平井大の全国ツアー「HIRAIDAI Concert Tour 2021-22」東京・東京ガーデンシアター公演の模様が、2月23日(水・祝)にWOWOWオンデマンドで生配信される。
「HIRAIDAI Concert Tour 2021-22」は、2021年9月にスタートした平井にとって約2年ぶりの全国ツアー。東京ガーデンシアターでのライブは、本ツアーのファイナル公演として行われる。WOWOWオンデマンドでの生配信終了後にはライブのアーカイブ映像が期間限定で公開されるほか、3月21日(月・祝)にはWOWOWライブでライブ映像の放送が予定されている。
2021年、2月のデジタルアルバム「Life Goes On」リリースを皮切りに計16曲のデジタルシングルを発表するなど、コロナ禍の中で精力的に音楽活動を行ってきた平井。このインタビューでは昨年の活動を振り返りながら、自らが今感じていることについてや、ツアーファイナルへの意気込みなどを語ってもらった。
取材・文 / 松永尚久
ポジティブな未来を感じて
──2021年、平井さんは2月にアルバム「Life Goes On」を配信リリースして以降、前年に続いて“Sunday Goods”と題した新曲の連続配信企画を3月から行っていましたね。
2021年……正直、あんまり記憶がないんですよね(笑)。コロナ禍になった2020年から、時間の経過を感じることがなくて。僕の中では、あの頃からずっと同じ時間が流れています。でも決してネガティブな感情だけがあるわけではなくて、音楽が生活の中により溶け込んでいった感覚があります。
──平井さんは2020年5月に連続リリース第1弾「Life goes on」をリリース以降、約2年間で50曲以上というかなりのボリュームの制作に向き合っていますが、大変だと感じることはないですか?
実は、そこまで多く楽曲を作った気持ちはないんです。かと言って、暇だった訳でもないし。自分のリズムに合ったスタイルで楽曲を作っていったら、自然とそうなったという。
──つまり、常に楽曲制作をしていると?
リリースが決まっていなくても、「次はどんな楽曲を作ろう?」と常に考えています。楽曲を配信リリースできるようになってからは、以前より簡単に作品を形にすることができて、自分としては気持ちがいいです。
──平井さんにとって楽曲発表とともに活動の軸になっているのが、ライブ。この2年は思い通りのパフォーマンスができなかったかもしれませんが、心境に変化はありましたか?
確かに対面でのライブは難しくなりましたが、自分のパフォーマンスを届ける手段はほかにもある。そこで僕は、InstagramやTikTokなどでライブ配信をスタートさせました。だからフラストレーションが溜まることはなかったし、制限された環境の中で新しい表現方法を見出すことができたおかげで、かえってポジティブな結果になったと思っています。
──ポジティブな結果というのは?
ライブだとお客さんからの感想がダイレクトに届く機会は限られていますけど、InstagramやTikTokみたいなソーシャルメディアでは、コメント欄からすぐに“声”が伝わってくる。それによって皆さんと会話してみたり、演奏する楽曲を変えたりして、リスナーの方々との心の距離が縮まったような気がしました。とても有意義な経験をさせていただいたなと。
──リスナーとの関係性がより密接になったことによって、楽曲制作に変化はありましたか? 特に「Buddy」(2021年5月発表)には、カメラのシャッター音や波の音などが入った日常感が伝わってくる仕上がりで、より聴く人の生活に寄り添った雰囲気がしたのですが。
そうですね。ありがたいことに、これまでの僕の楽曲に乗せていろんなタイプの生活動画を投稿してくださる方がたくさんいて。そういうものを見て、「逆に僕自身の生活を音楽として届けることができたら」と思いついて制作したのが「Buddy」です。リリース後はこの楽曲に乗せて動画を投稿してくださる方もいてうれしく思います。
──「Buddy」はサウンドでは生活をリアルに表現しながら、歌詞は未来への希望を感じさせる内容ですよね。
こういう状況だからこそ、ネガティブなことを伝えるより、ポジティブな未来を感じていただける曲を作りたいと思ったんですよね。
──バラード曲「MIRROR MIRROR」(2021年7月)も、発表後ストリーミングチャートの上位にランクインし、ABEMAのドキュメンタリー番組(2021年7月放送「普通の女子高生だったはずの私が 16才でママになって知ったことは、」)の主題歌にも使用されて話題になりましたが、恋愛だけでなく広い意味での“愛”を感じられる感動的な曲だと思いました。
ありがとうございます。愛する人と一緒に暮らしていると、自分の機嫌がいいときに相手も心地よさを感じるし、逆に相手の調子が悪いと自分もつらくなるじゃないですか。お互いの心は、まるで鏡のように映し出されるものなんだというテーマで制作しました。
──まさにこの曲もそうですが、平井さんの音楽には飾りがない。そのことが多くの人の心をストレートに揺さぶる要因になっているのだと思います。
生活模様というか、自分が日常で抱えている思いをシンプルに表現するスタイルが、多くの方々に共感してもらっているというか。自然だから、リスナーの皆さんにも音楽の世界に入ってもらいやすいし、親しみやすさを感じてもらっているのかもしれませんね。
ピュアで根源的なものは揺らがない
──2021年に配信された楽曲は、どれもタイプの異なるサウンドになっていますよね。「honey, don't you worry」(2021年4月)のようなハワイアンなウクレレナンバーから、ヒップホップ的なビートを刻む「Peek-A-Boo」(2021年8月)まで。時代やリスナーの求めるムードを意識して制作している部分はあるのですか?
本当は気にしたほうがいいんでしょうが(笑)、あまり意識していないです。今の自分が作りたい音、聴きたい音を素直に表現しているだけで。
──戦略はないんですね。
はい。そういうピュアな部分を表現することが僕を形作っていると思うので、自分を偽る必要はまったくないなと。実際、そういう姿勢がリスナーの皆さんにも受け入れられている部分でもあると感じていますし、これからも自分のそういう部分を大切にしながら活動していきたいですね。
──ありのままのご自身を伝えたいという思いが多くの人に伝わった結果だと思いますが、昨年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場されました。
初めての舞台でしたが、いつものバンドメンバーと一緒に出演できたので、気持ち的には普段通り、リラックスして歌うことができました。2021年の締めくくりとしていい経験ができたなと。
──当日歌唱されたのは「Stand by me, Stand by you.」(2020年9月)です。発表されてから1年以上経っている楽曲ですが、「紅白」で披露したことで曲に対する思いに変化はありましたか?
「祈り花」(2011年に発表された平井の代表曲の1つ)は、時間が経つにつれていろんな方の気持ちが積み重なっていって、今でもパフォーマンスするたびに曲の表情が変わるんですが、「Stand by me, Stand by you.」は、曲を作った頃と印象が変わらないんですよね。この曲の制作時間は20分くらいで、自分のピュアで根源的なものを一気に凝縮させたんですが、その分曲への思いが一切揺らがない。何度歌っても、曲を作ったときと同じ気持ちのままなんです。そういう芯の強い曲だからこそ、時間をかけて皆さんの心に響いていったのかもかもしれませんね。
──そのほかの近況としては、木村拓哉さんに楽曲提供されたことでも話題になりました(参照:木村拓哉の2ndアルバムにCreepy Nuts、マンウィズ、Kj、平井大、鈴木京香、糸井重里が参加)。
拓哉さんが歌う姿を想像しながら楽曲を制作するのは、とても新鮮で面白い作業でしたね。僕の持っているものと、拓哉さんだからこそ表現できるスタイルが融合したとき、どんな効果が生まれるのか、ワクワクしながら完成させました。僕自身も納得できる仕上がりになりましたし、誰かの声を通して自分の思いを届けるというのは、新たな広がりが生まれるという意味でも楽しみな部分なので、続けてやっていけたらなと思いますね。
次のページ »
これはもはや“平井大ヒットメドレー”