水曜日のカンパネラ「赤ずきん」インタビュー|「エジソン」で注目の2代目ボーカル・詩羽、飛躍の1年の幕開けは“激詰め”する曲

ユニット結成以来、主演と歌唱を担当していたコムアイが2021年に脱退。その跡を継いだ“2代目”として詩羽が加入してから約1年半が経ち、“水曜日のカンパネラ”が快進撃を見せている。昨年2月にリリースした「エジソン」がTikTokで大いに注目を浴び、歌詞の「踊る暇があったら発明してえ」は「TikTok流行語大賞2022」のミュージック部門賞に選ばれた。先日は日本テレビ系「スッキリ」で同曲を生パフォーマンスし、詩羽の歌声はSNSのみならずテレビを通じてお茶の間にも届けられた。さらに同番組では、1月25日にリリースされた新曲「赤ずきん」を披露。この曲はABEMAオリジナル恋愛番組「隣の恋は青く見える4」の主題歌としてケンモチヒデフミが書き下ろした1曲だ。

音楽ナタリーでは新曲「赤ずきん」のリリースに合わせて水曜日のカンパネラの特集を展開。詩羽、ケンモチ、Dir.Fの3人に「エジソン」以来の1年について、また新曲「赤ずきん」のリリースで活動の口火を切った2023年の展望を語ってもらった。

取材・文 / 高岡洋詞撮影 / 梁瀬玉実

「エジソン」ヒットは完全に実力?

──ボーカルが詩羽さんに替わって約半年でリリースされた2ndシングルの収録曲「エジソン」が大きく注目されました。今思えば完璧なタイミングでのリリースだったし、さすがと感服しましたが、当事者としてはどうなんでしょう。意外に偶然の要素が大きい?

ケンモチヒデフミ 完全に……完全に実力です(笑)。それは嘘ですけど。

詩羽 嘘でもないと思いますけど(笑)。

詩羽

詩羽

ケンモチ 全部計算ずくかと言われると、そうではないんですよね。コムアイ時代の「桃太郎」も両A面という形で2曲同時にリリースしていて、もう1曲の「千利休」のほうが我々としては売れると思っていたんですよ。でも結果的にカップリング的な扱いだった「桃太郎」が人気になって。「エジソン」も同じで、もう1曲の「招き猫」をメインに考えていたから「招き猫 / エジソン」としてリリースしていて、結局「エジソン」のほうが人気になった。しかも、バズるタイミングもちょっと遅くて。TikTokで使われ出したのはリリースから少し経ってからだったから、びっくりしながら動向を見ていました。

──そのバズりにどう反応して動いてきましたか?

Dir.F それがまさに今年の動きに表れると思っています。サブスク時代の売れているアーティストはコンスタントに音源をリリースするので、そこに寄せないとダメだと感じていますし。「桃太郎」のときはYouTubeがバズを起こせるプラットフォームでしたけど、今はそれがTikTokなんだというのは勉強になりました。「エジソン」は去年の5月にオフィシャルから動画を出したらすぐ再生数が伸びて、そこから広がっていって。TikTokにいくつかアップロードしてみましたが、「エジソン」の動画なら100万再生ぐらいはされるんですよ。感覚的にはどういう曲が聴かれるのか、TikTok上である程度測れるようになった気がするというか。それがカンパネラだけのことなのか、ほかのアーティストもそうなのかはまだわかりませんが、TikTokの反応はけっこう素直だという印象は持っています。

詩羽

詩羽

──TikTokでよく聴かれる曲の傾向みたいなものは感じていますか?

Dir.F 自分の感触でしかないんですけど、踊りやすいテンポ感とか、歌詞がすぐ入ってくるとか。「エジソン」って、替え歌にしやすいというかネタっぽく使えるんですよね。そういうところがTikTokというプラットフォームに合ってるんだな、とは思いました。

──ケンモチさんは曲を作るときにそういうことを意識していますか?

ケンモチ ボーカルが詩羽になってから意識していることがいくつかあるんですが、その中の指針の1つに「TikTokで使われやすいかどうか」というのはあります。自分もユーザーとしてTikTokを見てると、次の動画に飛ばしたくなるタイミングってあるんですよ。間の悪い箇所はなるべく作らないほうがいいな、とか。ユーザー目線でわかることがある。「この曲はバズる」っていうのは難しいですけど、「この曲はバズらないだろうな」みたいのは感覚的にわかってきました。完全にアジャストすると音楽性がかなり限定されちゃうので、合わせたり、あえて合わせなかったりしています。

圧倒的に歌う回数の多かった「エジソン」

──昨年10月には「THE FIRST TAKE」に登場して、SNSのみならず音楽ファンにも詩羽さんの歌唱力の高さを見せつけることになりました。動画を見て改めて感じたのは、詩羽さんの発声がしゃべりっぽいパートとメロディのある歌のパートでガラリと変わるということでした。

詩羽 そんなに「こうしよう、ああしよう」と考えてるわけじゃなくて……。考えすぎると歌えなくなっちゃうタイプなので、ライブのときにやってる感覚のまま楽しみました。

──動画のコメント欄に「さらっとやってるけど、めちゃくちゃ声の響き研究してるのがわかる歌い方してる」といった指摘がありましたが、どうですか?

詩羽 どうなんですかね。基本的にあまり考えてないけど、感覚的に「つかめたな」と感じるときがあるんだと思います。「あ、この響き方だ」とか「この部分はこうやると出しやすいな」とか、たぶん無意識のうちにコツを拾っていて、それを繰り返してるうちに体が覚えていくみたいな。

──改めて「THE FIRST TAKE」の「エジソン」を聴いて、「自尊心」の「ソン」のところの発音がすごく独特だと感じました。

詩羽 それけっこう言われて、確かにって私も思いました(笑)。歌いやすい歌い方をしていたらそうなっただけなんですよ。

ケンモチ レコーディングのときは普通に歌ってたんですよ。だんだん変化してきたよね。

詩羽 去年は圧倒的に「エジソン」を歌う回数が多かったのが大きいですね。音程が取りにくい曲だし、いろんな時間、いろんな場所で歌ってきたから、声の出しやすい歌い方を探していくうちに身に付いたのかな。

ケンモチ 前に「距離が歌い方に影響してくる」って話してたよね。レコーディングとか「THE FIRST TAKE」のときは目の前のマイクに向かって発声してるイメージだけど、ライブのときはお客さんのところまで声を飛ばすようなイメージで歌っていて、そのほうが歌いやすい、みたいな。

詩羽 そう。音源とライブが全然違うのは、届け方が違うからなんだと思いますね。これがテレビだとまた変わってくるんですけど。

詩羽

詩羽

──意識や心構えが発声に反映されるんですね。

詩羽 目の前のマイクに向かって歌うときは、わりと頭で考えながら出力を調整できたりしますけど、ライブだとそれどころじゃないので(笑)。考えてる暇なんかないから、そのときの勢いや空気感や気分に任せて自然にやってます。

詩羽が狼に激詰めする「赤ずきん」

──新曲「赤ずきん」には、詩羽さんとケンモチさんのコンビがどんどん小慣れてきている手応えを感じました。詩羽さんが歌いやすい、あるいは長所を発揮しやすい音階や旋律、言葉の響きを意識していますか?

ケンモチ 特に歌詞は詩羽が言いそうな口調をイメージしながら書いてるところがありますね。「赤ずきん」はおばあさんに扮した狼に赤ずきんがツッコミを入れるというか、詰めていく曲なんですが、ライブだと詩羽が勢いに乗ってかなり激詰めしているみたいに響く(笑)。僕としては「してやったり」って感じです。

──どんなところから着想を得た曲なんですか?

ケンモチ まず「隣の恋は青く見える4」の主題歌のお話をいただいて。その番組は悩めるカップルが一時的に交際を解消して、恋愛フリーの状態でほかの男女と生活してもらうという趣向のもので、「もとのパートナーに揺さぶりをかけるような、心理戦みたいなところがある」というお話を聞いたあと、キャラクターや人物の名前を記したアイデアリストを見せてもらって「そういえば『赤ずきん』って赤ずきんちゃんと狼の化かし合いみたいな話だな」と思い付いて、これで作ってみようと。

詩羽

詩羽

──おばあさんに上手に化けられていない狼に、赤ずきんがキツいツッコミを入れていく。発想と言葉遣いに妙味があります。

ケンモチ 今となってはそういう話だと納得してますけど、子供のときに「おばあさんに扮してる狼って、普通にわかるんじゃないか」と思ってたんですよね(笑)。「声も似せてって書いてあるけど、似てないだろ」とか。それを思い出してこういう感じにしてみました。

──ライブでの“激詰め”は楽しみですね。

詩羽 ボーカルが私になってからの曲でいうと、自分なりのギャルのイメージで歌った「織姫」にまあまあ近くて、しゃべり方や狼に対して「おいおい」とあきれるところは、わりと素の口調でやりました。ライブでもレコーディングでも、曲の主人公の心情になるというか、本当にそう思ってる感じでやんないと面白くならないので、「おいおい」って歌うときも、本当にその気持ちになっています。

2023年2月16日更新