ナタリー PowerPush - 山根万理奈

ネット動画サイト発の新鋭シンガー 初の本格インタビューで素顔を明かす

人前に出たいけど、目立つことが恥ずかしい

──じゃ、ここからはちょっと山根さんの生い立ちを訊きながら、音楽的なバックボーンを探っていければなと。小さい頃はどんな子供でしたか?

やっぱり小さい頃からとにかく歌が好きでしたね。おもちゃのマイクを持って歌ってるのがホームビデオに残ってますし。4、5歳の頃には、エレクトーンを始めました。叔母がエレクトーンの先生をやっていたので、「おばちゃんみたいになりたい!」って言って。でも、合わなかったというか忍耐力がなかったというか(笑)、すぐに辞めたがるようになったんですね。周りの子は結構うまかったのに、自分だけできなかったから、いっつも泣いてました。エレクトーンの課程は小学5年で終わりだったので、一応キリのいいところまでは続けたんですけど、今じゃまったく弾けないですね。あのときエレクトーンを続けてたら私の音楽人生も今とは違ったものになってたかもしれない。きっかけがあればいつかまたやってみたいとは思うんですけど、今はギターの腕に全然納得できてないんで、まずはそっちをがんばんなきゃなっていう。

──性格的にはどんな子でした?

今は消極的な面が強くてシャイなところがあったりするんですけど、昔はけっこう自分からガツガツ行く子でしたね。わりとリーダーになりたがるタイプというか。小学校のときに音楽部に入ってたんですけど、音楽集会とかがあると「私、ソロパート欲しいです!」って手を挙げるみたいな(笑)。実際、コンクールに出させてもらったこともありましたね。中学のときも全校生徒が参加する歌の大会のクラスリーダーに就任して、放課後に「みんなちゃんと残って!」とか言ったり、つまらなそうにしてる男子に「そんなんじゃダメじゃん!」とか言ったり(笑)。けっこう厳しくやってましたね。まあ、それも中学までで、高校からはそういうリーダー的なことからは身を引くんですけど。

──それはどうしてですか?

中3のときに打ち上げの幹事をやったんですけど、そこでお金の計算に失敗しちゃってちょっと責められたことがあったんです。そこでリーダーって怖いな、もうやるまい、と思うようになって。それ以降、自分が前に立つっていう感じにはならなくなりました。

──それをきっかけにシャイな性格にまで振り切ってしまったと。

もしかしたら前からそういうところはあったのかもしれないんですけどね。人と話すのは大好きだけど、初対面の人に自分から話しかけたりすることはほんとに苦手だったんで。それが中3の出来事をきっかけに、より明確になってしまったというか。人前に出たいっていう気持ちはあるけど、実際に出ることや目立つことが恥ずかしくなっちゃったんで。YouTubeで顔を出さないっていうのも、そういうところにつながってるのかもしれないですよね。前に出たいけど、私だってバレたくないから出さない、出せないっていう。

ギターをきっかけに広がった自分の世界

──歌うことはその頃も積極的に続けていたんですか?

続けてました。中3の夏からはギターもはじめたんですよ。お父さんが持ってたアコースティックギターで、私のカラダには似合わない大きいやつだったんですけど、それを鳴らしてみるようになって。

──きっかけは?

音楽の授業でギターの話があったんですよ。でもそのときは実際にギターを触らせてはくれなかったんで、なんでそこまで話しといて触らせてくれないんだ、みたいな感じになって(笑)。じゃ私は家にあるからそれを弾こうと思ったんです。あとは、小学校の頃からゆずさんのことが好きだったので、その影響もあったと思います。初めて買ったギターのスコアもゆずさんの全曲集でしたね。

──ギターという楽器自体には魅力を感じました?

最初はそうでもなかったですね。単純に、持ち運べるっていうところが大きかったのかも。その頃って家の中で歌ってる姿を家族に見られるのがちょっと恥ずかしかったから、自分の部屋でこっそり歌うっていう欲求を叶えてくれたのがギターだったんです。エレクトーンは持ち運べないですからね(笑)。

──ギターを始めたことで、山根さんの音楽ライフはより広がりました?

そうですね。ギターを始めた頃、同じ中学の1コ下の男の子と出会って、その子が路上ライブをやってるっていうから誘われてついていってみたんです。そこで、その子がギターを弾いてくれるのにあわせて、知ってる曲を私がちょっと歌ってみたりもして。もちろん初めてで恥ずかしかったけど、それ以上にものすごく気持ち良かったんですよね。歌うっていう意味ではいつもやっていることと違いはないはずなのに、外で歌うのがこんなに楽しいんだって思えたというか。私には、ハイジみたいな広い草原で人目を気にせずワーって歌ってみたいっていう夢が小さい頃からあったんですけど、路上ではそれに近いものを感じることができて。おお、声ってこんなふうに風に溶けるんだ、みたいな(笑)。それで一気にハマッてしまったんです。

メジャーデビューシングル「ジャンヌダルク」 / 2011年7月27日発売 / 1000円(税込) / Warner Music Japan / WPCL-10981

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CD収録曲
  1. ジャンヌダルク 試聴する
  2. やさしい痛み 試聴する
  3. 夢で逢えたら 試聴する
  4. ジャンヌダルク(Instrumental)
  5. やさしい痛み(Instrumental)

カバーミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」 / 2011年6月22日発売 / 1600円(税込) / BURGER INN RECORDS / BUCA-1033

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CD収録曲
  1. 歌に形はないけれど
  2. きみがすき
  3. メランコリック
  4. わんわんお、にゃんにゃんお
  5. すすすす、すき、だあいすき
  6. シェイプアップ!
  7. 指切り
  8. なきむしのはつこい
山根万理奈(やまねまりな)

島根県在住の現役大学生シンガーソングライター。2009年よりYouTubeで、カバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開する。透明感あふれる声やおっとりしたキャラクターがネットを中心に話題を集め、ファンを獲得。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースする。同年7月にワーナーミュージック・ジャパンから、シングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビュー。