ナタリー PowerPush - WIRE12
石野卓球に訊く13年間の変遷と「WIRE TRAX」
いよいよ「WIRE」の季節がやってくる。国内最大級の屋内テクノフェスティバルとして、今年ではや14回目。開催に伴いリリースされる参加アーティストのコンピレーション「WIRE COMPILATION」も今年で14枚目を数える。オーガナイザーである石野卓球はこのコンピレーションに毎年書き下ろしの楽曲を提供しているが、その過去13年分の楽曲をまとめ、さらにラジオスポット用の音源、未発表曲など関連楽曲を加えたCD「WIRE TRAX 1999-2012」が7月4日にリリースされる。石野の音作りの変遷ともに「WIRE」の歴史、ある意味ではこの13年間のテクノの歩みの一断面をも示す、きわめて興味深いコンピレーションだ。WIRE14年の歴史とともに、石野に語ってもらった。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 高田梓
目指したのは屋内での非日常的なパーティ
──「WIRE」は今年で14年目ですが、国内の主だったフェスではフジロックに次いで歴史があるんですね。「RISING SUN ROCK FESTIVAL」と同じ。「SUMMER SONIC」や「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」より古い。
そうなんだっけ! サマソニより古いのか。へえ。
──なんか感慨はありますか。
……あんまない(笑)。
──始めた当初はこれだけ長く続くと思ってましたか。
まさか! 来年もできたらいいな、ぐらいしか思ってなかったよ。それは毎年一緒で。再来年どうしようとか、考えられないよ。そこまで余裕はなかった。
──いまさらですが、「WIRE」を始めた動機はなんだったんですか。
うん、「LOVE PARADE」とか「MAYDAY」とか海外の大きなフェスティバルでDJやるようになってさ。で日本の状況を振り返ってみると、野外で大きなレイヴはいくつかあったけど、屋内でちゃんと作り込まれたパーティってなかったのね。しかも日本ってドイツほどではないにしろ、テクノに対する認知度や理解度は高いのに、なぜこういうパーティはないんだろうと。逆にないのが不思議に思って。それで始めたんだけど。
──昔、日本のお客は受け身で物足りない、としきりに言ってたでしょう。それが変わってきたのはいつ頃ですか。
90年代半ばじゃないかな。新宿のLIQUIDROOM(でのテクノパーティ)が定着してきた辺り。お客さんが慣れてきたっていうのがあると思う。海外のDJとか頻繁に来るようになってさ。昔は「ジェフ・ミルズってどんなものだろ?」みたいな、踊るっていうより確認する感じだったから。楽しむっていうよりさ。でも今は一晩に東京だけで5つも6つも海外のDJが出るパーティがやってて、どれも満員だったりという状況だからね。そこはずいぶん変わってきたよね。
──そこは「WIRE」が残してきた功績かもしれませんね。ところで、当初の構想は「屋内で作り込んだもの」というものだったそうですが。
そう。野外の開放的なムードじゃないところでの非日常的なパーティを目指してた。
──第1回のこと覚えてますか。
覚えてる。映像で覚えてる。(メインフロアのスタンドの)上から俯瞰で観た画で。(ブロック間仕切りの)柵が多いなっていう(笑)。
──ああ、最初はね。
うん。消防法で仕方なかったんだけどさ。でもいっぱいお客さんが来てくれて、やって良かったと思った。よくここまでこぎつけたなって。
──開催までにはいろいろ苦労もあって。
いや、それが全然覚えてない(笑)。十何年も前だからねえ。
最多出演アーティストは田中フミヤ
──一番印象に残ってる年は?
それもよく訊かれるんだけど、覚えてないんだよね(笑)。せいぜい前の年ぐらいしか覚えてない。2006年と2007年の違いは、とか訊かれても全然わからない(笑)。
──それはオレも同じ(笑)。誰が多く出てるか調べてみたんですよ。あなたはもちろん毎年出てるから一番多いんだけど……。
(田中)フミヤでしょ。
──そう。あなたとフミヤくんが14回(今年も含め)で皆勤賞。3番目は誰だと思う?
ジェフ・ミルズ?
──いや違う。
あっ、フランク(・ミューラー)かな?
──惜しい。フランクはBEROSHIMA名義と合わせて12回。(DJ)TASAKAくんがDISCO TWINS名義も合わせて13回で3位。
ああ、なるほどね!
──で、フランクが4位。その次がWESTBAM。10回。
あ、そうなんだ!へー。
──去年久しぶりに出たけど、最初の頃は毎年出てたからね。で、その次が(ケン)イシイくんなの。9回。
あ、そうなの! へえ意外。
──最近は毎年出てるからね。あとはHELLとかヨリス・ヴーンとかTOBYとか。ジェフは7回でその次ぐらい。電気グル-ヴは意外と少なくて6回。
なるほどねえ。
WIRE 12 公演情報 2012年8月25日(土)神奈川県 横浜アリーナ OPEN & START 18:00
出演者
DJs
BUTCH / デリック・メイ / DJ SODEYAMA / DJ TASAKA / フランク・ムラー / 田中フミヤ / ゲイリー・ベック / HELL / ジェスパー・ダールバック / KEN ISHII / REBOLLEDO / ロバート・フッド / 石野卓球
LIVE acts
A.MOCHI / 電気グルーヴ / DUSTY KID / FORMAT:B / PORTABLE / Y.Sunahara
VJs
DEVICEGIRLS / DOMMUNE VIDEO SYNDICATE
料金
前売11550円
石野卓球「WIRE TRAX 1999-2012」 / [CD2枚組] / 2012年7月4日発売 / Ki/oon Music KSCL 2071-72
収録曲
Disc 1 "from WIRE COMPILATION albums"
- Bitter Sweet Break Down (Edit) / WIRE99 COMPILATION (1999)
- Suck me Disco (Takkyu I. Rmx) (Edit) / WIRE00 COMPILATION (2000)
- Hyperspeed (Long ver.) / WIRE01 COMPILATION (2001)
- WIREWIRE / WIRE02 COMPILATION (2002)
- Drums And Wires / WIRE03 COMPILATION (2003)
- Tesco Figilico / WIRE04 COMPILATION (2004)
- Macaronic Train / WIRE05 COMPILATION (2005)
- MabuchiMortorHeadPhoneCableGuy (J20) / WIRE06 COMPILATION (2006)
- St.Petersburg / WIRE07 COMPILATION (2007)
- Slaughter & Dog (Edit) / WIRE09 COMPILATION (2009)
- 7th Tiger (W10 Mix) / WIRE10 COMPILATION (2010)
- Five Fingers / WIRE11 COMPILATION (2011)
Disc 2 "for Media ads, Unreleased and the Others"
- Pinhead / WIRE02 COMPILATION (2002)
- Spike it out / WIRE05 COMPILATION (2005) ※未発表曲
- WIRE05 Ad / WIRE05 (2005)
- Shout To Die / (2005) ※未発表曲
- WIRE06 Ad / WIRE06 (2006)
- WIRE08 Ad / WIRE08 (2008)
- WIRE10 Ad / Kweek / WIRE10 (2010)
- Carrie / WIRE10 (2010)
- WIRE12 Ad / WIRE12 (2012)
石野卓球(いしのたっきゅう)
1967年生まれのDJ / リミキサー / ミュージシャン。インディーズバンド・人生を経て、1989年にテクノユニット・電気グルーヴを結成。1995年には初のソロアルバム「DOVE LOVES DUB」をリリースし、この頃から本格的にDJとしての活動も開始する。1990年代後半からはヨーロッパを中心に、海外での活動も積極的に展開。ベルリンで行われるテクノ最大の野外フェス「Love Parade」では100万人を前にプレイするなど、数々の偉業を成し遂げている。また、1999年からは日本最大の屋内型レイヴパーティ「WIRE」を主催。毎回1万人以上もの集客で人気を誇る。2006年には川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)と新ユニット・InKを結成。2010年に約6年ぶりのオリジナル作品であるミニアルバム「CRUISE」を発表した。