ヤバイTシャツ屋さん「こうえんデビュー」インタビュー|褒められたい大使たちがゆとり肯定する10枚目のシングル

一生懸命なもりもとに対して塩対応なこやま

──シングル1曲目はトラックリストが発表されてすぐにSNSがざわつきましたよね。その名も「くそ現代っ子ごみかす20代」。

もりもと ははは(笑)。

──こんなタイトルですけど、泣きメロでいい曲なんですよね。歌詞を読むと「ゆとりを肯定してほしい。なんならサポートしてほしい」という内容でなんとも言えない気持ちになりますが(笑)。

こやま あんまり考えすぎずにできた曲なんです。「You need the Tank-top」で1位を獲れて、いい意味で肩の力が抜けたと言うか。

──とはいえ、こやまさんがイントロでトリッキーなギターを弾いていたり、しばたさんがこれまでにはあまりない力強い歌唱をしていたり、リズムも一筋縄ではいかない感じでこだわりを強く感じました。

しばた イントロのレコーディングが大変やったんですよ。

こやま 自分の中では「これや!」って感じはあったんですけど、クリックを聴かずにギターフレーズを先に録ったもんだから、僕のギターとクリックに合わせてしばたがベースラインを弾いたみたいな感じで。僕としばたはなんとなくわかってる感じで弾いてたけど、もりもととエンジニアさんはちゃんとリズムにはめないといけないから本当に大変やったと思う。

しばた もりもとは「ベースとクリックだけで1回やります」って言って必死で入れてたもんな。

もりもと 本当ですよ(笑)。結果的に僕が1人でスタジオに入ってなんとかリズムを分析して形になったものを「3時間くらいかけてやってみたんですけど、こやまさんが思い描いているイントロってこんな感じですか?」って送ったら、こやまさんから「いいような気はする」って返事が来て(笑)。

こやま ははは(笑)。だって正解がわからんもん(笑)。

もりもと まあでも結果的にこやまさんのイメージに近かったみたいで採用してもらえたんですけどね(笑)。

──こやまさんはこのイントロについてものすごくこだわりがあるようで、ないような感じだったんですかね?

こやま なんかちょっといつもとは違う感じにしたかったんですよ。

しばた イントロと本編でテンポも変わってるしな。レコーディングもイントロがトリッキーすぎて後回しになって、Aメロから録り始めて(笑)。

もりもと 「後回しにしまーす」って言って(笑)。

しばた そう。で、最後にイントロを録った。そんな裏話もあります。

ヤバTはこやまゆとり教育

──「くそ現代っ子ごみかす20代」というタイトルですけど、30代になった私も共感できる歌詞でした。

こやま 20代と言いつつ、もう僕も28なんでね。なんかいつまでもゆとり世代という言葉に逃げてる場合じゃないと思いつつ、まあでも実際ゆとり世代やしなという曲になったと思います。

しばた ゆとり教育受けてますから。

こやまたくや(G, Vo)

こやま でもそうやって開き直る自分に対してもイライラするんですよ。そういうモヤモヤってあるよね。でもそれすらも肯定していこうという歌です。

しばた 自己肯定感丸出し!

こやま はい、そんな曲でございます。

──こやまさんって自己肯定感が低いのか高いのかよくわからないなと思っていたんですけど、実際のところどうなんですか?

こやま なんかね、よくわかんないんですよね。すっごい高いもしくは、すっごい低いから必死で自分のこと褒めているっていう感じですかね。やっぱりもっと褒められたいんですよ。

──冒頭でも「1位を獲ったのにあんま褒められなかった」とお話ししていましたね。

こやま それもありますし、何をしても褒めてほしいんですよね。

しばた うちだって褒められたいですけど、それ以上に褒めなあかん人がいるからそっちを褒めてます(笑)。内心は自分も褒められたいですよ。だから心と体が分裂していく(笑)。

こやま メンバーは積極的に僕のことを褒めてくれるように教育しているんで。

──昔から取材させてもらってますけど、しばたさんともりもとさんはずっと「こやまさんはすごい」と話してますもんね。

しばた そう。ヤバTはこやまゆとり教育なんです。

もりもと そうですね。まあでも基本的にヤバTは褒め合おうというスタイルでやってきましたよね。結局のところメンバー全員褒められたいんですよ。こやまさんも昔よりは僕のことを褒めてくれるようになりましたし。

──昔は厳しかったですよね(笑)。

もりもと ホンマにむちゃくちゃ厳しかった(笑)。最近はポロッと褒めてくれるようになったんです。

こやま 「もりもと、面白くなったなあ」しか言ってないけど(笑)。

パソコン周辺3部作を締めくくる「Bluetooth Love」

──2曲目の「Bluetooth Love」はHuluで配信されるドラマ「マイルノビッチ」のために書き下ろされた1曲です。「ハッピーウェディング前ソング」や「かわE」に通ずるポップな仕上がりですね。

こやま やっぱりヤバTと言えばラブコメなんで。苦手な部分を克服するより得意なことを伸ばしていくほうがいいと僕は思ってるので、こういう曲を書かせてもらいました。こういう曲がシングルの2曲目に入ってるのってなんかちょっとお得感もあるかなと思ってます。

しばた 「これが2曲目!?」っていうね。

──しばたさんのあざとい「ね?」がかわいらしくていいなと思いましたし、謎のレゲエパートもあってけっこうインパクトが強い1曲ですよね。

しばた これはぶりっ子ソングなので。

──「泡 Our Music」の「惑わされんのはメッ!なの」的な感じですね。Bluetoothがつながったりつながらなかったりしてやきもきする感じを恋に当てはめたこやまさんの目の付けどころはやっぱりすごいなと思いました。

こやま ラブコメの主題歌なんでやっぱり恋愛のことを歌わなと思ったんですけど、ヤバTの恋愛ソングってそんなにないのでどういう切り口にすべきかいろいろ考えたんです。そんな中でBluetoothって遠いとつながらへんし、近くてもうまく接続できなかったり、アップデートしていかないとつながらなくなったりするのが恋愛っぽいなと思ったんですよ。今まで「無線LANばり便利」とかUSBメモリについて歌った「Universal Serial Bus」とかパソコン周辺ソングをやってて、そのへんはやっぱり得意なので。

しばた パソコン周辺ソングってジャンル、ダサいなー(笑)。

こやま 「無線LANばり便利」「Universal Serial Bus」「Bluetooth Love」をパソコン周辺3部作として打ち出していこうと思います。「Bluetooth Love」はポップな曲調や出てくる単語でごまかしてますけど、実際はBluetoothについて歌ってましたというボケです。

──この曲の制作で難しかったところはありますか?

こやま 難しかったところというか、これ1回レコーディング終わったあとに「なんかキーが低いな」と思ってまるごと録り直してるんですよ。キーを上げたことによってしばたのキーが限界突破したのもよかった。

しばたありぼぼ(B, Vo)

しばた 元のキーはこれより10個くらい低かったんですよ。

こやま どんだけ低いねん(笑)。

──アルバムのインタビューでも「原付 〜法定速度の範囲で〜」のキーを上げた話がありましたよね(参照:「You need the Tank-top」インタビュー)。

こやま そうそう。ヤバT内でのトレンドが「しばたの声が高ければ高いほどいい」になっていて。実はアルバムの曲より「Bluetooth Love」を先にレコーディングしていたんで、この曲がきっかけで「You need the Tank-top」の収録曲のキーが高めになったんです。もう二度と録り直しはしたくないなと思ったから(笑)。

──女性は年を重ねるごとに声が低くなっていくので、しばたさんの高い声が出るうちにレコーディングしておくという点でも、キーが高い曲を出してくれたのがありがたいなといちファンとして思いました。

もりもと 若いうちにヌード撮るみたいな、そんな考え方が音楽にもあるんすね(笑)。

しばた きれいなうちにな(笑)。10年後全部歌えへんかもしれへんけど。

こやま 半音下げて歌えばええやん(笑)。

もりもと でも広瀬香美さんは今でもキーを上げて歌っているから。

こやま 広瀬香美さんはすごいよなあ。ものすごいアレンジして歌いはるし。

しばた がんばるわー。