WOWOWプラス「生中継!SIRUP『Roll & Bounce』LIVE at NIPPON BUDOKAN」放送記念|SIRUPインタビュー

SIRUPが11月11日に東京・日本武道館で開催するワンマンライブ「Roll & Bounce」の模様が、WOWOWプラスで生中継される。

2017年にTokyo Recordings(現:TOKA)がサウンドプロデュースした楽曲「Synapse」でデビューしたSIRUP。「Roll & Bounce」はSIRUPのデビュー5周年を記念して企画されたもので、彼が武道館で単独公演を行うのは今回が初となる。音楽ナタリーでは、武道館公演を控えるSIRUPにインタビューを実施。なぜこのタイミングで武道館のステージに立つ決意をしたのか、ライブへの意気込みや、デビューからの5年間に起こった自身の心境の変化などを語ってもらった。

取材・文 / 天野史彬撮影 / 曽我美芽ヘアメイク / TAKAI

WOWOWプラスでは東京・日本武道館で開催されるワンマンライブ「Roll & Bounce」の模様を生中継!

生中継!SIRUP「Roll & Bounce」LIVE at NIPPON BUDOKAN

放送日時:2022年11月11日(金)18:55~

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武道館が持つ文脈と、SIRUPが持つ文脈が重なった

──SIRUPさんにとって初の日本武道館単独公演「Roll & Bounce」が、11月11日に開催されます。デビュー5周年を記念したライブということですが、そもそもSIRUPさんの中で大きな会場でライブをしたいといった野心みたいなものはありますか?

もちろん、大きな会場でやることはアーティスト活動における目標の1つとしてありました。でも今は単純に会場の大きさで考えるというより、その会場が持つ文脈を意識するようになっている気がしますね。武道館をただの大きな会場として捉えるのではなくて、ほかの同じくらいのキャパシティの会場と比較したうえで、武道館だからこその意味を考えるようになったり、あるいは「自分はこの会場で何ができるだろうか?」ということを考えるようになったというか。実は2019年くらいにも「来年、武道館をやろう」みたいな話はあったんですよ。

SIRUP

──そうだったんですね。

デビューしてからけっこう早い段階で言われていたんです。武道館でのライブがエポックメイキングなものになりうるという意識はその頃にもあったんですけど、当時は自分が武道館で何をしたいかが全然思い浮かばなくて。あの段階でやったとしても、ただ「やっただけ」になってしまいそうな気がしたんですよね。何かを飛ばしてしまっている感じがしたし、もっと実直に進んでいきたいという気持ちがあった。今ならピースが全部そろったうえで、武道館に向かえるだろうと「Roll & Bounce」の開催を決めたんです。

──武道館という場所が持つ文脈と、SIRUPさんが持つ文脈が重なるタイミングが今だった。

そうです。飛び級しちゃうと、ファンの人たちにも“次”を見せることができなくなりそうな気がしたし、「これで終わり」っていう感じになってしまいそうだった。自分としては、その先に見せることのできる表現がある状態で、常にその場所にいたいんです。そうでないと、アートとしてもエンタテインメントとしても、よくないのかなって思います。

──こうしたライブ1つをとっても、「文脈」という言葉を使われるのがSIRUPさんらしいなと思いますね。

僕がやっているR&Bやヒップホップという音楽は、歴史的に見ても民権運動とかとつながってきたものだし、人権へのリスペクトや過去の音楽へのリスペクトがより深くあるものなので。今は当たり前のように流行っている表現でも、それがどこから来ているのか、どういった社会的な背景があって生まれたものなのか、そういうことを知ることが大事だし、それを知ることが面白いジャンルでもある。なので「文脈」というのは、やっぱり意識しますね。

コミュニティとしての空気感を楽しんでもらいたい

──今回の武道館公演には「Roll & Bounce」というタイトルが掲げられていますが、これはどういった経緯で付けられたんですか?

これは単純に、略したら「R&B」になるのがいいなと思って(笑)。

──なるほど(笑)。

ニュアンスとしては、「今は流れに乗って楽しもうぜ!」みたいな感じなんですけど、やっぱりコロナ禍以降、会場がバウンスしている状態を見ることができていないと感じるんですよね。今回の武道館公演は、僕の単独ライブというよりは、イベントとかパーティのような空気感にしたいんです。あまり「単独」と言いすぎると、「このアーティストを観に行くんだ!」って、来てくれる人たちにも力が入ってしまうと思うんですけど、それよりは「みんなでこの空間を共有しているんだ」という感覚になってもらえればいいなと思います。少しずつこうやってライブやイベントができるようになってきて、みんながよりいろんなことを意識したうえで武道館に集まると思うので。それなら単独ライブというより、コミュニティとしての空気感を楽しんでもらえたらいいなと。

SIRUP
SIRUP

──ライブを「コミュニティ」として捉えるというのは、今とても大事な感覚のような気がします。

音楽は特にそうですけど、各業界「みんながこれを好き」とか、「これが今の超流行」とか、そういうものがなくなってきていると思うんですよね。そういう状況に対してどうアプローチしていこうかと考えたとき、僕は自分がやりたいことを淡々と、でも情熱をもってやるのが大事だと思うんです。そこに共鳴してくれる人たちが集まってきてくれればいいし、そういう人たちに対して、こっちもウェルカムな態度でいれたらいいなって。そうやってSIRUPのコミュニティをデカくしていければいいなと。もちろん、コミュニティ意識を持つことはほかのコミュニティを拒絶することではなくて。あくまでも「自分がどこにいるか」を明確に意識していく、ということですね。

──そうですよね。

芸人さんでも、事務所を辞めてフリーでやって成功する人も出てきているじゃないですか。「みんながこれを聴いているから、自分もこれを聴かなきゃいけない」とか、「みんながこの服を着ているから、自分もそれを着なきゃいけない」とか、そういう時代もあったと思うんですけど、今はそうじゃない選択肢もたくさんあると思うんですよね。ビジネスとしてだけでなくても、人間として、自分は何が好きで、その好きなものを共有できる人たちはどこにいるんだろう?ということを考えて、探していくのはすごく大事なことだと思う。自分が好きなものや自分の生き方をチョイスしていくことは、同時に自分を知ることにもつながると思うので。難しいですけどね、同時に社会の一員でいないといけないので。それでも自分を知ることって、精神衛生的にめちゃくちゃいいことだと思うんです。