なんて周りに誰もいなかったし。でもひょんなきっかけで(井上)陽水さんの娘さんの(依布)サラサちゃん達と仲よくなって。それである時に「なんか友達がみんなで今渋谷で飲んでるらしいんだけど、顔出してみる?」って彼女が誘ってくれて。「私は知ってる人いないけど……」みたいな(笑)。

──そういうのドキドキしますよね。

私も「いいのかな?」みたいな感じで恐る恐る行ったんですよ。そのときいたのがチャットモンチーのあっこびん(福岡晃子)とかサクラメリーメンのイッペイとか。あっ、UG(ギターウルフ)もいた。私が「全然友達いないんですよー」って言ったら、あっこびんが「鍋とかいろいろやってるから、連絡先教えて」って言ってくれて。そしたら本当に毎回いろいろ呼んでくれるようになって、そこからライブハウスにも行くようになったんです。3日に1回は何かあるような感じでしたね。

──3日に1回というのはすごいですね(笑)。

確かに(笑)。でもその中で先輩や友達も増えていって、「自分でも何かやってみたい」って思うようになってきたんです。

矢沢洋子がやりたいこと

──the generousはどのようにスタートしたんですか?

あの頃はただ「歌ってみたい」という思いが強くて。それを意思表示したらいろんな大人の人たちが動いてくれてあれよあれよという間に(笑)。でも今振り返ると、あの頃は自分が何をしたいのか、どのジャンルでやりたいのか、まだ何もわかってなかったと思います。

──the generousでの活動はどのようなものでしたか?

矢沢洋子

楽しかったですよ。ビデオクリップとかアルバムジャケットの撮影とか、テレビで観ていたような世界が目の前に展開されて行って。「メイクさんってこんな感じなんだ」とかね。すべてが新鮮でした。でも同時にあっこびんとかと仲よくなってライブハウスのシーンとの関係が深くなってくると、the generousの音楽性と自分のやりたいことに差を感じるようになってきたんです。

──洋子さんのやりたいこと、というのは?

パンクとかロックですね。それでthe generousに関しては「私がやりたいのはこれじゃない」って思ったんで、やめることにしたんです。

──the generousでの活動は半年くらいですもんね。

ああいうプロジェクトって動き出したら止まらないものなんですけど、あのタイミングならまだ引き返せると思ったんですよ。だからすぐ「やめたい」って。そこまで大ヒットしてなかったので、色々ありつつもやめられました(笑)。

ニューアルバム「Lady No.5」 / 2014年7月23日発売 / 1800円 / GARURU RECORDS / GRRC-20005
ニューアルバム「Lady No.5」
収録曲
  1. NAKED LOVE
  2. BLACK SUNSHINE
  3. 東京騒音 スクランブル
  4. Walk Like An Egyptian
  5. Lady No.5
  6. ガラクタ
矢沢洋子(ヤザワヨウコ)

東京出身の女性ボーカリスト。12歳のときに家族とともに米ロサンゼルスに移り住み、高校卒業後帰国。2008年10月にthe generousとしてメジャーデビュー。その後アーティスト名を本名・矢沢洋子にし、2010年8月に1stアルバム「YOKO YAZAWA」をGARURU RECORDSからリリースする。精力的なライブ活動を行いつつ、2011年8月に2ndアルバム「Give Me!!!」を発表。さらに2012年10月には矢沢洋子&THE PLASMARS名義のミニアルバム「ROUTE 405」をリリースした。2013年に矢沢永吉プロデュースのミニアルバム「Bad Cat」、そして2014年7月にミニアルバム「Lady No.5」を届ける。同作の表題曲はTHE NEATBEATSのMr.PANこと、真鍋崇が作曲している。