ヤバイTシャツ屋さん“ぶどうかん”インタビュー|日本武道館公演で見たファンとの信頼関係 (2/2)

この人らはヤバTの親なんやな

──武道館のライブに向けて準備していたことや苦労したことはありますか?

こやま 心配していたのは、コロナ禍でぶくぶく太ってたんでむくみとか……。

しばた 私ともりもとくんは2週間断酒したんですよ。こやまさんは4日間やけど。

こやま すごいよな、4日間の断酒。

もりもと しないよりはね(笑)。

しばた ライブ2週間前に「断酒しような」ってみんなで決めたんですよ。でもこやまさん当日までそれについてずっと黙ってて、ライブが終わったあとに「実は4日前まで普通に飲んでた」って言ってきて。

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こやま 断酒もそうやけど、減量もせなあかんと思ってBMI指数の変化で勝負しようやって話してたのに、結局何も気にせず食べてたし飲んでましたね。体力を付けなければと思って……。

しばた ライブ中にふらふらしちゃうと困るからしょうがないね。

もりもと うん。もういいんじゃないですか(笑)。僕の心配事は、それぞれの家族たちがテンパらないかどうかでした。でも実際に蓋を開けてみたら……。

こやま 家族みんな堂々としてたな(笑)。

もりもと そう(笑)。だから僕らもただただ楽しくできました。

──普段アーティストとして活動しているわけではないご家族が、日本武道館のステージに上がって演奏までするというライブは初めて観ました(笑)。

しばた そういうところを見てやっぱこの人らはヤバTの親なんやなってめっちゃ思った。私らにはああいうメンタルの強さが受け継がれてるんやなって(笑)。

こやま 家族の登場は全然不安要素やなかったよな。

しばた こやまさんのお母さんが特にすごいんですよ。普段ライブをしていない人がいきなり武道館のステージで演奏することになったら、自分のことでいっぱいいっぱいになるはずやのに、本番中にこやまさんのギターのシールドがピアノ台の下に挟まっていることに気付いてローディーさんに伝えてて(笑)。

もりもと 僕のところからもシールドがピアノ台の下に挟まっているのが見えていて、もしかしたらシールドが抜けちゃうかもと心配していたところで、こやまさんのお母さんが指摘していてホンマにすごいなと。家族たちがゲストミュージシャンとして堂々とやってくれて本当によかった。リハで家族からの意見やアレンジも取り入れて、そこに僕らが応えたりしながらパフォーマンスをよりいいものにブラッシュアップできたし。

──子供の晴れ舞台に誘ってもらって親御さんもさぞかしうれしかったでしょうね。家族の関係がいいんだなと思いました。

しばた うちらの育ちのよさがバレるわー。

こやま いやいや、こいつら一家そろって狂ってるんちゃうか?ってみんな思ったはずやで(笑)。

しばた 普通のメンタルじゃ無理か(笑)。みんな仕事も休んで来てくれたのもありがたかったよな。

もりもと ライブ出演で休んだ分のしわ寄せが来てるって言ってたよ(笑)。でも3家族ともいい夏を過ごせたんやないかな。

しばた うん。それぞれよい家族旅行になったと思う。

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マナーを守りすぎて会場がスーン

──セットリストはどうやって決めたんですか?

しばた 大阪城ホールの曲数は超えたいみたいな話がまずあったよな。

こやま 僕らは曲数が多ければ多いほどいいと思ってるから(笑)。このタイミングでやったほうがいい曲、この規模だからやりたい曲、大阪城ホールでやってない曲……いろいろ考えて結局この32曲に落ち着きましたね。

しばた 曲順は家族パートの3曲が先に決まっていたからそこに合わせていったかな。

こやま そうそう。しかも渋めの選曲で「日本武道館でやる曲なん?」っていう(笑)。

もりもと 普段はこやまさんがばーっと候補を挙げて、僕としばたが軽くアイデアを出して決まるんですけど、今回はこやまさんが最後までずっと悩んでいて。結果、3人でよく話し合っていい形に着地したと思います。

しばた 今回のツアーは「大人の事情」(2018年12月発売の3rdフルアルバム「Tank-top Festival in JAPAN」の収録曲)を全箇所でやってるんですよ。意味わからん。

こやま あの曲が? なんで?

──「大人の事情」は、アルバムの6曲目に収録する予定だった曲が“大人の事情”で収録できなくなり、やっつけで作った曲ですよね。アコースティック編成のパフォーマンスがあったからこそすべての公演で披露することになったのかなと(笑)。セットリストを見渡すと、渋い家族パートがあるにしても、本当にヤバTはキラーチューンが多いバンドだなと思いました。

こやま 強い曲が多すぎて配置が難しかったんですよ。最後のほうにやった「かわE」は最初は前半に入れていたんですけど、さすがにしょっぱなから「かわE」は強すぎるなと思って、ほかの強い曲たちと一緒に最後にまとめて入れて。

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──「NO MONEY DANCE」で本編を締めたのもよかったなと思いました。キャッチーさや派手さで人気になった曲ではなく、ライブでこそ映えるグルーヴで魅せる曲なので。

しばた 最近お気に入りなんですよ。フェスでも盛り上がるようになって。

こやま 声を出せない環境でも楽しめる曲やしな。ほかの曲でもヤバTのお客さんってしっかりルールを守ってくれて全然声を出さないんです。ヤバTのライブを声出さないでこんなに楽しめるなら、みんな歓声を出せるようになったときにどうなってしまうんやろって思うんですよ。開演前に写真撮影のためにお客さんの前に僕らが出てきたときもみんなキャーとか声を一切出さず、マナーを守りすぎて会場がスーンとしてて(笑)。

しばた そんで「写真撮っていいよ」ってうちらが言ったらみんなが無言でスマホのシャッターを切るという。

こやま そうそう。あの感じ、もはやみんなボケすぎてるやろって。

しばた 100人くらいだったらまあわかる。でも8500人ですよ? 全員が黙ってあの空気を作り出してるんはボケとしか言いようがない(笑)。それがめっちゃ心地よかったんです。

こやま 1人でもしゃべったらそのボケがボケじゃなくなるわけじゃないですか。8500人が協力してできたボケってめちゃオモロいやんって思いましたね。

しばた みんなもオモロいと思ってそう(笑)。

──真面目を逆手に取ってふざけるのは、ヤバT流のボケっぽいですもんね。

こやま ホンマに(笑)。頼もしいですよ。ヤバTのお客さんってちゃんとヤバTの笑いをわかってくれてるなと思います。

しばた ボケでありつつ、コロナ禍に立ち止まることなく全35日程70公演のツアーができたのが、マナーを守ってくれたおかげだということをわかってくれてるところもうれしい。

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NHKの人にもWOWOWプラスさんで観てほしい

──日本武道館公演では来年10周年を迎えるという話もされていました。

もりもと 10年……ヤバいなあ。

こやま あっという間やったけど、2016年にメジャーデビューしてその半分がコロナ禍ってめちゃくちゃダルいよな。コロナ禍じゃなかったらもっとすごいことになってたかもしれへんとも思うし……でもヤバTはきっとそんな中でもがんばってるほうやから。

しばた コロナ禍やなかったら武道館でライブをやろうという発想もなかったしな。

もりもと 僕だって前髪を作ることはなかったと思う。

こやま 確かに。柔軟にいろいろやってますな。

しばた ホンマやな。

こやま 10年やってもまだ3人中2人が20代なのすごない? ヤバTってめっちゃ若いやん。

もりもと 客観的にヤバTって若いんですかね?

こやま 最近は若い才能がたくさんおるからそんなことない。

──単純にオリジナルメンバーで10年一度も休止することなくやってこれたのはすごいことだと思いますよ。

こやま 普通男女混合やと関係性おかしくなるもんな。

しばた 誰かと誰かが付き合ってたりね。

こやま 昔はしばたと付き合ってるとか言われてたけど、今はもう言われなくなったし。

しばた うちが2人のことをキモがりすぎてなくなってん(笑)。

しばたありぼぼ(B, Vo)

しばたありぼぼ(B, Vo)

もりもと そういう話はそれくらいにしとこや(笑)。

──武道館公演では、今年の年末に目標に掲げている「NHK紅白歌合戦」に出演できなければ、来年からテレビ番組でのパフォーマンスもしていくと話していました。

こやま それはあくまでも紅白に出るための作戦……作戦っていうか紅白は目標ですから。テレビっ子やからテレビなんて出たいに決まってるし、出たくなくて出ないって言ってるわけじゃなくて、あくまで「音楽番組初パフォーマンス」っていう売り文句で紅白に出たいと思っているだけなので。

しばた 泣く泣く出てない。

こやま そう。泣く泣くいろいろなチャンスを逃してきた。自分たちで変なルールを課してしまったから。まあでも今年は“ぶどうかん”で3公演やってますし、そろそろチャンスが来てもいいんやないかなと思ってます。

──ちなみに今年紅白候補のバンドって誰だと思います?

こやま うーん。バンドっていう枠はもう厳しいんちゃう?

スタッフ Saucy Dogとか、今年ドカーンと売れてるんじゃない?

しばた うわ! そうやん。ヤバTと同じ男女混合の3人組バンドやん。ヤバい!

こやま 僕らは純烈の枠で出演を目指します。

もりもと 純烈も新メンバーが入って話題性抜群やで。

こやま でも純烈みたいに「紅白に出たい」と言い続けて出れたらいいなと思ってるんですよ。この10年で着実に根を張ってきたと思うんで、NHKさんよろしくお願いします!

しばた WOWOWプラスさんもこうしてヤバTに協力してくれてますし、たくさんの人の力を借りて紅白に出たいです。

こやま NHKの人にWOWOWプラスさんでヤバTのライブを観てほしい!

──武道館公演は家族との共演もあって、NHKへのいいアピールになりそうです。

こやま 僕もそう思います。すごくいいバンドだなってわかるんじゃないかと。

もりもと 普通そういうこと自分で言う?

しばた インタビュアーさんの発言と間違ってると思われるで。

こやま 「いいバンドです」とこやまたくやが言いました。それくらい自信を持って観てもらえるライブになったと思うので、ぜひ皆さんWOWOWプラスで観てください。NHKの人も観てください!

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プロフィール

ヤバイTシャツ屋さん(ヤバイティーシャツヤサン)

こやまたくや(G, Vo)、しばたありぼぼ(B, Vo)、もりもりもと(Dr, Cho)からなる男女ツインボーカルのスリーピースバンド。2013年10月に大阪芸術大学に通っていた3人により結成された。2015年に本格的に活動を開始。2016年11月にフルアルバム「We love Tank-top」でユニバーサルミュージック内のレーベルUNIVERSAL SIGMAよりメジャーデビューを果たす。以降精力的にライブ活動をしながら、コンスタントに作品を発表し、2020年9月にリリースした4thフルアルバム「You need the Tank-top」で初のオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得。同年末より全35日程70公演にわたる全国ツアー「ヤバイTシャツ屋さん “You need the Tank-top” TOUR 2020-2021」を開催。2021年11月には大阪・大阪城ホール、2022年8月には東京・日本武道館での単独公演を成功に収めた。