SixTONESが表現する光と闇とは?「ノキドア」主題歌シングル「CREAK」を全曲レビュー

2023年、SixTONESが怒涛の勢いで新曲を発表している。

デビュー4年目となる今年、1月発売の3rdアルバム「声」を皮切りに、4月に9thシングル「ABARERO」、6月に10thシングル「こっから」をリリースした彼ら。特に「こっから」はメンバーの森本慎太郎が山里亮太(南海キャンディーズ)役、髙橋海人(King & Prince)が若林正恭(オードリー)役を好演したドラマ「だが、情熱はある」の主題歌の1つとして話題を呼び、SixTONESは既存のファン以外からも注目される存在になった。その証拠に同曲のミュージックビデオの再生回数は、彼らのMV史上最高の8000万超えを記録している(※特集公開時)。

「こっから」の人気がまだまだ衰えぬ中、SixTONESは11thシングル「CREAK」をリリースした。表題曲はメンバーの松村北斗が西畑大吾(なにわ男子)とともにダブル主演を務めているドラマ「ノッキンオン・ロックドドア」の主題歌の1つ。「CREAK」(軋む)というタイトルからして穏やかじゃないが、その“扉”の先でSixTONESはどんな一面を見せてくれるのだろうか、恐るおそる開けてみる。

文 / 寺島咲菜

「NAVIGATOR」と通ずるもの

表題曲「CREAK」(※全仕様共通)

[作詞:Seiji Takagi / 作曲:Kengo Kuwata、Seiji Takagi / 編曲:Kengo Kuwata、Peach]

主題歌「CREAK」が流れる「ノッキンオン・ロックドドア」はミステリー作家・青崎有吾の同名小説を堤幸彦監督が実写化した連続ドラマ。探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」の共同経営者である御殿場倒理(ごてんばとうり)と片無氷雨(かたなしひさめ)が衝突しながらも知恵を絞り、奇妙な難事件に挑む。「CREAK」はそんな物語との強い結び付きを印象付けるように、ドアをノックするSEでスタート。今にも事件が起こりそうなひんやりしたサウンドが、聴き手に緊張感を与える。シリアスさを増幅させるストリングスや、打ち込みによるヘビーなサウンド、ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹が性急なビートの上で日本語と英語を自在に操りながら歌うさまは「NAVIGATOR」(2020年7月発売の2ndシングル曲)を彷彿とさせる。そう思うのも無理もなく、「CREAK」「NAVIGATOR」のいずれにもSeiji Takagiが作曲者としてクレジットされているのだ。「CREAK」にはSeiji Takagiとともに、Kengo Kuwata、Peachが参加。この3人はSnow Man「ナミダの海を越えて行け」(2021年1月発売「Grandeur」初回盤Bおよび通常盤カップリング曲)の制作にも携わっている。

歌詞につづられているのは、「ノッキンオン・ロックドドア」に登場する倒理と氷雨のように、正解と不正解、光と闇の間で揺れながら真実を追いかける“僕ら”の姿。かけがえのない仲間の存在を強調するように、「正解は一人じゃ選べない」「真実を秘めた胸を互い叩き合え」「世界は一人じゃ変えれない」といったフレーズが並ぶ。そんな歌詞からは、手を取って未来へと突き進むSixTONESの姿も連想させる。

振付は「ABARERO」「こっから」に引き続きSAYA YAMAMARUが担当。どこを切り取ってもその動きは緻密かつダイナミックで、高いダンススキルとスタミナを要するのは誰が見ても明らか。中でも「誰もが自分に騙されている」と歌うパートで京本に銃で撃たれた5人がスローモーションのように倒れる姿には、思わず目を奪われてしまった。ストイックに歌い踊るメンバーに向けてYAMAMARUは「1人1人がヒーロー(KING) 6人集まればアベンジャーズ」と賛辞を送っている。MVではSixTONESの洗練されたパフォーマンスシーンを、ハイクオリティなCGとともに味わうことができる。


11thシングルのもう1つの目玉は、初回盤AとBに3曲ずつ収録されている、SixTONESのデビュー以来初となる各メンバーのソロ曲。初回盤Aでは松村が「ガラス花」、髙地が「MUSIC IN ME」、ジェシーが「Never Ending Love」でさまざまな“愛”を表現しており、初回盤Bでは京本が「We can't go back」、森本が「Love is...」、田中が「Sorry」で“恋”を歌っている。6人の個性が詰まったソロ曲を聴き比べなら、愛と恋について考えてみよう。

少年性を帯びた無垢な歌声

初回盤Aソロ曲「ガラス花(Hokuto Matsumura)」

[作詞・作曲:アイナ・ジ・エンド / 編曲:河野圭]

BiSHの楽曲を愛聴しており、6人の声が好きだと言う松村。岩井俊二監督の映画「キリエのうた」でアイナ・ジ・エンドと共演する彼は、アイナにソロ曲の制作を依頼した。アイナはこれまでにBiSHの楽曲や自身のソロ曲を多数制作してきたが、ほかのアーティストに楽曲提供するのは後輩グループ・KiSS KiSSに続いて2回目だ。松村をイメージして書き下ろしたというこの曲は、温かみのあるギターのアルペジオで始まるバラードソング。孤独や不条理を描く繊細な詞世界、飾り気がなく、少年性を帯びた松村のボーカルは聴く者の心を静かに揺さぶる。折り重なるストリングスの音色や気泡のように儚いアイナのコーラスも、楽曲の切ない世界観をより際立たせる。音が止んだあとも、心地よい余韻がしばらく残る。

日本語ラップで伝える感謝

初回盤Aソロ曲「MUSIC IN ME(Yugo Kochi)」

[作詞・作曲:Jamesy Minimal Fork、Soma Genda / 編曲:Soma Genda]

GADOROが好きで、日本語ラップに挑戦したいという髙地の思いをもとに制作されたこの曲。髙地の人柄を示すような快活なサウンドからはポジティブな波動が感じられ、「夢果たすため来たFrom港町」「必然と鳴る6つのHARMONY 支えてくれるその声がCHORUSに 同じ夢背負ってくれてるMy buddies」というリリックからは彼のリアルな思いが伝わってくる。髙地が歌う最大の理由は、メンバーやファンに感謝を届けるためなのかもしれない。この曲を通じて新たな表現を獲得したという彼の歌声にも注目したい。

敬愛する人と描く壮大な愛

初回盤Aソロ曲「Never Ending Love(Jesse)」

[作詞・作曲:堂本剛 / 編曲:Gakushi]

堂本剛(ソロ名義は.ENDRECHERI.)がファンクを突き詰める姿勢やそのルックスに憧れ、ストレートに愛を伝えてきたジェシー。デビューできずに悩んでいたジャニーズJr.時代には、剛から「デビューできなくても好きなようにすれば誰かしら見てるし、自分のよさに気付く人もいるよ」と励ましの言葉をもらったという。そんなジェシーが敬愛してやまない剛による書き下ろし曲「Never Ending Love」は、ジェシーのひょうきんなパブリックイメージを覆すようなナンバー。物悲しいピアノの旋律に繊細なボーカルやポエトリーリーディングが重なり、幻想的なムードを立ち上らせる。美しいビブラートは魂の震えを表しているかのよう。心の解放を示すかのごとく熱を帯びていく歌声は胸に迫るものがある。ジェシーと剛が描く壮大な愛の歌。

待望の音源化

初回盤Bソロ曲「We can't go back(Taiga Kyomoto)」

[作詞・作曲:Taiga Kyomoto / 編曲:Akiyuki Tateyama(HIGHKICK)]

Jr.時代から楽曲を作り続けてきた京本は、自身の主演ミュージカル「流星の音色」で音楽も担当した。そんな京本の自作曲が初の音源化。当初、本作に収められるソロ楽曲はすべて提供曲で構成される予定だったが、京本の強い希望によって7年前のロックバラード「We can't go back」が採用された。温かみのあるギターストロークや流麗なストリングスが、京本の清らかな歌声に彩りをもたらす。歌われているのは“君”との戻れない関係。止めどなくあふれる“君”への思いが、「We can't go back」から「Can't we go back?」へと変化するフレーズで色濃く表現されている。

永遠のラブソング

初回盤Bソロ曲「Love is...(Shintaro Morimoto)」

[作詞:EIGO(ONEly Inc.)、Dai Hirai / 作曲:Dai Hirai / 編曲:Dai Hirai、Haruhito Nishi(ONEly Inc.)]

自身のソロ曲で、高校時代から好きな平井大と念願の初タッグを組んだのは森本だ。ギターとサーフィンが好きな父の影響を受け、アーティストを志した平井。海をこよなく愛する平井が提供した「Love is...」は愛する人との何気ない日常の素晴らしさや、永遠の愛を歌った究極のラブソングに仕上がっている。森本の優しく甘やかな歌声が、平井のギターやコーラスによって一層引き立てられている。森本が語りかけるように歌う「ありがとう」「好きだよ」「おやすみ」のフレーズには、自然と心が温まる。

らしさにあふれたR&Bナンバー

初回盤Bソロ曲「Sorry(Juri Tanaka)」

[作詞:TSUGUMI / ラップ詞:Juri Tanaka / 作曲:Willie Weeks、Ninos Hanna / 編曲:Willie Weeks]

もともとは6人で歌うカップリング曲の候補だったという「Sorry」が、田中樹たっての希望によりソロ曲に選ばれた。R&Bを基調とした重厚かつドープなトラックは、田中らしさにあふれている。歌詞で描かれているのは、心が離れていった女性への未練。ラップパートのリリックは田中自らの書き下ろしで、「俺不足だろ? Shorty」というラインは田中自身のキャラクターを彷彿とさせる。田中の持ち味であるハスキーボイスはもちろん、芯の通った低音、ウィスパーボイスといった多彩な声からは、表現に対する彼の強いこだわりが感じられる。

目と目を合わせる喜び

通常盤カップリング曲「Eye to Eye」

[作詞:ONIGASHIMA / 作曲・編曲:Josef Melin]

SixTONESが出演するロート製薬の目薬のCMソング。一聴するだけで耳が喜ぶ、アップリフティングなナンバーだ。直接視線を交わす喜び──コロナ禍を経験した人であれば誰もが感じたであろう思いが、祝祭感あふれるホーンサウンドや、はつらつとしたボーカルに乗せて放出されている。今回のシングルの中でひときわ眩い光を放つ1曲だ。制作は、SixTONESの「Drive」「Hello」、森本慎太郎と田中樹のユニット曲「OPA!」にも参加しているONIGASHIMAとJosef Melinが担当した。

弄ばれる男心

通常盤カップリング曲「WHY NOT」

[作詞・作曲・編曲:Takuya Harada]

ジャニーズJr.時代の楽曲「JAPONICA STYLE」を作曲したTakuya Haradaが手がけた、SixTONESの真骨頂とも言えるエレクトロナンバー。スタイリッシュなサウンドの上で、謎めく“君”に翻弄されながらも追いかけ続ける男心が歌われている。6人の魅惑的なボーカルが、リスナーの心をストレートに撃ち抜く。

リリースからわずか2カ月、DJ Mass MAD Izm*を中心に再構築

通常盤カップリング曲「こっから -Old School Breakin' Remix-」

[作詞・作曲:SAEKI youthK / 編曲:DJ Mass MAD Izm*、REO]

「こっから」のリリースからわずか2カ月で、リミックスバージョンが登場。現在もヒット中のヒップホップチューンを、原曲のブレイクビーツの要素をそのままに再構築した“Old School Breakin' Remix”が完成した。編曲のDJ Mass MAD Izm*はAIや三浦大知などさまざまなアーティストの楽曲制作に携わり、SixTONES作品のティザー映像のミックスも担当している。DJ Mass MAD Izm*の鮮やかなスクラッチ音を聴けば、自然と気持ちが高まる。


2015年のグループ結成以降、いくつもの扉を開いてきたSixTONES。彼らはYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が提供した「Imitation Rain」でデビューして以降、5thシングルの表題曲「マスカラ」を手がけた常田大希(King Gnu、millennium parade)、そして11thシングルのソロ曲を書き下ろしたアイナ・ジ・エンド、堂本剛、平井大など多くのアーティストとタッグを組み、たくましく成長を遂げている。これからSixTONESが開く扉の先にはどんな出会いが待っているのだろうか、今後の活動に目が離せない。

プロフィール

SixTONES(ストーンズ)

ジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹からなる6人グループ。2018年3月よりYouTube公式チャンネル・ジャニーズJr.チャンネルで金曜日を担当し、10月に「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに選ばれた。2020年1月にSnow Manと同時に1stシングルをリリース。デビュー曲「Imitation Rain」はYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)が手がけた。4月に冠レギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」がニッポン放送でスタート。2023年1月に3rdアルバム「声」を発表し、同月から3月まで全国アリーナツアー「慣声の法則」を実施した。4月に9thシングル「ABARERO」をリリースし、大阪・京セラドーム大阪と東京・東京ドームで単独公演「慣声の法則 in DOME」を成功に収めた。6月に10thシングル「こっから」、8月に11thシングル「CREAK」を発表。