ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←×葉加瀬太郎

バトルアルバム発売記念 3人が語る「音楽」「旅」「食」

→Pia-no-jaC←と葉加瀬太郎によるコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」が7月11日にリリースされる。ロック&ポップスとクラシックという、ジャンルの異なるインストゥルメンタルで音楽活動を続ける2組が音でぶつかり合うこのアルバム。クラシックの定番曲やお互いの代表曲が新たな解釈で再構築されているほか、本作のために書き下ろされた新曲も楽しむことができる。これまでありそうでなかった2組の共演に、多くの音楽ファンが驚かされることだろう。

今回ナタリーでは、→Pia-no-jaC←の2人と葉加瀬太郎にインタビューを実施。2組に共通するトークテーマを3つ用意し、それぞれについてお互いの考えを明かしつつ、アルバムの魅力についてじっくり語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一 撮影 / 高田梓

最初の「なんじゃこいつら!?」って感覚がずっと残っていた

──1つ目のトークテーマは「音楽」。今回のアルバム「BATTLE NOTES」が完成するまでのお話をいろいろ伺えればと思います。まず最初に、皆さんが最初に出会ったときのことを訊かせてください。

写真左から葉加瀬太郎、HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)

葉加瀬太郎 初対面はいつだっけ?

HAYATO(Piano) まだ今回のコラボの話が出る前、僕らが葉加瀬さんの公演を観に行ったんですよ。

──それはいつ頃の話ですか?

葉加瀬 去年の5月、鎌倉だったよね。僕の楽屋に2人が挨拶に来て。

HAYATO まさかそのとき、葉加瀬さんとお会いできると思ってなかったので、すごくドキドキしながら「→Pia-no-jaC←です」って挨拶して。

葉加瀬 そこでCDをもらって聴いて。なにしろ珍しいじゃない、ピアノとカホンの2人組なんて。僕はバイオリンでインストゥルメンタルを演奏してきたから、若い世代でインストゥルメンタルでいろんなことをやってる人に興味があるし、そういう人たちの音楽から刺激も受けたくていろいろ注目してるんです。それで、去年の夏にイベント「情熱大陸SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA '11」に出てもらったんですけど、2人のパフォーマンスを観て「なんじゃこいつら!?」と思って。

HIRO(Cajon) あははは(笑)。

葉加瀬 「なんでキーボードを斜めに立てて弾くんだ!?」って。「情熱大陸SPECIAL LIVE」はベテランアーティストもいっぱい出ていて、その人たちみんなが「なんじゃこりゃ!?」ってモニターに釘付けなんですよ。そのときの「なんじゃこいつら!?」って感覚がずっと残っていて、「いつか何か一緒にできたらいいな」って思ってたんですよ。そこから1年でここまでこれたのはすごいなと。

やっぱりコンサートって「人の声」が聞こえないと

──→Pia-no-jaC←の2人は葉加瀬さんにお会いする前、どういう印象がありました?

HIRO コンサートではトークがすごく面白いし、演奏も本当に美しいというか、芸術的なんですよね。

HAYATO 僕らもただ演奏するだけじゃなくて、キーボードを斜めにして弾いたりパントマイムをしたりといろんなことをしてるんですけど、葉加瀬さんの公演は本当にエンタテインメントの要素が盛りだくさんで。同じインストゥルメンタルをやってるとか関係なく、とにかく尊敬できる大先輩です。

葉加瀬太郎

葉加瀬 やっぱりコンサートって「人の声」が聞こえないとね。楽器の音だけを聴いてイマジネーションで楽しむっていうのはあっても、それを2時間ずっと続けてると集中力もなくなってくるから。例えばテレビで2時間のドラマや映画を観てるときに、途中でコマーシャルが入って、いっぺんクールダウンするとまた物語に集中できるし。同じように、コンサートの合間にお喋りをして1回クールダウンさせたら、また音楽が始まったときに新鮮な気持ちで楽しむことができると思ったんです。

HAYATO じゃあ、デビュー当時からやってらっしゃったんですか?

葉加瀬 そう。でも、今のスタイルになるまではいろんなことを試して。それこそロックみたいに「オラーッ!」って煽るのもやったし、めっちゃカッコつけてすかしまくるのもやったし。いろいろやったんだけど、どれも自分に合わないなと思ったんだよね。で、あるコンサートのときに普段喋ってるようにトークを始めたら、全てがうまく転がり始めたっていうか。そこにたどり着くまでは1年以上かかったよ。コンサートの中では息抜きも大切だと思うし、そこは音楽を作るのと同じくらいの気持ちで臨んでるんですよね。周りからは「よくあんなにペラペラとアドリブで喋れるね?」って言われるけど、僕は一言一句全部台本に書いて覚えて、そこから崩していくんです。

間が怖くてとにかく音を埋めてなんぼやと考えてた

──→Pia-no-jaC←の2人は葉加瀬さんから何か得たことってありますか?

HAYATO 葉加瀬さんからは、今までに僕らがしたことのないリズムの取り方や音の使い方を教えていただいて。そうすることで弾き方もすごく変わって、表現も豊かになったんです。それまでは、2人でやってると間(ま)ってすごく怖いと思ってたから、とにかく音を埋めてなんぼやと考えたところがあって(笑)。今回いろいろとレクチャーを受けながら、間の気持ち良さっていうのがちょっとわかってきて、僕ら的にもめちゃくちゃ勉強になったというか。それ以上に迷惑をかけましたけど。

葉加瀬 あははは。大丈夫やったよ、途中からそういうもんやと思ってたし(笑)。

HIRO 途中からずっとレコーディングブースで笑ってらっしゃいましたよね。

葉加瀬 だっておかしいんだもん(笑)。「もういっぺん、Bセクションから行こうか」「B……ですか……Bってどれですか? すいません、そのBのメロディが頭の中で鳴らないので、頭から演奏していいですか?」ってやり取りを何度も繰り返したからね。

一同 あははは!(笑)

HAYATO(Piano)

HAYATO 普段2人だけでやってるときは全然大丈夫なんですよ。でも楽譜を見たらだんだんわからなくなってきて、結局最初からやるという。すみません……。

──だんだんとレコーディングの反省会になってきましたが(笑)。

HIRO ひたすら謝り倒す会(笑)。

HAYATO なんか変な汗かいてきました(笑)。

ニューアルバム「BATTLE NOTES」 / 2012年7月11日発売 / ハッツ・アンリミテッド

収録曲
  1. Csardas / チャールダーシュ(※「a」にはアキュートアクセントが付く)
  2. 組曲『 』 with Taro Hakase
  3. アルルの女
  4. HHH Rag(新曲)
  5. 情熱大陸 with →Pia-no-jaC←
  6. リベルタンゴ
  7. Behind the day(新曲)

→Pia-no-jaC←

→Pia-no-jaC←(ぴあのじゃっく)

HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)の2人で構成されるインストゥルメンタルユニット。名前の由来は左から読むとピアノ、右から読むとカホンとなる。鍵盤と打楽器という至ってシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。デビューから3年でベストアルバム含めアルバム9枚をリリースし、累計は50万枚を突破。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供。2010年発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。さらに宝塚歌劇団への楽曲提供、ラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。ライブではオリジナル楽曲やクラシックなどのカバーを武器に、迫力満点のパフォーマンスを披露。国内外の幅広い層から絶大な支持を受けている。2012年3月7日にはニューアルバム「暁」をリリース。同年7月には葉加瀬太郎とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」を発表する。

葉加瀬太郎(はかせたろう)

葉加瀬太郎

1968年1月23日、大阪府生まれ。1990年にKRYZLER & KOMPANYの一員としてメジャーデビューを果たす。1996年の解散以降はソロアーティストとして活動を開始し、セリーヌ・ディオンとの共演で世界的に知名度を高める。2002年、自身が音楽総監督を務めるレーベル「HATS」を設立。アーティストプロデュースのほか、イベントプロデュースや商品企画なども手掛ける。また、同年からは野外フェス「情熱大陸SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA」もスタートさせた。2011年には自身初のクラシックスタイルでの全国ツアー「Classic Theatre」を開催。さらに同年8月、初のベストアルバム「THE BEST OF TARO HAKASE」をリリースし、日本ゴールドディスク大賞を受賞した。2012年7月には→Pia-no-jaC←とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」を発表。