大塚 愛インタビュー|「LOVE IS BORN」をWOWOWプラスで生中継、ファンとともに祝福する19thアニバーサリー (2/2)

自分の曲との同窓会

──そして、もう1つがシングル曲のみで構成された、2018年の15周年ライブです。

シングル曲だけにしようと自分で言ってみたものの、1曲1曲が濃すぎちゃうから体力も必要ですごく大変だったんですよ。しかも私の出してきたシングルはタイプがバラバラで、どれもパンチがあるので、人格が異なるような曲を連続で披露するのもなかなか大変。もちろん切り替えやすい曲順に組み替えてはいるんですけど、シングル曲をつなげたときに「15年も続いたんだ」と時の流れをすごく実感してしまって、曲が人のように思えてきたんです。そういう曲たちがリレーみたいに、バトンをつないでいる感じに感謝しながら歌っていました。

──このライブのときは、ご自身の中で何か新しい発見はありましたか?

私、基本的にはリリースした時点でその曲と“さよなら”をするんです。リリースしたら自分から離れていって、あとはその曲がどう受け入れられて、どう愛されて、どう転がって変わっていくかを見守っているような感覚で、こういう「LOVE IS BORN」みたいな機会でひさしぶりに歌ったときに「ああ、この曲ってこうだったな」とか「すごく頼りになる感じに成長したな」とか同窓会的な気分になるんですよ。それこそ「さくらんぼ」なんて、自分の知らないところで転がりすぎちゃって、もはやにゃんこスターさんの曲みたいになっていますし(笑)。そうやって曲たちがそれぞれ自立してくれるので、私もどこか他人の曲を歌っている気分になることもあります。

──それは興味深い話ですね。それこそ今お話に上がった「さくらんぼ」なんて、リリースから20年近く経った今も幅広い層に愛され続けていて、リアルタイムで知らない世代までもが知っている曲にまで成長しているわけで。

すごいことだなと改めて思いますし、感謝しかないです。娘にも食事のときに、「今日のごはんも、きっとあの曲のおかげです。感謝しましょう!」と話すくらいですから(笑)。

──あの曲が出稼ぎしてきてくれたぞと(笑)。面白いですよね、19年にわたってそういう感覚を楽しめていることって。

そうですね。でも、上にはもっととんでもない広がりを見せて、先を走っている素晴らしい楽曲がたくさんあるので、いずれはそんなところにまで足を踏み入れられたら本当に幸せですね。

大塚 愛

──2012年以降は毎年順調に行われていた「LOVE IS BORN」ですが、2020年はコロナ禍の影響もあり初めて無観客のスタジオライブ形式で実施されました。2021年はLINE CUBE SHIBUYAで有観客公演だったものの観客は声を出せないという、それ以前とは異なる状況で行われました。こういう時期だからこその工夫やこだわりには、どういったものがありましたか?

まず、配信だけでやった2020年はどんな感じになるのかわからないまま臨んだんですけど、それこそテレビの音楽番組にたくさん出させてもらった経験がここで生きたのかなというのがあって。なので、カメラを通しての見せ方にはそんなに不安がなくて、「これくらいのテンションでいけば画面の向こうにこれくらいの温度で見せられる」と予測しながらできたので、「あ、そんなに苦手じゃない。むしろ楽しいしやりやすい」と思いました。あと、お客さんの中には恥ずかしくて手を挙げたくても挙げられない人もたくさんいるので、配信のチャットでは言葉を打ち込める分その恥ずかしさが半減されて、いろんな人の声が聞けたのも面白かったし。それはそれで熱をたくさん感じられたので、今後もアリだなと思っています。

──では、2021年のときは?

お客さんが目の前にいるのに声を出せないというのは、私のライブにとっては致命傷だなというのをすごく感じました。みんなで一緒に歌ったり合いの手を入れたりして成立する楽曲がいかに多いかということを実感して、これはちょっと営業妨害だなと(笑)。配信よりも成り立たないんじゃないかという不安がありましたね。なので、“みんなで参加しているんだ”とお客さんの気持ちを盛り上げるために、合いの手の声が出るグッズを作ってもらって。そのグッズを使ってみんなで叫んでいるかのようにすることでしのいでいましたけど、さすがにそろそろみんなと一緒に歌いたいですよね。だから、中にマイクが付いたマスクを早く発明してもらいたいです(笑)。

──拡声器のような(笑)。でも、先ほどの無観客オンラインライブでの新たな気付きを含め、大塚さんにとってこの2年半は決してマイナスだけではなかったんですね。

はい。テレビとかカメラを通しての伝え方やパフォーマンスの仕方が自然と身に付いていると、実際に観客が見えなくても頭の中では観客がイメージできるという。それは慣れや経験なのかな。

大塚 愛

みんなで「懐かしいね」と言い合えるのが一番

──そんなコロナ禍における挑戦を経て、今年は3年ぶりに日比谷野音に戻ります。

まず「LOVE IS BORN」は感謝祭という側面が大きいので、1stアルバム「LOVE PUNCH」から最新作「LOVE POP」までの楽曲をとにかくバランスよく、調整しながら入れ込むことがメインとしてあって。かつ、前回の「LOVE IS BORN」から1年かけて自分が得たもの、失ったものを含めて「今の私、こんな感じです」というものを見せられる機会なので、いろんな形で楽しんでいただけたらと。なので、去年よりもいいものを目指して「今年はめっちゃよかったんじゃない?」と言えるようなライブをしたいと思っています。とはいえ、最終的にはみんなで「懐かしいね」と言い合えるのが一番かな(笑)。

──今回はWOWOWプラスでの生中継も入ります。会場にどうしても行けない人もいると思うので、放送を楽しみにしている方に向けてメッセージをいただけますか?

テレビで観てくれる人にも楽しんでもらえるようにカメラを意識しながら、でも実際に会場に来てくれている人も置き去りにしないという間を取っていきたいなと思っているので、会場と距離は離れていても、あたかもその場で観ているかのような感じにしたいなと思っています。

──ちょっと気が早いですけど、大塚さんは来年デビュー20周年という大きな節目を迎えることになります。来年の「LOVE IS BORN」はさらに特別なものになるのではないでしょうか。

でもわからないですよ。今年で終わるかもしれませんし(笑)。

──いやいや、そんな悲しいことを言わないでください(笑)。でも、その節目のタイミングこそ一緒に歌えるような未来になっていると、これ以上の喜びはないですよね。

そのタイミングでみんなの歌声が戻ってきたら、20周年というだけでもありがたいのに、より感動的なものが生まれるでしょうね。ぜひそこは、今年のライブと合わせて楽しんでほしいですね。

──20周年のライブを特別なものにするためには、まず今年の19周年ライブをみんなで盛り上げて、大成功させることが重要ですものね。ちなみにWOWOWプラスでは、この生中継に合わせて9月9日には2007年の野音での4周年ライブも改めて放送されるそうです。

そのあたりのライブはクオリティの低さが気になってしまうんですけど、それを観てから今年の「LOVE IS BORN」を観てもらえたら、今はもっとよくなっていることをわかってもらえるんじゃないかな(笑)。「大塚さん、どんどんよくなってるね!」と思ってもらえるようなライブができるよう、がんばります!

大塚 愛

公演情報

LOVE IS BORN ~19th Anniversary 2022~

2022年9月11日(日)東京都 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)

プロフィール

大塚 愛(オオツカアイ)

1982年生まれ、大阪出身の女性シンガーソングライター。2003年にシングル「桃ノ花ビラ」でメジャーデビュー。2ndシングル「さくらんぼ」がロングヒットを記録し、2004年夏には着うた史上初の100万ダウンロードを達成する。その後も「Happy Days」「金魚花火」「大好きだよ。」などヒット曲を連発し、2004年の日本レコード大賞など音楽賞レースの新人賞を総ナメにした。2019年1月にはデビュー15周年を記念したオールタイム・ベストアルバム「愛 am BEST, too」をリリース。イラストレーター、絵本作家、アーティストへの楽曲提供などに加え、2019年から本格的に油絵を描き始め、2020年には初めての小説「開けちゃいけないんだよ」を「小説現代」に寄稿するなど、クリエイターとしてマルチな才能を発揮している。2021年2月にリメイクアルバム「犬塚 愛 One on One Collaboration」とライブ作品「LOVE IS BORN ~17th Anniversary 2020~」を同時発売。12月にアルバム「LOVE POP」をリリースした。翌2022年7月にはヒット曲「SMILY」をリアレンジした楽曲「SMILY2」を発表した。