ナタリー PowerPush - 矢沢洋子
自然体の貪欲ロック 2ndアルバム「Give Me!!!」
胸が熱くなるロックを鳴らしたい!と一念発起した矢沢洋子がグループ活動にピリオドを打ち、ソロアーティストとしてリスタートしたのは昨年2月。8月には1stアルバム「YOKO YAZAWA」を発表した彼女が、1年を経て2ndアルバム「Give Me!!!」を完成させた。ライブを重ねたことでより磨き上げられたロックスピリットはもちろん、かつてないほど豊かな情感を漂わせる楽曲には、明らかに進化した彼女の姿が刻まれている。
取材・文 / 久保田泰平 インタビュー撮影 / 佐藤類
今回はシンプルに素の自分が出てきたんじゃないかな
──アルバムを聴いての第一印象で、前作と比べて優しい面が出てるなあと思いました。前作ではシンプルに「ロックやりたい!」という気持ちが非常に強かったとお聞きしてたんで、今回は少し落ち着いたのかなと。
そんなに意識していたわけではないですが、振り返ってみると1stアルバムのときは良い意味でも悪い意味でもすごく気合が入っていたなあって思います。そこから1年経ったところで、すごく肩の力が抜けたというか、すごくシンプルに素の自分っぽい感じが出せたんじゃないかなって、自分では分析しています。なので、楽曲の面にしてもそうですし、ビジュアルイメージも……前回は画に描いたような感じというか、ジョーン・ジェットみたいなビジュアルだったのに比べて、今回はちょっと化粧を落として、柔らかくしたところはあります。今回の10曲の中には「SOS」や「Give Me!!!」というアップテンポの曲で自分の中のストレートなロック観を出してますが、ミドルテンポで包んであげる曲もあるので、そこが“優しい”印象につながっているんでしょうね。
──1stアルバムを出して以降、ライブもたくさんやられてきたと思いますが、そういった活動で得たものが作品に反映されていたりしますか?
去年、初めての経験だったのがインストアライブで。かなり本数をやったんですが、インストアって最初は慣れてないし、ライブハウスじゃない場所で歌うのってどうなんだろうって思っていたんですね。照明も明るいし、音は絞らなきゃいけないし、フルバンドじゃないし、そういう中で歌うのってどうなのかな?という感じでした。でも数をこなしていくうちにだんだん慣れてきて。3、4曲しか歌えないしショッピングモールに来るお客さんって興味がなかったら立ち止まらないし、つまらなかったら買い物のために移動してしまうので、どうやったら人に届くのかということを、インストアを通じて考えるようになりました。なので、多分その、インストアをやっている時期と歌詞を書いている時期が同じぐらいだったので、気持ちが歌詞に……メッセージ性というのかな、いろんな年齢層の人が聴いて共感できるような歌詞になったんじゃないかな、とは思います。あとは、渋谷のMilkywayというライブハウスで毎月やっているイベントでは毎回ゲストを呼んで、いろんな人に参加してもらっているんですが、それもいろいろなお客さんに私のステージを見せるいい機会だと思っているので。インストアともども今後も続けていきたいですね。
“夏感”がある曲を作りたいなって
──アルバムの制作なんですが、今回初めて参加している作家さんもいらっしゃいますし、Myspaceで曲を募集したりもしていて。Myspaceで選ばれた「アゲハ」は意表を突いた曲ですね。すごくポップだしメロディアスで。
募集した時点で、アッパーな曲は揃っていて、「SOS」や「too late」あたりは1stアルバムを出す前からライブで歌っていた曲なんです。そういうこともあって、ほかにアッパーでイイ曲もあったんですが、この曲に決めました。「アゲハ」はもう一目惚れというか、デモを聴いてすぐに「これ、すごく好き! 歌いたい!」と思った曲ですね。だから、歌詞もスイスイ書けて。まあ、今回は「アゲハ」に限らず、わりと順調にトトトントーンと作業が進んで、歌録りに関しては3月ぐらいに全部終わっていたぐらいで、歌詞もさほど煮詰まらないで書くことができたんです。新曲はできた直後から少しずつライブで歌い始めていて……あまり早い段階から歌うのもどうかなというのはあったんですが、今はもう結構歌っていますね。
──意表を突いたといえば「夏風」という曲もそうですね。ノスタルジックな雰囲気で、ちょっと胸がキュンとなるようなミドルナンバーで。
「夏風」は今回のミドルの中でもすごく気に入っている曲です。リリースが夏だっていうことを意識して、“夏感”がある曲を作りたいと思って歌詞を書きました。デモを聴いたときにすごく懐かしい、穏やかな気持ちにさせてくれるメロディだなと思ったので、歌詞もどっぷりそっちのほうに合わせていこうと。誰しもが経験したであろう初恋の風景、それを男の子目線で書いてみました。歌っていて非常に気持ちいい曲ですね。夏にぴったりだなって思います。
矢沢洋子(やざわようこ)
東京出身の女性ボーカリスト。12歳のときに家族とともに米ロサンゼルスに移り住み、高校卒業後帰国。2008年10月、ユニットを結成しメジャーデビュー。その後アーティスト名を本名に戻し、2010年8月に、よりロック色を強めた1stアルバム「YOKO YAZAWA」をリリース。精力的なライブ活動を行いつつ、2011年8月に2ndアルバム「Give Me!!!」を発表する。