大塚 愛が語る初コラボアルバム「marble」|ドリカム中村正人インタビューと参加者コメントも

大塚 愛が初のコラボアルバム「marble」をリリースした。

デビュー20周年という節目にリリースされた本作には、川谷絵音、大沢伸一(MONDO GROSSO、RHYME SO)、ミト(クラムボン)、中村正人(DREAMS COME TRUE)、蔦谷好位置、水野良樹(いきものがかり)、長屋晴子(緑黄色社会)という豪華かつ多彩なアーティストたちが楽曲提供。大塚のシンガーとしての魅力をそれぞれ異なるアプローチで引き出すことに成功している。

音楽ナタリーは本作の発売を記念した特集を公開。大塚へのソロインタビューと参加アーティストのコメントを掲載する予定だったが、「大塚 愛の魅力を語らせてほしい」という本人たっての希望により、ドリカム中村へのインタビューも行うことに。3つの企画からなるこの特集を通して、大塚 愛というシンガーや「marble」の魅力を存分に感じ取ってほしい。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 曽我美芽

ああ、自分にはちゃんと個性があったんだ

──なぜデビュー20周年というタイミングに、自身初となるコラボアルバムを作ろうと考えたんですか?

1stアルバム「LOVE PUNCH」(2004年3月発表)から始まった「LOVE ○○」シリーズが、自分の中で9枚目のアルバム「LOVE POP」(2021年12月発表)で終わりを迎えたなっていう感覚があって。もしその流れとは違う作品を作るなら、「今このタイミングだな」と思ったんです。だから、デビュー20周年だからということはあまり関係なくて。

──たまたまタイミングが合致したと。確かに「LOVE POP」リリース時のインタビューを拝見すると、ひとつの到達点のような作品だという話もありましたし。

そうですね。なので、自分が今までやったことないことをやってみるには、タイミングとしてちょうどよくて。あとは、人としゃべれるようになってきたということも大きかったのかな。

大塚 愛

──それは、コロナの状況がようやく落ち着いてきたから?

いや、そっちじゃなくて。自分が人として成長して、ようやく他者とコミュニケーションが取れるようになってきたという意味です(笑)。たぶんもっと若い頃だったら、ほかのアーティストの方と一緒に作品を作ることは難しかったんじゃないかなと思うんです。

──特に大塚さんの場合、歌よりもソングライティングに重きを置いてきた印象が強いので、この企画自体にびっくりしたんです。

私、自分のことをシンガーだなんて一度も思ったことないんですよ。

──これまでもそう発言していましたが、今でもその感覚は強いんですか?

はい。歌より作品が主であり、大事にしているところなので。自分の歌に合わせて曲を作るんじゃなくて、曲に合わせて歌を作るところは今も全然変わっていないです。そもそも自分のシンガーという部分に対しての評価がマイナスに近いぐらい低いので、今作はシンガーとしての修行なのかなと思っていて。あと、自分がほかの方に楽曲提供するときに、他人が書いた楽曲を歌う人の気持ちがわからないよりも、その気持ちを理解できていたほうがいいのかなとも思ったんです。

──メジャーシーンで20年にわたり歌を続けていても、そこに対する自信や肯定感は得られない?

一切ないです。

──そうなんですね。僕は大塚さんの楽曲を聴かせていただくと、カラフルな楽曲に合わせた多彩な歌い方にシンガーとしての個性を感じていたので、そうきっぱり言い切られるとびっくりします。

今までは「個性がないことが個性」だと思ってきたので、そう評価していただくのはとてもありがたいです。ただ、今回のアルバムの制作を通して、これだけいろんな人が書いた幅広い楽曲を歌っても全部私っぽくまとまったことで、「ああ、自分にはちゃんと個性があったんだ」という気付きにもなりました。

──では、この制作を経験したことで、少し自信にもつながった?

自信はまだないです(笑)。「ヘッタクソだなあ」っていつもイライラしているくらいですから。

──わかりました(笑)。今作に収録された7曲はどれもタイプが異なりますし、普通に歌って1枚の作品としてまとめようとしたら、とっ散らかった内容になってしまう可能性も高い。でも、ここまで統一感が強くまとまったのは、やっぱり大塚さんの声や歌が持つ魅力によるものだと思うんです。

楽曲に関しては、今までのオリジナルアルバムと大差ないぐらいの幅の広さでしたし、そういう経験が今作にも生きたのかもしれません。その点においては私、きっとカメレオン俳優ならぬ「カメレオンシンガー」なんだと思います(笑)。

──この豪華なコラボレーション相手はどのように決めたんでしょう?

私が尊敬していて、「この人の書く曲を歌ってみたい」と思った方々にオファーさせていただきました。

絶対に私の声に合う曲

──ここからは1曲ずつ、じっくりお話を伺いたいと思います。まずは、オープニングを飾る川谷絵音さん作詞作曲による「マイナーなキス」。

えのぴょん(川谷)はすごく忙しい人なので、断られるだろうなと思っていたら、まさかのOKの返事をいただいて。そこから「じゃあ、ドラマの主題歌みたいな曲が欲しいな」と伝えたら、すごくあっさりと「わかりました!」と返ってきて、しばらくしたらすごい曲が届きました(笑)。

──歌詞の内容に関しても、完全にお任せだったんですか?

私はサスペンスが好きだから「サスペンスドラマみたいな歌詞がいいな」とだけ伝えて、あとは完全にお任せでした。

大塚 愛

──こういうスリリングなバンドサウンドの楽曲を、大塚さんが歌うことがすごく新鮮です。

最初にデモを聴いたときから「絶対に私の声に合う曲だ」と思ったんですけど、言葉数も多いし息継ぎできるところもあんまりないし、すごく体力の必要な忙しい歌なんですよ(笑)。だけど、無駄な要素が一切なくてすべてが完璧。「えのぴょん、さすがだな。やっぱりすごい子なんだね」って改めて思いました。

──ご自身が書いた歌詞を歌う場合と、今回のように提供していただいた歌詞を歌う場合とでは、違いを感じることはありましたか?

えのぴょんがどういう感じで書いたのかは本人に聞いていないのでわからないんですけど、「そうだね、だらしないね」みたいに歌詞からえのぴょんが透けて見えてきちゃって(笑)。つかみどころがなくてよくわからない彼の魅力が歌詞にもしっかり反映されていて、この曲を通してえのぴょんと近くで会えた気がしたんです。そういう意味でも面白かったです。ただ、私だったらこれは人に提供しないで自分で歌うんじゃないかな。それくらいいい曲ですし、それを私に提供してくれた事実がただただすごいなと思いました。

──そこは大塚さんのためにと思って、本気を出したところもあったんでしょうね。アルバムは1曲目からギアが入りまくっているのに、続く大沢伸一さんによる「vanity」もまたパンチが強い曲で。「マイナーなキス」から色がガラッと変わりますが、このクールな感じもいいですね。

大沢さんにはいまだにお会いできていないんですよ。ただ、「大沢さんが自由に作ったもので絶対大丈夫です」と曲をお願いしたら、最初にデモを聴いた瞬間に「絶対に私に合う」と思う曲が届きました。

──この曲では大塚さんが作詞を担当しています。

デモの段階で仮の歌詞が付いていたんですが、大沢さんは「仮歌詞を使ってもいいし、自分で考えてもいいよ」とおっしゃってくださって。このメロディが持っている毒素を歌詞にしたいなと思ったので、自分で書きました。

──サビに当たるパートの「コピペパパパラポピピレリペパラポ」ってフレーズが、かなり強烈です。

やっぱり「(天空の城)ラピュタ」で育ってきたから、呪文系が大好きなもので(笑)。大沢さんに怒られたらどうしようかなと思ったんですけど、大丈夫でした。実はこの曲の歌詞なんですけど……蔦谷(好位置)さんとまだお会いしたことない頃、蔦谷さんの夢に私が出てきたそうで。あとでお会いしたときに「僕、夢に出てきてから愛ちゃんのことを好きになったんだよ」という話をされて、「あ、これ(歌詞に)使える」と思って、それを今回ここで歌詞として使ったんです。

ミトが吹き込む、大草原のような空気

──3曲目「マゼンタ」は前の2曲とは異なるオーガニックな作風です。この曲はクラムボンのミトさんが作詞作曲を手がけています。

ミトさんもオファーするまでは面識がなくて、初めてお会いしたのはオケのレコーディングの日だったんです。曲に関しては「ミトさんの色を出していただいたら絶対大丈夫です」とお伝えしたら、「マゼンタ」が届いて。これも絶対自分に合うなと思いました。

──お会いする前、ミトさんにはどういうイメージがありましたか?

“空気がいい”音楽をしてそうで、ピュアで魅力的な人なんじゃないかなって。特にこのアルバムって、1曲目と2曲目がすごくクレイジーじゃないですか(笑)。そっちに偏るんじゃなくて、ミトさんが作るようなピュアな要素も絶対に必要だと思っていたんです。「マゼンタ」が入ることで全体のバランスを調整してくれたというか、地下室の悪い空気をきれいな大草原の空気で浄化してくれる。そういう面をこのアルバムで出せたのも、またよかったなと思っています。

──歌詞に関してはいかがですか?

最初にミトさんからいただいたときに、「私、説教をされているのかな?」と思いました(笑)。「自分でやりなよ」みたいなことを遠回しに言われているのかなって。でも、安易に「歌詞の意味はこうなんですか?」って聞くのは違うと思って、自分の中で長い期間噛み砕いて、ミトさんのところに答え合わせに行きたいなと考えたんです。

──現時点で、この歌詞をどう解釈しましたか?

生きることへの指針……みたいな歌詞なのかなと、そう解釈しています。

大人の遊びってここまでしなきゃね

──4曲目はDREAMS COME TRUEの中村正人さん作曲による「グッバイ蕎麦」。この曲はどのようにオーダーしたんでしょう?

最初は「お任せで」とお願いしたら、すごい曲が飛んできて。なので、こちらもすごい歌詞で返したくなっちゃって、やっぱり“おふざけ”モードかなと思ってふざけた歌詞で返しました(笑)。そこから、もっとふざけたコーラスが入った音源が届いたんですけど、やっぱりマサさんは斜め上に行かれるなと思って。コーラスとかガヤとか最後の最後までこだわりまくって、「大人の遊びはここまでしなきゃね」みたいなことを教わった気がしました。

大塚 愛

──中村さんにお話を伺った際、この歌詞を絶賛していたんですよ。

本当ですか? よかった、怒られなくて(笑)。いつか歌謡曲をやりたいなと思っていたんです。昭和歌謡にはとんちの利いた、遊び心に富んだ歌詞が多かったじゃないですか。それを自分でもやるにあたって、昭和歌謡の特徴を研究したり、「どこが面白いから、今も昭和歌謡ファンがたくさんいるのか?」ということを分析したりして、作詞に臨みました。

──この歌詞に対して、歌い方もいい意味で肩の力が抜けた感じといいますか。

この歌はマサさんが録ってくれたんですけど、メンタルの修行なのかなという感じでした。レコーディングはすごく緊張してずっと地に足が着いていなくて、自分本来の力が発揮できてないような気がしながら歌っていました。本当は考えすぎずに歌えたらよかったんですけど、すごく真面目に臨みすぎてしまって……だって、ドリカムがいつもレコーディングされているスタジオで、マサさんがディレクションするっていう状況がもうおかしいじゃないですか(笑)。それもあってガチガチでした。

──そうだったんですね。でも、音源からはおっしゃるようなガチガチさはまったく伝わりませんでしたよ。それにしても、ここまでの4曲は歌詞のテイストも曲調もまったく異なりますが、大塚さんはそれぞれに合った歌い方をされていて。最初にカメレオンシンガーとおっしゃいましたが、本当にその通りだなと実感しています。

中途半端にやるのが一番面白くないので、ここはもう振り切ろうと思いながら歌声を作っていきました。