ナタリー PowerPush - 矢沢洋子
バンドサウンド全開!最新アルバム「ROUTE 405」
矢沢洋子が約1年2カ月ぶりのオリジナルアルバム「ROUTE 405」を発表。ソロ名義として3作目となる今回は、サポートメンバーだったTHE PLASMARSと本格的にタッグを組み、今まで以上にバンドの音作りにこだわった1枚となった。
今年2~4月に40本に及ぶ全国ツアーを敢行した彼女はインタビュー中、ライブに対する熱い思いも幾度となく語ってくれた。ライブで聴いてこそ完結するロック魂あふれる本作。そこに込めた情熱を、このインタビューから感じ取ってもらいたい。
取材・文 / 川倉由起子
バンド名はギターウルフのセイジが名付け親
──最新ミニアルバムは、初の“矢沢洋子 & THE PLASMARS”名義ですね。まずはTHE PLASMARSについて紹介していただけますか?
THE PLASMARSはギターのドラちゃん(沢頭たかし)、ベースのブッチー(川渕文雄)、バンマスでドラムのいっきゅうさん(一ノ瀬久)の3人なんですけど、もう4年くらいの付き合いになるのかな? 以前組んでたユニットの頃からバックについていてもらって、すごく仲がいいんです。THE PLASMARSという名前では今回が初なんですけど、ずっと一緒にやっているメンバーですね。
──なるほど。でもなぜ今回からTHE PLASMARSに?
これはですね、実は自分たちじゃなくてギターウルフのセイジさんが勝手に決めたんですよ(笑)。
──えっ、どういうことでしょう?
元々仲良くさせていただいている大先輩なんですが、2カ月くらい前に初めて対バンをさせてもらって。そうしたら楽屋で突然「洋子ちゃん、“矢沢洋子”だけだと何のジャンルの音楽をやってるかわからないよ。ロックンロールやってるんだったらバンド名を付けたほうがいいよ」って言われて「THE PLASMARSだ! 決定!」みたいな(笑)。そんな感じで決まっちゃったんです。
──皆さん、キョトン……だったんじゃないですか?
はい、もう「えっ!?」みたいな(笑)。でも以前から他の方にも「絶対バンド名を付けたほうがいい」ってアドバイスをされてたし、その日いきなりセイジさんに言われたのもどこか運命的なものを感じて。ただユニット名から矢沢洋子に全面的に変わるときにもいろいろと大変だったし、またイチから名前を変えることのリスクも考えて、矢沢洋子 & THE PLASMARSという形に。急遽決まったので、今回のジャケット写真や出演予定のライブハウスとか、変更の連絡が大変でしたよ(笑)。
──ちなみに名付け親のセイジさんは、決定したことについて何かおっしゃってました?
「正式に決まったんですよ!」って報告したら「マジ!?」って、ちょっと喜んでましたね(笑)。
──名前の由来については……。
それが私たちもよくわかってないんですよ(笑)。セイジさんは「こう、ババババってくる感じだよ!」って言ってたので、多分、稲妻みたいな勢いのある感じをイメージしてくださったんだと思うんですけどね。
全員が「俺が俺が!」くらいじゃないと面白くない
──“矢沢洋子 & THE PLASMARS”になったことで、今回の楽曲制作に関して何か変化はありましたか?
まず今までと違うのは、最初から最後までメンバーと一緒に作れたこと。本当はずっとそうしたかったんですけど1st、2ndと実現できず、ようやく今回で楽器もコーラスもメンバーに任せることができたんです。やっぱり彼らはずっと「(自分たちは)サポートメンバーだ」って感覚があったみたいなんですけど、それはなくしてもらって。今までボーカルが前に出て楽器は後ろ……みたいな音だったのも「そういうのは一切やめてくれ」って話をして、今回はボーカルのすぐ横で楽器をガチャガチャやってもらってるって感じにしたんです。全員が「俺が俺が!」くらいじゃないと面白くないし。彼らとは長い付き合いですけど、ようやくしっかりバンドの形になったのかなって思いますね。
──確かに1曲目「ROSY」から本当に勢いのあるバンドサウンドが展開されています。
「ROSY」はニューロティカのKATARUさんが作曲してくださったんですが、飲んでるときに「曲作ってくださいよー」「いいよ!」みたいなやりとりでオファーが実現して(笑)。曲が上がってきたときは「これ、私がもらっちゃっていいんですか?」ってくらいニューロティカっぽい曲だなと思って、歌詞はとことんハッピーで面白いものを考えましたね。すごく大事なメッセージを伝えるというより、簡単に言うなら「人生楽しんだモン勝ち!」みたいなことを歌っています(笑)。
──そのあたり、かなり洋子さんの素な感じもするんですが……。
素ですね。タイトルの「ROSY」(「楽観的」の意)からして私にぴったり!(笑)
──あはははは(笑)。
だってね、ロックのライブに来るお客さんって、言っちゃえば「いかに楽しいか?」じゃないですか。「歌詞の内容が染みるねー」とかはあまり思ってないような気がして。だからこそ一度聴いたらすぐ口ずさめるくらいの簡単さが必要なんじゃないかってことを今回は考えたんです。この曲も何度も「ROSY」って繰り返してるだけの部分も含めて、そういうノリの部分を大事にしました。全体的にだいぶ楽観的で「なんとかなるよ」みたいな感じが出てて、なんか私の人生論みたいな歌になったなって(笑)。
──PVもポップでカラフルで、単純に楽しかったです。
今までは結構クールな作りが多かったんですけど、「ROSY」はもうそういうのを取っ払おうって。「いろんなものが詰まっててギャグ満載の感じにしたい」って最初に監督さんに話したら、ああいういい意味でわけのわからない感じになったんですよ(笑)。
CD収録曲
- ROSY
- バイバイBOY
- メリーゴーランド
- moon lightshadow
- THE WILD ONE
矢沢洋子(やざわようこ)
東京出身の女性ボーカリスト。12歳のときに家族とともに米ロサンゼルスに移り住み、高校卒業後帰国。2008年10月にポップミュージック路線のユニットを結成しメジャーデビュー。その後アーティスト名を本名に戻し、2010年8月にロック色を強めた1stアルバム「YOKO YAZAWA」をリリースする。精力的なライブ活動を行いつつ、2011年8月に2ndアルバム「Give Me!!!」、2012年10月に3rdアルバム「ROUTE 405」を発表した。