平井大、躍動の2020年を語る|今を大切に、感じたままに

2020年、平井大を取り巻く状況は大きく変化した。新型コロナウイルスの影響で当初予定していた活動ができなくなったのはほかの多くのアーティストと同様だが、彼はそんな状況でできることを考え、“夏の太陽が弱まる頃”まで、2週間に一度のペースで新曲を配信リリースすることを5月に発表(参照:平 井 大 (@hiraidai) | Twitter)。その第1弾シングルとして「Life goes on」を5月20日にリリースした。その後、第4弾シングル「僕が君に出来ること」、その続編とも言える第8弾シングル「Stand by me, Stand by you.」の歌詞が「エモい」とSNS上で話題になり、TikTokにてカップル動画が量産される事態に。その勢いはサブスクリプションサービスにも飛び火し、彼の全楽曲のサブスクサービスでの総再生回数は12億回を突破した。

そして一連の連続リリースのラストを飾るのが、スターバックス初のコラボレーション楽曲として12月16日に発表された「Starbucks, Me and You」だ。自身の楽曲が爆発的に広まる中で平井はどんなことを考えていたのか。連続リリースを振り返ってもらうとともに、デビュー10周年を迎える来年の展望を聞いた。

取材・文 / 松永尚久 撮影 / 大槻志穂

連続配信リリース一覧
  • 2020年5月20日配信Life goes on
  • 2020年6月3日配信祈り花 2020
  • 2020年6月17日配信EndlessSky
  • 2020年7月1日配信僕が君に出来ること
  • 2020年7月15日配信Lonely Beachy Story
  • 2020年7月29日配信陽のあたる場所へ
  • 2020年8月12日配信"summer2020" instrumentals
  • 2020年8月26日配信GIRL FRIEND
  • 2020年9月9日配信Stand by me, Stand by you.
  • 2020年9月23日配信Sayonara
  • 2020年10月7日配信祈り花 2020 - from THE FIRST TAKE / 僕が君に出来ること - from THE FIRST TAKE
  • 2020年10月21日配信Holiday
  • 2020年11月4日配信ここにあるもの
  • 2020年11月18日配信"winter2020" instrumentals
  • 2020年12月2日配信冬の予感
  • 2020年12月16日配信Starbucks, Me and You

ステイホーム期間は好きなタイミングで楽曲制作をしていた

──2020年は新型コロナの影響もあって、ご自身の音楽環境が大きく変化したのでは?

僕は普段から家にいるのが大好きで、自粛期間中に体調を崩すこともなかったから、大きなストレスはなかったんですよ(笑)。ただ、お客様と対面でライブをする機会がなかったことは、この10年の活動において皆無だったので、そこは残念な思いはありましたが。ほかは特に変化はありませんでしたよ。

──旅を多くされている印象もあるのですが。

平井大

確かに、海外へ行くことが自分の年間ルーティーンに入っているんですけど、バックパッカーみたいにいろんな場所に行っているわけじゃなくて、同じ場所で落ち着いてのんびりするのが僕の旅の楽しみ方。それを生まれ故郷である東京で満喫していたという感じですね。そもそも家にいるのが大好きですし(笑)。

──では、その落ち着いた時間の中で、音楽制作に没頭されていたのですか?

そうですね。音楽を作ることが、自分にとって生活の一部になっているので、このステイホームの時間は好きなタイミングで楽曲制作をしていました。しかも、2020年はアルバムをリリースする予定が以前からなかったので、この期限までに何曲作らなくてはというプレッシャーもありませんでした。

──5月からは2週間に1回という頻度で楽曲をリリースするプロジェクトをスタートさせました。

だいたい曲のアイデアがそれくらいの頻度で浮かんでくるから、そのとき自分が思うこと、表現したいことを素直に発表していけたらと思ったんです。また、僕について夏に精力的に活動して、それが過ぎると冬眠しているイメージを持っている人も多いと思うのですが(笑)、年間を通して活動していることを知ってもらえるきっかけにもなるのかなって。

──これは、ステイホームの影響でスタートさせたものなのですか?

いえ、実は1、2年前くらいから考えていたことでして。楽曲ができた時点で、すぐに皆さんの耳に届けるほうが、自分の音楽表現においてはナチュラルなことなのかなって。それを実行しようとしたら、たまたまステイホームの時期と重なったという感じなんです。

──以前、アルバムにすると聴かれる楽曲とそうでないものの差がどうしても出てしまうので、できるだけそのギャップをなくしたいという旨のお話をされていた気がします。

今まではCDで作品を発表しないとマネタイズできないという固定概念みたいなものがあったと思うんですけど、その方式が必ずしも正しいという時代ではなくなっている気がするんです。それを見直すいいきっかけを自分でも作ってみたかった部分もありますね。結果、とてもポジティブな変化を得られた気がする。自分にとっては、より自然なカタチで活動をできている手応えを感じましたね。

──当初から、2週間に1回というルーティーンを決めたことによって、プレッシャーになった部分もあったのでは?

それは全然なかったですね。普段でも、ライブなどの予定がない時期は大抵それくらいのペースでアイデアが浮かんでいたし。見慣れた景色でも、その時々の感情などにより違うように見えるから、それを素直に曲にしようと思ったんです。だから、スケジュールを決めたことで苦しいと思うようなことはありませんでしたね。実際やってみて、これくらいのペースが自分にはちょうどいいと思ったし。

いつかまた太陽の下で一緒に音楽を楽しもう

──そしてスタートしたプロジェクトの第1弾として発表されたのが「Life goes on」でした。先行きがまったく見えなくなってしまったあの時期に、今できることを考えるメッセージ性の強い楽曲ですね。

僕が作る楽曲の多くは、人生もしくは愛など、普遍的なメッセージを持つものが多いのですが、この楽曲でもそれを表現できたというか。今年に入って、人生には確約されたものなんてないと不安に襲われた人も多いと思うんですけど、いつかまた太陽の下で僕と一緒に音楽を楽しむ機会がいつか必ずやってくることだけは約束したいという強い思いを伝えたつもりです。

──アコースティックギターの優しい響きもまた、大変な時期を乗り越えられそうな、救われた気持ちになりました。

人生に寄り添える要素が音楽にはあると思う。なくても生きられるのかもしれないけれど、あればより人生が充実する。そういったメッセージを、サウンド全体を通じて届けたいという気持ちもありましたね。

──続いて配信されたのが、2011年のデビュー当時に発表された名曲「祈り花」を再構築した「祈り花 2020」。プロジェクト開始当初からこの楽曲をセルフカバーすることを決めていたのですか?

別にそんなつもりはなかったんですけど、発表してから約10年の間に何度も演奏してきて、パフォーマンスするたびに表現方法が変わっていったので、ここで今の状態を残しておきたいと思ったんです。発表した当時も、東日本大震災があって、世の中が大きく変わった節目。今回も悪いことだけでなく、いい変化も起こった節目の1年だったと思う。そういう時期にアップデートさせたものを発表するのもいいのかなって。

──ストリングスが加わって、より感動的な仕上がりです。

オリジナルもそれはそれで満足のいく仕上がりですが、今回も“現在”だからこそ表現できた素晴らしい楽曲になったと思います。

──またこの楽曲には、最近のオンラインライブでもリスナーの方々からの熱いリクエストが殺到していますよね。

ありがたいことに、初期の頃から聴いてくださっている方々にとっては思い入れの強い楽曲みたいですね。そういう皆さんにとっては、僕がどういう進化を遂げているのかがわかる内容になったと思います。