横浜音祭り2019 葉加瀬太郎|念願の初セルフプロデュースによるオーケストラコンサート

May J.の歌声に恋してる

──この「横浜音祭り」のコンサートでは、May J.さんをゲストに迎えてのコラボレーション企画も行われる予定です。May J.さんとはこれまでも2015年夏に行われた葉加瀬さん主催の野外フェスなどで共演されていますね。

葉加瀬太郎

もう彼女の歌声に恋してます。あそこまでパーフェクトなテクニックと声を持った歌手はそうはいないと思う。彼女と一緒に音楽を作り出せるのは、ただただ喜ばしいことですね。何回目かに共演したときに、僕がセリーヌ・ディオンと共作した「To Love You More」をコラボしたんですけど、この曲はセリーヌだから歌えるような曲で、しっかり歌いこなせる人は本当にひと握りなんですよ。

──そうなんですね。

それにバイオリンという楽器の魅力をフルに生かしつつ、ボーカルの人と何かを生み出すことも難しいんです。僕のバイオリンの演奏はわりとガッツリいくスタイルなんですが、一緒に張り合えるというか、ハモったり対決したりと彼女とできることは多いです。声域もそうですし、ピッチがパーフェクトなんですよ。別にピッチが完璧な歌手=いい歌手というわけでもないですが、バイオリニストにとってはピッチが命なので、共演するときに関しては非常に重要なファクターになってきます。

──演奏をMay J.さんの歌に合わせやすいんですね。

ストレスフリーです(笑)。単にうまいだけじゃなくて魅力的な歌を歌うし、大ファンなので今回もお願いしてみたら快くオッケーしてくださいました。

──どんな曲でコラボするかは当日のお楽しみですかね。

はい。これまでコラボしてきた曲もあるし、頭の中で考えている新しい曲もあります。僕らは自分で作った曲を歌ったり弾いたりすることもありますけど、彼女はマスターピースを自分のスタイルで歌う、つまりカバーすることにも長けている人だから共通項が多いんです。「こんな曲をやってみませんか」と提案すると、すぐに理解して賛同してくれますし、これから候補をいろいろ挙げていきますが、ミーティングをせずともすぐに曲は決まっちゃうと思います(笑)。

「横浜音祭り」を誇りに感じてほしい

──「横浜音祭り2019」のほかのプログラムや出演者で、何か気になるものはありますか?

僕、(村治)佳織ちゃんの大ファンなんです。死ぬほど好きです。

──村治さんはカウンターテナーの藤木大地さんとコラボされます。

ぴったりですね。彼女のプレイは最高ですよ。僕が初めて共演したのはずいぶん前、20年くらい前だったかな。映画「ディア・ハンター」のテーマ曲の「Cavatina」を弾いた思い出があります。会う前から彼女のCDをたくさん持っていて。同じ楽器弾きとはいえそれまでは共演する機会がなかったんですが、出会ってからは頻繁にコンサートに行ったり、ごはんに行ったりもしました。

──リスナーとして村治さんのいちファンだったんですね。

日本人ギタリストの中で一番好きです。

──最後に、「横浜音祭り2019」に来場する方へのメッセージをお願いします。

我々音楽家にとって一番うれしいことは、その期間中、街全体がお祭りとして盛り上がることですよね。10年ちょっと住んでいるロンドンの「BBCプロムス」も、小さなお祭りが参加することによって活性化しているわけで。規模もジャンルも全然違いますけど、リオのカーニバルももともと10人ほどの行進から始まっているわけですよ。世界中からお客さんを呼ぶための街の観光資源として、食べものとかではなく音楽が売りになっているのはすごいことじゃないですか。お祭りは一定の期間というところにも魅力があるし、すでにここまで大きくなっている「横浜音祭り」に参加させていただけるのはものすごくありがたいことです。逆に横浜の皆さんは「横浜音祭り」を誇りに感じてほしいと思います。世界中に自慢してほしいです。

──300を超えるさまざまなプログラムを1つの街で楽しめるというのは、すごく贅沢なことですよね。

それが“お祭り”としてくくられることに意味がありますね。こういうものを街に根付かせるためにはどれだけの努力が必要なのかを理解して参加していただいて、ぜひ盛り上げていただければと思います。我々はそれをお手伝いさせていただくだけです。

葉加瀬太郎(ハカセタロウ)
葉加瀬太郎
1968年1月23日、大阪府生まれ。1990年にKRYZLER & KOMPANYの一員としてメジャーデビューを果たす。1996年の解散以降はソロアーティストとして活動し、セリーヌ・ディオンとの共演で世界的に知名度を高めた。TBS系ドキュメンタリー番組「情熱大陸」のオープニングおよびエンディングテーマが代表作として知られている。2002年には自身が音楽総監督を務めるレーベル「HATS」を設立。毎年9月から年末にかけて全50公演の全国ツアーを開催し、年間100公演にもなるステージを行いながら、さまざまな活動の中で音楽の素晴らしさを伝え続けている。