ビッケブランカ|揺らめく音の向こうに見つけた自分の本質

「Shekebon!」に救われた気持ち

──シングルにはアルバム「Devil」のリード曲「Shekebon!」が再収録されています。こちらはドラマ「ピーナッツバターサンドウィッチ」オープニング主題歌としてオンエア中です。

ドラマサイドが選んでくれたんです。ドラマのオープニング映像でキャストの皆さんが踊ってくれていたりして、すごく光栄だしうれしいですね。

──「Shekebon!」は「Ca Va?」にも通じる、ブッ飛んだポップス感があって。

そう、まさに「Ca Va?」を作ったときのマインドでもう1曲作ってみたという曲なんです。そもそも「Ca Va?」は「まっしろ」というバラードシングルのあとに放り込んだ曲で、すごく変わった曲なんですよ。ミュージカルみたいな雰囲気で始まって、AメロとBメロでコードの構成がまったく違うし、サビも「カカカカカカ、カモン(C-C-C-C-Cmon)」って歌っていて(笑)。あまりにも自分のほかの持ち曲と違うから、「『Ca Va?』の弟みたいな曲を作ろう」と。あえて構成は似せているんですけど、コード感だったり、使っている楽器は違ってる。そういう作り方は初めてだったし、楽しかったですね。

ビッケブランカ

──「Ca Va?」のスマッシュヒットによって、ビッケブランカさんの認知度もさらに上がったのでは?

そうかもしれないです。完全におかしい曲なんですけどね。「なんだかわからないけどアガるね」というところに着地できてよかった(笑)。これは裏話なんですけど、「Ca Va?」がSpotifyのテレビCMに起用されて、たくさんの人が聴いてくれたとき、スタッフは「『Ca Va?』を歌うビッケブランカ」をどうプロモーションしていくのか悩んでいたんです。そうしたら、そこからさらに「Shekebon!」をアルバムのリード曲にするから、余計わけがわからなくなって(笑)。

──(笑)。めちゃくちゃ個性的ですからね。

でも、そこで「もっと流行に寄せよう」とか「カラオケで歌えるようなメロディを」みたいな方向に行くのではなく、チーム全体で「自分たちにしかできないことをやろう」とがんばりました。なので「Shekebon!」をドラマの主題歌にしてもらえたことはすごくうれしいんですよ。制作していたときはただ一生懸命やっていただけだし、どんなふうに受け止められるかわからない、アルバムの中の1曲だったので。それを「いい曲」と言ってもらえて、あとからドラマの主題歌になって。自分にしか作れない曲、そのときにしか作れない曲を信じてやってきてよかったなと思うし、救われた気持ちになりますね。

今までやってなかったことをやってみよう

──シングル以外の活動についても聞かせてください。7月にビッケブランカ&松本大名義で新曲「Little Summer」が配信リリースされました。これはLAMP IN TERRENの松本さんをフィーチャーした楽曲ですが、どういう経緯でリリースに至ったんですか?

曲自体は僕が作ったんですけど、フィーチャリングでのボーカルの歌い分けもやったことがなかったし、誰かに一緒に歌ってほしいなと思って。5月、6月までは音楽業界全体が止まってたじゃないですか。予定していたビッケブランカのプランも止まっていたから「この時間を使って、今までやってなかったことをやってみよう」と。その1つが、誰かと一緒に歌うことだったんですよね。松本くんはバンドシーンでも随一の表現力を持っているボーカリストだと思っていて、きっと「Little Summer」にも合うだろうなと。

──トロピカルハウス系のトラックと松本さん、ビッケさんのボーカルの対比が新鮮でした。

LAMP IN TERRENは基本的にギターロックですからね。この曲に関して言えば、彼の歌の表現力だけを抽出したくて。思った通り、いい感じになりました。

──松本さんとは以前から交流があったんですか?

はい、だいぶ前から仲良くしていて。珍しいんですけどね。僕はアーティストの友達がほとんどいないから(笑)。岡崎体育さんとw-inds.のKEITAさんとは夜な夜なオンラインでサッカーゲームをやってますけど。

──男同士の友情みたいなものが苦手とか?

そうかもしれない(笑)。「どうせ仲良くなれないだろうな」って思っちゃうというか……でも、最近ちょっとずつ変わってきたんですよ。例えばフェスで大きいステージを担っている人には絶対に魅力があるし、話してみるとやっぱり面白くて。そうやって少しずつ、友達や知り合いが増えているところですね。いろんな人と関わることで、自分も一段一段成長できるだろうし。

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やっぱりライブは生でやるもの

──アルバム「Devil」のリリース時のインタビューでは、世界で勝負できるEDMプロジェクトを立ち上げたいとも言ってましたよね。

はい。本気で世界規模でやろうと思ってたんですけど、今は海外に行けないし、どうしようかなと。鬱々としていてもしょうがないし、とりあえず日本語でやってみようと思って作ったのが「Little Summer」だったりするんです。ミュージックビデオでもDJやってますし。

──YouTubeには海外のリスナーからもコメントが寄せられていて、「全然知らない人だけど、音はいい」みたいなコメントもありますね。

うれしいですね、それは。「Little Summer」はアレンジからミックスまで、すべて自分1人でやったんですよ。Spotifyで海外の音楽と並べて聴いてもそれほど遜色ない音だと思うし、それを1人で作れたことは自信にもなりました。今後、海外で学べたりしたらもっとよくなるし、絶対に勝負できると思う。そのために今やれることをやっておこうと思って、曲も作り続けてます。

──EDM系の曲ですか?

そうですね。レコーディングスタジオに入れないから、おのずとドラムは打ち込みになるので。ただ、ギターは生で録ってたりするんです。生音感を入れるのは世界的なトレンドでもあるんですよね。例えばティエストはキックとシンセのコード感を打ち込みで出して、あとは生のオーケストラを従えてライブをやってたり。メインのメロディを弦の演奏で、ビートは打ち込みというスタイルも増えてますね。

──そのスタイル、ビッケさん得意そうですね。ポップスのメソッドも生かせるだろうし。

そうなんですよ。「Stray Cat」とか、打ち込みと生音を組み合わせた曲もあるので。

──そして今後、シングル「ミラージュ」の特典としてオンラインによるミート&グリートも行われます(参照:ビッケブランカ、オンラインでのミート&グリートを初開催)。これも初の試みですね。

1対1でできる限り長く話したいと思ってます。もともと“ミーグリ”は大好きなんですよ。活動の規模が大きくなるとやりづらくなるんだけど、リスナーの方と直接話せる機会はどうにかして作りたい。本当の感想というか、「今回の曲、どう思った?」って直で聞きたいので。今回の事態を受けて、オンラインでやれることがどんどん増えてますけど、ミーグリもその1つですよね。

──オンラインのライブについてはどう考えていますか?

ちょっと難しいのかなと思ってますね、個人的には。自粛期間が明けた直後にオンラインのイベントを一度だけやって、そのときは楽しかったんですけど、やっぱりライブは生でやるものだなとも思いました。ライブを配信するのではなくて、配信だからこそやれること、本気でそこに臨めるやり方を考えないと。配信ライブって、プロのゴルファーに「ゴルフ場が使えないので、サッカー場でやってください」って言ってるようなものですからね。ミュージシャンが輝けるのはやっぱりライブハウスやホール、アリーナだと思います。あくまでも僕の考えですけどね、それは。

──コラボや提供曲も増えそうですし、今後の展開にもめちゃくちゃ期待しています。

今、本当にいろんな話をもらっているんですよ。「こういうことをやってみませんか?」と言われるたびに、絶対に期待に応えたいと思うし、すごくうれしくて。自分の中にもやりたいことはたくさんあるし、コロナ禍でも意外と疲弊せずに済んでますね。曲を作って、Uber Eatsでごはんを頼んで、風呂入って、ゲームして、また曲を作って、合間にYouTubeで怖い話を聞いて(笑)。ずっとその繰り返しです。

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