ナタリー PowerPush - 山根万理奈
ネット動画サイト発の新鋭シンガー 初の本格インタビューで素顔を明かす
オリジナルは反応が怖い
──当初、アップされる動画はすべてカバー楽曲でしたが、途中からオリジナル曲を披露するようにもなりましたね。それはどうしてだったんですか?
初めは全然出すつもりはなかったんですけど、「オリジナルもやったらいいのに」みたいなこと言われたことがあったので、「いや、実はありますよ」みたいな感じで(笑)。でも最初はめちゃくちゃ緊張しました。カバーのときはそこまで反応を気にしてなかったんですけど、さすがにオリジナルだと反応が怖くて。やっぱり歌詞には自分というものがバシッと出てしまうので、それに対する反応が怖かったんですよね。カバーのほうが再生数は伸びますけど、オリジナルも結構反応が良かったし、ほかの曲も聴きたいっていう声もあったので、その後も上げていくようになったんですけど。
──ちなみに動画を撮影するときって、顔が映らない分、服装とかに気を遣ったりっていうことは?
全然考えてないですね。穴開きジャージを着てる私を見て、友達に「ちょっとは気にしなさいよ」って言われることもあったけど、「そーお?」みたいな感じで(笑)。気合を入れるにも、そんな服持ってないですしね。あとは、家でギターを弾くときって寝起きだったり寝る前だったりするんですよ。なので、わざわざYouTube用の撮影をするために着替えるのも私の中では違うというか。そのとき着てる服でやるっていうコンセプトなので、基本全部部屋着(笑)。
──撮影はワンテイクなんですか? 結構ミスってるとご自身で認めてる動画があったりもしますけど。
いや、何回も撮ってますよ。カメラのスタートボタンを押したと思ったら押せてなかったとか、カメラが倒れたりとか、顔が映ってたとか(笑)。
──全部、演奏と歌以外の理由ですね(笑)。
アハハハ。そうですね。演奏で撮り直すこともありますけど、間違えてたとしても自分の中のOKラインをクリアしてればいいんですよ。自分の中で、これはめっちゃ気持ち良く歌えたなっていうのが一番の決め手なんです。後で改めて観ると、なんて雑なんだろうって思ったりもするんですけどね。
──でも、ご自身が気持ち良く歌っているのは映像からもしっかり伝わってきますよね。部屋着でOKとか、顔を出さないとか、そういうこともすべて、山根さんの歌を歪曲させずに伝える手段になっているような気もします。リスナーは余計な情報や先入観に惑わされずに、歌の良さだけに身を委ねられるというか。
顔を出さないことにしても、そういう理由ではなかったですけど、結果的にちゃんと歌だけ聴いてもらって、それをいいと言ってもらえてるっていう喜びは確かにありますね。
Hanasalとの出会いが自分を目覚めさせた
──そして、YouTubeでの動画がきっかけとなり、夢であった歌手としてのデビューへつながっていくわけですが。そこでの気持ちはどんなものだったんでしょうか?
今の事務所の方からコンタクトがあったときには、迷いの境地に入っちゃいましたね。心のどこかに置いてきた気持ちをほじくられてしまった感じだったので。その気持ちに対しては、カギをかけて開かないようにしていたわけではないんですけど、押入れの奥のほうのがんばらないと取り出せない場所にしまってあったので。短大に入った後、教師になりたいっていう新しい夢もできて、4年制の大学に編入学もしていたんですよ。で、将来は幸せな家庭を築きたいなって思ったりもしていて。でも、しまっていた気持ちを掘られたときに、ものすごく揺らいだんですよね。普通に生きたいっていう気持ちと、音楽をやりたいっていう気持ちの間で。
──最終的に音楽をやることにした決め手はなんだったんですか?
東京に招待してもらって、Hanasal(元CHABAの鹿嶋静と比嘉大祐からなるサウンドワークチーム)の2人に出会ったことですね。2人が私のために書き下ろしてくれた曲の歌詞を見たときに、そこには私が今まで悩んできたことの答えがあったというか。いろんな人たちとの出会いを通して自分を見つめ直し、本当のことを見つける、みたいなことが書かれてあって。これはまさに“The私”だなと思って(笑)。そこで、諦めていたはずのやりたいことを、今の環境でやってもいいんじゃないかなって強く思ったんです。
山根万理奈(やまねまりな)
島根県在住の現役大学生シンガーソングライター。2009年よりYouTubeで、カバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開する。透明感あふれる声やおっとりしたキャラクターがネットを中心に話題を集め、ファンを獲得。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースする。同年7月にワーナーミュージック・ジャパンから、シングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビュー。