平均年齢22歳の4ピースバンド・ヤングスキニーが、若者のリアルな思いをつづった歌詞と、キャッチーなバンドサウンドで10~20代を中心に熱烈な支持を集めている。
ヤングスキニーはシンガーソングライターとして活動していたかやゆー(G, Vo)がSNSでメンバーを募り、2020年8月に結成されたロックバンド。2022年10月発表の「本当はね、」のストリーミング再生数が1億回を突破し、全国各地の夏フェスに出演するなど、好調ぶりを見せている。勢いに乗る彼らの最新作は、“君”と“愛”がテーマのEP「どんなことにでも幸せを感じることができたなら」。音楽ナタリーではヤングスキニーの人気の秘密に迫るべく、5つのキーワードをもとにインタビューした。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 梁瀬玉実
キーワード①:コロナ禍での結成
──ヤングスキニーは、もともとシンガーソングライターとして活動していたかやゆーさんが、SNSでメンバーを募集したことがきっかけで結成されたバンドなんですよね。
かやゆー(G, Vo) はい。本当は大学の軽音サークルとかに入ってバンドを組めればよかったんですけど、コロナ禍で出会いもなかったので、SNSで「#バンドメンバー募集」と投稿しました。ゴンザレス、りょうと、しおんはSNSで集まったメンバーです。
──結成当初から所属しているゴンザレスさんは、どのような思いでヤングスキニーに参加しましたか?
ゴンザレス(G) 僕は本気で一緒にバンドをやれる人を探していたものの、身近では見つけられなくて。だったらSNSで探してみようかと思ったときに、かやゆーのバンドメンバー募集のツイートと、「世界が僕を嫌いになっても」(2021年5月リリースの1stミニアルバム「嘘だらけの日常の中で」収録曲)の歌唱動画がタイムラインにたまたま流れてきたんです。僕は当時ギターを始めて数カ月の初心者だったんですけど、やらない後悔よりやって後悔したほうがいいと思って、「僕も一緒にバンドを組みたいです」と連絡しました。
──2020年9月にりょうとさんが加入したそうですね。
りょうと(B) 僕は前のドラマーと同じ軽音サークルに入っていたので、彼がInstagramで「バンドを組みました」と投稿していたのを見ていたんですよ。それがきっかけで「世界が僕を嫌いになっても」を聴いたんですけど、めちゃくちゃキャッチーな曲だったから「絶対売れるだろうな」と思って。なので、加入できたときはうれしかったです。
かやゆー りょうとくんは、僕らと違って軽音楽部出身だったんですよ。初めてのライブのときも「ライブハウスってこんな感じなんだよ」って、“俺は知っているぜ感”を出してきましたし(笑)。
りょうと (笑)。
かやゆー きっと知識もあるだろうし、さぞ素晴らしいベーシストなんだろうと思っていたら、あとから入ってきたしおんから「俺が出会ったベーシストの中で一番ヘタクソだ!」と言われていて。そのとき初めて「あ、俺らはヤバいやつに従っていたんだ!」と気付きました(笑)。
ゴンザレス そうして俺らがだまされていたことを認識して、一気に立場が変わって、ヤングスキニーのイジられキャラになって……(笑)。昨日の生配信では、油性ペンで顔を塗り潰されたりとか。
りょうと “歴”と“腕”は比例しないってことですね(笑)。
かやゆー いやいや、それは自分で言っちゃダメでしょ(笑)。
──そして2021年7月にしおんさんが加入し、現在の体制になりました。
しおん(Dr) 僕はメンバー募集の投稿を見た日の夜にさっそくスタジオに入って、ヤングスキニーの曲をコピーして、「加入したいです」というDMを送ったんですよ。そうやって自分からすぐに行動したのはあのときが初めてだったので、「絶対に入りたい」という気持ちがあったんだと思いますね。
キーワード②:SNS
──先ほどゴンザレスさん、りょうとさんから名前が上がった「世界が僕を嫌いになっても」はヤングスキニー初の楽曲で、2020年12月にEggs(インディーズバンドの音楽ストリーミングサービス)で公開され、ランキングの上位に入り話題になりました。2021年1月に販売されたデモ音源は1分で完売。また、2021年2月のミュージックビデオ公開後にはSNSを中心に反響を呼び、TikTokでは楽曲を使用した動画もユーザーによって多数作成されました。結成から1年も経たずにヤングスキニーの名は一気に広まりましたが、実際「こういった流れでバンドを軌道に乗せよう」と意識していたのでしょうか?
かやゆー 自分の好きな音楽をやりたいようにやっていただけ……と言いつつも、まったく意識していなかったと言ったら嘘になりますね。ファンがついていない状態でいきなりサブスクで曲を配信しても再生数は伸びないけど、Eggsには常に新しいインディーズバンドを探しているリスナーがいますから、Eggsのランキングに載って注目されるのが先だと考えたり。それが案の定うまくいったので、「この流れでYouTubeでMVを公開すれば、Eggsで聴いてくれた人がYouTubeでも聴いてくれそうだ」「YouTubeで再生数が伸びればおすすめに表示されるから、きっと初めて聴く人にも届くな」と思いながら、なるべく早くMVを撮ったり。
──いい反応があったときに、ユーザーの熱が冷めないうちに次のコンテンツを用意していくことを意識していたと。
かやゆー はい。僕はSNSについて何か勉強したわけじゃないんですけど、タイミングを逃さないように動くということは無意識のうちにやっていました。
──初ライブが無観客配信ライブだったように、2020年に結成されたヤングスキニーは、コロナの影響もありライブにたくさん出演して経験を積むということがなかなかできなかったのではと思います。自分たちのバンド活動において、SNSの存在は助けになりましたか?
かやゆー そうですね。そもそもSNSでメンバーを集めていますから、これがなければ結成すらしていなかったですし。もともとSNSを見るのが好きなので、それを使ってバンドの名前を広げていくやり方は自分たちに合っていたなとも思いますね。
──SNSを運用するにあたって欠かせないのがエゴサーチですが、バンドが大きくなるにつれて、ネガティブな声を目にする機会も増えていったのではないでしょうか。
かやゆー 確かに増えていきましたけど、SNSから急に出てきたバンドに見えるからなのか、僕たちは最初の頃からいろいろと言われていたんですよ。「またナヨナヨした声の、こういう感じのバンドか」みたいな。
しおん かやゆーくん、僕が加入したときにも炎上していたよね。僕は当時インディーズバンド界隈のことをよく知らなかったから「うわ、ヤバいバンドに入っちゃった?」と思って(笑)。
かやゆー・ゴンザレス・りょうと (笑)。
かやゆー 僕は高校生の頃からSNSに弾き語り動画を上げていたから、不特定多数の人から何か言われることには最初から慣れていましたし、SNSじゃなくても、友達から陰でいろいろ言われたりもしていましたし(笑)。だから耐性はあるほうだと思います。
しおん 僕はけっこう傷付いちゃうタイプなんですけど、バンドを続けているうちに慣れざるを得ないですよね。それに、SNSで何を言われようと、ヤングスキニーのことをいいと思って、ライブに来てくれているお客さんがいることは間違いないから。ライブハウスに行けば自分たちのことをちゃんと見てくれる人がいるんだから、別にどうだっていいやと思えるようになりました。しかも会場がデカくなるにつれて、その人数が増えていく。お客さんの存在が自分たちの支えになっていますね。
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キーワード③:「本当はね、」