ナタリー PowerPush - WIRE12

石野卓球に訊く13年間の変遷と「WIRE TRAX」

出演者のセレクト基準

──毎年の出演者はどういう基準で選んでるんですか。

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そのときに興味がある人っていうのが大きいけど、それ以外だとベテランと若手の人たちをまんべんなくっていうのは考える。

──一度呼ぶと2度3度と続けて呼ぶ傾向も結構ありますね。

うん、そうだね。うまくハマったなって感じがあれば、次の年もっていう。

──メインフロアはビッグネーム、2ndフロアは若手中心って感じでしょうか。

うん。あと、大バコに向く人と、そうじゃない人っているでしょ。例えば2ndよりももっと小さなクラブでアンダーグラウンドな感じでやったほうが向く人っているじゃない? そういう人(の出演)はないかなあ。

売り込みも多くなってる

──サウンドスタイルとして、「WIRE」っぽさってあると思いますか。

あるけど……それは具体的には言いづらいな。感覚的なものでしかないから。

──13年もやってると自分の好みも変わってくるでしょう。

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うん。あと、流行廃りもあるしね。時代のムードとかもある。それが顕著に表れるのがBPMの速さだよね。

──最近は130切りますね。ほかのテクノレイヴもありますが、差別化は考えますか。

うーん、多少は考えるけど、それだけ考えてブッキングできるわけもないしね。必ずしも声かけた人が出てくれるわけでもないし。同じ時期にそういうフェスは多いから。

──これだけ回数を重ねていると、海外での認知度も相当高くなってるでしょ。

うん。だからその分、売り込みも多くなってるし。音送ってきたり。毎年すごい数が来るよ。もちろん自分で観て決めるケースが多いけど、最近あまりヨーロッパでプレイしてないからね。

──13年やってきて、とりわけ印象に残っているアクトというと。

それはキリがないなあ。毎年30近くも出て、全部観られるわけでもないしね。いつの年だったか忘れたけど、WESTBAMとか。TR-909を使ったジェフとか。すごい瞬間はいっぱいあったよ。

13年で変わってない部分、変わった部分

──その石野卓球の音の好みの変遷を如実に表しているのが、今回の「WIRE TRAX」ですね。なぜ今出そうと思ったんですか。

2012年の「WIRE COMPILATION」に収録する曲を作るにあたって、今までどんなのをやってたかと思って、過去のやつをまとめて聴いてみたんだよね。今までそういうことやったことなかったんだけど、そうしたら意外な部分が浮き彫りになって。変わってる部分と変わってない部分があってさ。普通アルバムを作る場合、長くて1年、短くても数カ月の間に集中して作るけど、「WIRE COMPILATION」向けの曲って毎年同じ時期に1曲ずつ作って、リリースしたらそれっきりというのを十何年続けてきたわけじゃない? それをまとめようって気もなかったけど、結果的に13年かけてアルバム1枚作ったみたいなところもあって。これはこれでまとめて出す意味はあるかなと思った。あと、「WIRE COMPILATION」に収録してる曲はライセンス契約で、その契約期間がだいたい5年なのね。だから5年経つとライセンスが切れて廃盤になる。オレの曲もここにしか入ってないから、今だと2007年以前のものは聴こうと思っても聴けないんだよね。それもあってまとめておこうと思った。

──なるほど。その「意外な部分」ってなんですか。

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うーんと、すごく変わってない部分があるってことかな。逆に変わった部分もある。

──変わってないところとは?

グルーヴというか、手癖みたいなもの。あと最初の頃から去年までの、「WIRE」と「WIRE COMPILATION」に対する自分の立ち位置というか距離感の変化みたいなものが見えたかな。最初の頃は「WIRE」のアンセム的な曲を作ろうとして、本番で映えるような曲を作ってたんだけど、それがだんだん……2004年ぐらいを境にそういうのを作らなくなって。「WIRE COMPILATION」の中の1曲、っていう考えになってきたんだよね。それがまた最近になってくると、自分のソロアルバムでもやらないような実験的なことをやる場になってきたの。別に意図してたわけじゃないけど、そういう気持ちの変化があることが浮き彫りになって。

──最初の頃はWIREのオーガナイザーとして、イベントを盛り上げなきゃいけないという使命感があって、アンセム的な曲を作ってた?

うーん、それもあるし、ただお祭り気分ではしゃいでたっていう(笑)。

──あははは。14年前だし、若かったからね。

うん。そういうのもあるかもしれない。それがなくなってきたのは、別にオレが盛り上げなくてもほかのアーティストが提供してくれる曲でそれが成り立つようになってきたからかな。

WIRE 12 公演情報 2012年8月25日(土)神奈川県 横浜アリーナ OPEN & START 18:00

出演者
DJs

BUTCH / デリック・メイ / DJ SODEYAMA / DJ TASAKA / フランク・ムラー / 田中フミヤ / ゲイリー・ベック / HELL / ジェスパー・ダールバック / KEN ISHII / REBOLLEDO / ロバート・フッド / 石野卓球

LIVE acts

A.MOCHI / 電気グルーヴ / DUSTY KID / FORMAT:B / PORTABLE / Y.Sunahara

VJs

DEVICEGIRLS / DOMMUNE VIDEO SYNDICATE

料金

前売11550円

石野卓球「WIRE TRAX 1999-2012」 / [CD2枚組] / 2012年7月4日発売 / Ki/oon Music KSCL 2071-72

収録曲
Disc 1 "from WIRE COMPILATION albums"
  1. Bitter Sweet Break Down (Edit) / WIRE99 COMPILATION (1999)
  2. Suck me Disco (Takkyu I. Rmx) (Edit) / WIRE00 COMPILATION (2000)
  3. Hyperspeed (Long ver.) / WIRE01 COMPILATION (2001)
  4. WIREWIRE / WIRE02 COMPILATION (2002)
  5. Drums And Wires / WIRE03 COMPILATION (2003)
  6. Tesco Figilico / WIRE04 COMPILATION (2004)
  7. Macaronic Train / WIRE05 COMPILATION (2005)
  8. MabuchiMortorHeadPhoneCableGuy (J20) / WIRE06 COMPILATION (2006)
  9. St.Petersburg / WIRE07 COMPILATION (2007)
  10. Slaughter & Dog (Edit) / WIRE09 COMPILATION (2009)
  11. 7th Tiger (W10 Mix) / WIRE10 COMPILATION (2010)
  12. Five Fingers / WIRE11 COMPILATION (2011)
Disc 2 "for Media ads, Unreleased and the Others"
  1. Pinhead / WIRE02 COMPILATION (2002)
  2. Spike it out / WIRE05 COMPILATION (2005) ※未発表曲
  3. WIRE05 Ad / WIRE05 (2005)
  4. Shout To Die / (2005) ※未発表曲
  5. WIRE06 Ad / WIRE06 (2006)
  6. WIRE08 Ad / WIRE08 (2008)
  7. WIRE10 Ad / Kweek / WIRE10 (2010)
  8. Carrie / WIRE10 (2010)
  9. WIRE12 Ad / WIRE12 (2012)
石野卓球(いしのたっきゅう)

石野卓球

1967年生まれのDJ / リミキサー / ミュージシャン。インディーズバンド・人生を経て、1989年にテクノユニット・電気グルーヴを結成。1995年には初のソロアルバム「DOVE LOVES DUB」をリリースし、この頃から本格的にDJとしての活動も開始する。1990年代後半からはヨーロッパを中心に、海外での活動も積極的に展開。ベルリンで行われるテクノ最大の野外フェス「Love Parade」では100万人を前にプレイするなど、数々の偉業を成し遂げている。また、1999年からは日本最大の屋内型レイヴパーティ「WIRE」を主催。毎回1万人以上もの集客で人気を誇る。2006年には川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)と新ユニット・InKを結成。2010年に約6年ぶりのオリジナル作品であるミニアルバム「CRUISE」を発表した。