国民的バンドが3本のツアーで見せた表情
- 12月20日~3月3日
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ライブツアー「Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR "The White Lounge"」を開催。
- 1月17日
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映画「サイレントラブ」の主題歌「ナハトムジーク」を配信リリース。
- 4月12日
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テレビ東京系「忘却バッテリー」のオープニングテーマ「ライラック」を配信リリース。
- 5月20日
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映画「ディア・ファミリー」の主題歌「Dear」を配信リリース。
- 6月12日
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「コロンブス」を配信リリース。
- 7月3日
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「テレビ朝日系列 2024スポーツ応援ソング」として「アポロドロス」を配信リリース。
- 7月6日~21日
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バンド初のスタジアムツアー「ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~」を兵庫・ノエビアスタジアム神戸と神奈川・横浜スタジアムで開催。
- 8月9日
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Honda「FREED」CMソング「familie」を配信リリース。
- 10月5日~11月20日
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神奈川・Kアリーナ横浜で計10公演の定期公演「Mrs. GREEN APPLE on "Harmony"」を開催。約20万人を動員した。
- 12月30日
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「第66回 輝く!日本レコード大賞」を受賞。2年連続受賞の快挙。
- 12月31日
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「第75回NHK紅白歌合戦」出場。
前年の12月から年を跨いで3カ月間、ミセスはライブツアー「The White Lounge」で全国各地を回っていた。「The White Lounge」はこれまでの彼らの歴史において異色のツアーだったと言える。その内容は全9編のオムニバス形式の音楽劇。全曲にリアレンジが施され、楽曲を軸にした物語が繰り広げられた。観客それぞれが先入観を挟まずに物語を解釈できるよう、事前に徹底してネタバレ禁止を周知。2019年にもミセスはネタバレNGの音楽劇的なホールツアー「The ROOM TOUR」を行ったことがあるが、その系譜を継ぎながらも、「The White Lounge」は管楽器隊、10人のキャスト、演劇専門の演出家を加えたストイックな音楽劇だった。「また、君と踊れたらいいのに……」という主人公の切ない言葉を経て披露される、追憶の「ダンスホール」。主人公が感情剥き出しに絶叫する、激昂の「ツキマシテハ」。軽やかなステップとともに届けられる、ポップに突き抜けた「Attitude」。各曲に対してこれまでのイメージとは別の表情が見えたり、楽曲の核となる感情が濃縮された状態であらわになったり、1曲1曲、ミセスの楽曲と新たに出会っていくような時間だった。この音楽劇の主役はあくまでも楽曲で、それぞれの物語と楽曲をどのように受け取るかは観客次第。ファイナルのカーテンコールで大森は「すごく甘ったれた、皆さんに頼ったツアーにこうやって挑戦させていただけました」と客席を見渡した。ファンに信頼を置き、彼らはすべての解釈を観る者に委ねるという音楽劇をやり切った。
春には2024年の邦楽シーンを代表する楽曲「ライラック」が誕生した。2018年に発表された「青と夏」のアンサーソング的な位置付けとなるこの曲は、ミセスにとってひさしぶりの、王道とも言えるギターロック。ストリーミングの累計再生回数は6億回を突破した。発表から1年を過ぎた今も配信チャートを独走しており、今、日本で最も聴かれている楽曲だと言っていいだろう。ミセスはEDMからヒップホップ、ジャズ、フォークまでありとあらゆる音楽を奏でてきたが、始まりがギターロックだったのは確かだ。実際、爽快なギターサウンドを前面に打ち出した「青と夏」は“原点回帰”の1作だった。ミセス史上最高難易度の若井のテクニカルなギターリフが炸裂する「ライラック」。結成10年を経て一層アップデートされた、ミセスの最新のギターロックが日本中に鳴り響いている事実が喜ばしい。
夏には日本のバンド史上最年少となるスタジアムツアー「ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~」が兵庫・ノエビアスタジアム神戸と神奈川・横浜スタジアムで全4公演行われた。「ゼンジン未到」は彼らがデビュー前の2014年から6度にわたって開催してきた、バンドの歴史に欠かせないライブシリーズ。主にライブハウスを舞台にオーディエンスとの近い距離感でのライブを意識し、バンドの内面性や本質にフォーカスを当てるような位置付けのシリーズだった。ミセスは2018年にホールツアー「ENSEMBLE TOUR」でエンタテインメント性のある華やかなショーを繰り広げたあと、その2カ月後に打って変わって会場の照明を落とし、スティックライトのみのシンプルな演出でライブハウスツアー「ゼンジン未到とプロテスト~回帰編~」を行った。ある意味、彼らは「ゼンジン未到」でバンドの原点に帰り、根底にある本質を確かめ、“外側”と“内側”のバランスを取っていたのかもしれない。その「ゼンジン未到」シリーズの次なる舞台がスタジアム会場だという知らせは、当時多くのファンを驚かせた。公演当日、夕暮れの風をまといながら、どこまでもナチュラルな空気感で演奏する3人の姿が印象的だった。「ゼンジン未到」シリーズを象徴する楽曲「CONFLICT」で彼らの信念と哲学がスタジアムに鳴り響く。若井と藤澤がトロッコに乗り込み、客席を回りながらフェーズ1初期のライブの中心を担った「愛情と矛先」を届ける。人との出会いの尊さが込められた「我逢人」でスタジアムを埋め尽くすオーディエンスの大合唱が広がる──これがフェーズ2のミセスの等身大の姿だ。思えば、「ゼンジン未到」はその時々のありのままのミセスの姿が浮かび上がってくるようなラインだったと思う。現在のミセスが等身大のライブを行うのに相応な会場を考えると、この年の「ゼンジン未到」の舞台がスタジアムだったのは必然的なことだったかもしれない。
秋にはKアリーナ横浜で計10日間という規格外の定期公演「Mrs. GREEN APPLE on "Harmony"」を行い、のべ約20万人を動員。フォーマルな衣装をまとった3人はクラシカルな雰囲気が漂う舞台で、パーカッション、バイオリン、ビオラ、チェロ、トランペット、トロンボーン、サックスの管弦楽団とともに芳醇なアンサンブルを紡ぎ上げた。演目の19曲すべてに管弦アレンジが施されているのも「Harmony」ならでは。2018年、彼らは演奏スキルを追求したアルバム「ENSEMBLE」を携え、ストイックに音楽と向き合うようなホールツアーを行ったが、「Harmony」はバンドでの演奏を極めた「ENSEMBLE」のその先でハーモニーを奏でることを心から楽しみ、そして会場を訪れた人々の心を音楽で豊かにするような時間だった。規模感だけではなく、10年間磨き続けてきた彼らの確かなスキルも、大森の頭の中にある絵図、ビジョンを実現に至らせていると感じる。
デビュー10周年に見せる、さらなる景色
- 1月20日
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NHK「Mrs. GREEN APPLE 18祭」テーマソング「ダーリン」を配信リリース。
- 2月15日、16日
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韓国・TIGER DOMEで初の韓国公演「MGA LIVE in SEOUL, KOREA 2025」を開催。
- 4月5日
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日本テレビ系「薬屋のひとりごと」第2期 第2クール オープニングテーマ「クスシキ」を配信リリース。
- 5月2日
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大森元貴と菊池風磨(timelesz)が主演を務める映画「#真相をお話しします」主題歌「天国」を配信リリース。
- 5月22日
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音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」で最優秀アーティスト賞を受賞。
- 6月4日
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フジテレビ系情報番組「サン!シャイン」のテーマソング「breakfast」を配信リリース。
- 6月18日
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神奈川・Kアリーナ横浜でエンタテインメントショー「Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』」を開催。
ATEEZ、日向坂46、HY、LE SSERAFIM、the engy、TOMOO、M!LK、My Hair is Badが出演した。
- 7月8日
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デビュー10周年ベストアルバム「10」をリリース。
- 7月19日
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東京ディズニーリゾート®の夏のスペシャルイベント「サマー・クールオフ at Tokyo Disney Resort」とコラボレーション「Carrying Happiness」を配信リリース。
- 7月26日、27日
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デビュー10周年を記念したアニバーサリーライブ「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~」を神奈川・山下ふ頭特設会場で開催。
- 10月25日~12月20日
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5大ドームツアー「Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”」を開催。
ファイナルは東京・東京ドーム4DAYS。
2025年、いよいよミセスは日本の音楽シーン全体に影響をもたらしていく。6月にはKアリーナ横浜で新たな音楽の祭典「Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』」を開催。主催者のミセスをはじめ、ATEEZ、日向坂46、HY、LE SSERAFIM、the engy、TOMOO、M!LK、My Hair is Badというジャンルの異なる9組のアーティストが一堂に会してパフォーマンスを披露し合った。ステージ前にはアーティスト同士がコミュニケーションを取れる円卓スペースが用意され、そこでアーティストたちがそれぞれのパフォーマンスを観て盛り上がる。イベント後半には各グループのメンバーが円卓で混ざり合い、すっかり仲よくなって楽しそうに談笑していた。最後の挨拶で大森は「こういうかしこまった雰囲気のイベントは、しっかりとイベントとしてのゴールがあるものです。でもご覧いただいた通り、『CEREMONY』にはないです。誰かを表彰するわけでもなく、各アーティストがオンリーワンであることを提唱して、僕らにもそれを言い聞かせる必要があると思いました」と述べた。ミセスは“受賞者”のいないセレモニーを通して、すべてのアーティストが唯一無二の存在であることを唱え、アーティスト同士が互いの音楽や文化を讃え合う時間を作り上げた。さらに大森は「ミュージシャン、アーティストは、互いのことを心の底から認め合うということがすごく難しい生き物でして。でも僕は今日、心の底から拍手が出てきた自分に、本当に感動しました。このイベントになんの意味があって、どこに向かっていくのか……きれいごとを少しずつでも絶やさず続けることによって、この先の日本の音楽の未来が作られていくと思っています」とまっすぐに前を見据えて言葉にした。自らが“メディア”となり、日本の音楽の未来の礎になるような機会を提供し、意見を発信していく。大森は「こうしたイベントの発足は、別にミセスじゃなくてもいいんです。今回たまたま僕たちにタイミングが巡ってきただけ」とも言っていたが、バンドとして初となるレコード大賞連覇を果たし、音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN」で最優秀アーティスト賞を受賞したミセスが自ら発起人となって舵を取っていくことは非常に意義深い。
ミセスは前年に「ライラック」を皮切りに怒涛の5カ月連続楽曲リリースを行ったが、2025年もその勢いは止まらない。二胡や琴などでオリエンタルな要素を取り入れた「クスシキ」(アニメ「薬屋のひとりごと」第2期 第2クールのオープニングテーマ)、人の醜さと愛おしさを棘のある言葉で描いた「天国」(映画「#真相をお話しします」主題歌)、軽快な四つ打ちのリズムに乗せて3人がダンスを繰り広げる「breakfast」(フジテレビ系情報番組「サン!シャイン」テーマソング)といった挑戦的な楽曲が次々と発表されている。「天国」のようなどこかおぞましさを感じるほどの重厚な楽曲が届いたかと思えば、そこに「breakfast」のようなさわやかなダンスナンバーが続くその振れ幅が清々しい。さらに彼らは千葉・東京ディズニーリゾート®︎とタッグを組み、夏のスペシャルイベント「サマー・クールオフ at Tokyo Disney Resort」にテーマソング「Carrying Happiness」を書き下ろし提供。東京ディズニーリゾート®︎のアトラクションで日本人アーティストの楽曲が流れるのは、長い歴史の中でも初めてのことだ。また現在「キリン 午後の紅茶」の新CMにて、新曲「夏の影」がオンエアされている。こちらはノスタルジックな夏の情景を彷彿とさせる、切なくも優しいストリングスバラードだ。漂う情緒も音楽ジャンルも極端なまでに各曲異なるが、それらのどれもが“Mrs. GREEN APPLEの音楽”であることを私たちはもう知っている。
7月8日にミセスはデビュー10周年を迎え、アニバーサリーベストアルバム「10」をリリースした。アルバムには2014年7月5日にライブ会場限定で販売された1stミニアルバム「Introduction」のシークレットトラック「慶びの種」の新録バージョンを収録。大森が17歳のときに書き、ギター1本の弾き語りで収録したこの曲は、まるで10年以上の時を経て種が花を咲かせるように、フェーズ2にふさわしい壮大なストリングアレンジに昇華されている。「支えては支えられて 傷つけ傷つけられて 忘れては忘れられて 思っては思われてさ 本当にバカバカしいね でも嬉しく思うよ まだまだ捨てたもんじゃないってね」──人というものは決して美しい生き物ではないと十分にわかったうえで、それでもあきらめずに希望を胸に抱き、人とのつながりを求めてきたミセスの10年間の道のりをこの曲が改めて教えてくれる。
ミセスがデビュー10周年ライブ「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~」の会場に選んだのは、160年以上にわたり世界中の文化を受け入れ発展を遂げてきた異国情緒漂う港町・横浜の山下ふ頭。彼らは野外に特設会場を建て、7月26、27日に2日間で10万人を動員する。バンドの濃密な歴史を携えた、特別な“真夏の宴”になることだろう。このアニバーサリーライブを経て、彼らは10月から12月にかけて計12公演の5大ドームツアー「Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”」を開催する。「EDEN no SONO」「NOAH no HAKOBUNE」「Atlantis」と続いてきたストーリーラインの待望の新作だ。建造物と言ってもいいスケール感のステージセットや観客を物語に引き込む盛大な演出によって、コンセプチュアルな世界観が築き上げられてきたストーリーライン。バンド史上最大規模となるツアーで、彼らは規格外のエンタテインメントを私たちに提示してくれるはずだ。そしてデビュー10周年イヤーのその先で、ミセスはどのような景色を見せてくれるのだろうか。3人の目の前に広がるのは、まだ誰も足を踏み入れたことのない前人未到の地だ。
生中継!Mrs. GREEN APPLE「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~」
2025年7月27日(日)18:00~
リピート放送:2025年8月3日(日)18:00~
アーカイブ配信:WOWOWオンデマンドで2025年8月3日(日)0:00~23:59まで。
Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW "Utopia"
WOWOWオンデマンドで2025年7月27日(日)23:59までアーカイブ配信中。
Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 "Atlantis"
WOWOWオンデマンドで2025年7月27日(日)23:59までアーカイブ配信中。
Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR 2023 "NOAH no HAKOBUNE"
2025年8月3日(日)13:00~
Mrs. GREEN APPLE ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~
2025年8月3日(日)15:30~
Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』
2025年9月放送・配信予定
Mrs. GREEN APPLE 10th Anniversary 一挙放送スペシャル
2025年9月放送・配信予定
プロフィール
Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)
2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。「青と夏」「僕のこと」「ロマンチシズム」といったヒット曲を生み出し、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデンの園」では8万人動員の東名阪公演を即日ソールドアウトさせるも、メジャーデビュー5周年となる2020年7月8日に“フェーズ1完結”を宣言して活動休止期間に入る。約1年8カ月の活動休止期間を経て、2022年3月に“フェーズ2開幕”を告げて活動を再開した。2023年にリリースした楽曲「ケセラセラ」で「日本レコード大賞」を受賞。同年に「NHK紅白歌合戦」初出場を果たす。2024年4月に発表した楽曲「ライラック」はリリースから1年を経ても配信チャートで独走し、ストリーミングの累計再生回数は6億回を突破している。同年7月に日本のバンド史上最年少となるスタジアムツアー「ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~」を開催。年末にはバンドとして史上初の「日本レコード大賞」連覇を果たした。2025年5月に音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」で最優秀アーティスト賞を受賞。6月には神奈川・Kアリーナ横浜でエンタテインメントショー「Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』」を開催した。7月から東京ディズニーリゾート®のスペシャルイベント「サマー・クールオフ at Tokyo Disney Resort」にて、日本人アーティスト初となるコラボレーションを実施。同月にデビュー10周年ベストアルバム「10」をリリースし、アニバーサリーライブ「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~」を神奈川・山下ふ頭特設会場で行う。10月から12月にかけて5大ドームツアー「Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”」を開催する。国内の楽曲ストリーミング総再生が100億回を突破した史上初のアーティスト。
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※記事初出時、曲名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
2025年7月22日更新