コンテストはトラウマなんです
──「WARPED TOUR」を開催するなど、シューズブランドながら音楽カルチャーを盛り上げているVANSが行っている音楽コンテストが「VANS MUSICIANS WANTED」です。2019年から日本もアジア予選に毎年参加し、今年は7月7日より応募を受け付けます。優勝すると世界のトップクラスのアーティストとの競演が約束されるなど、かなり夢のあるコンテストだと思いますが、10-FEETがアマチュアの頃にこういったコンテストがあったら応募していたと思いますか?
TAKUMA 応募しないと思いますね……(笑)。
──(笑)。
TAKUMA いや、コンテストってやっぱりうまくないとダメじゃないですか。
──「VANS MUSICIANS WANTED」の採点基準は、VANSのキャッチコピー「OFF THE WALL」にどれくらい一致しているのかが40%、オリジナリティが20%、ステージパフォーマンスが20%、テクニカルが20%という比率だそうです。なので実は技術に関する部分は20%だけなんですよ。
TAKUMA そうなんですか。コンテストと言うと、どうしても身構えてしまうなと思ったんですよ。
KOUICHI 敷居が高い感じあるよな。
TAKUMA うん。俺らの技術では無理やろって。
NAOKI 自分らで応募してへんのに落とされてたこともあったよな。先輩に誘われて出たライブが実はオーディションライブで、出番が終わって楽屋に戻ったら「不合格です」って言われて(笑)。
KOUICHI トラウマなんです。
TAKUMA そんなことがあったんで、やっぱりコンテストはうまくないといけないと思っちゃうんですよね。自分らがバンドを始めた頃、周りの演奏がうまいバンドが「TEENS' MUSIC FESTIVAL」っていう10代が出るコンテストで全国大会に行けないのを見て、「あいつらで行けへんのやったら俺らには絶対コンテストは無理。ストリートからがんばっていこう」と思ったんです。でもコンテストがたくさんある中でストリートの文化がより出てきて、VANSも日本で人気になったので、俺らはVANSのカルチャーには近付いたんかな。でもコンテストというものは正反対にあるものだったなと思います。
──あと「VANS MUSICIANS WANTED」の優勝者にはスーパースターとの競演に加えて、SpotifyのVANSのプレイリストに楽曲を入れてもらえたり、ロゴの入った楽器がもらえたり、1年間VANSからシューズとアパレルをサポートされたりと豪華なプライズも用意されています。
TAKUMA なるほど。出ます!
KOUICHI もらえるなら(笑)。
──「VANS MUSICIANS WANTED」はコロナ禍ということもあり、昨年よりWebで展開されており、優勝者のみならず出演するだけで人の目に留まるという点でフックアップの要素もあると思っています。10-FEETは「京都大作戦」というフェスを2007年(初年度は台風で中止)から開催していますが、若手をフックアップされているイメージもあって。
TAKUMA 僕ら自身は先輩に声をかけてもらって相応じゃない場に出してもらえたと思っていて。そういう経験があったからまだ世間にあまり知られていない後輩バンドにも同じようにしてあげたいという思いはあります。でも「京都大作戦」に関しては、音源を聴いたりして、ライブを観たいなと思ったらオファーするみたいなこともあって、フックアップということだけを意識しているわけではなくて。逆に力を貸してもらいたいときに声をかけたりもしますし。もちろん「京都大作戦」のステージが出演者たちのチャンスに結び付いたらうれしいという思いはあります。そして今のバンドってみんな知識があったり、うまかったりすごい人が多いんですよ。「京都大作戦」も回数を重ねれば重ねるほど、年齢や活動歴は関係ないなと思い知らされます。
出れば絶対プラスになる
──今回の「VANS MUSICIANS WANTED」もいろんなアーティストが集まってくると思いますが、3人の興味のほどはいかがでしょうか?
TAKUMA まずどんな人たちが参加しているのか見てみたいですね。
NAOKI 面白いバンドもいっぱい出そうやし。
──面白さみたいな部分では、10-FEETが若手の頃に抱いてたコンテストへのイメージとは全然異なるものかもしれませんね。
TAKUMA そうですね。今の時代で僕らが若くてバンドを組んで間もない時期だったら、面白がって参加するかもしれんなと思いました。今はちょっとコロナで止まってしまってますけど、昨今のライブブームはテクニカルな部分以外でも魅力があったんじゃないかなと思っていて。楽曲はもちろんですけど、パフォーマンスであったり歌詞であったりMCであったり……ライブやアーティストに対していろんな魅力がある。だから今俺らが20代やったら、そんな中で総合して俺らってどう見られるんやろうという思いで出場を考えると思います。で、その先にまた海外アーティストとの競演もあるとのことなので、もし有名なビッグスターと競演したとき、そのファンだったり世界中の音楽ファンからどう見られるんだろうという思いだけで出場を決めるかもと思いました。当時、僕ら側からすると評価のベースに技術力があったと思ってたんですけど、審査員の人たちも技術以外のところを見ていたかもしれないなと、お話を聞いていて思いました。
──今の時代にフィットした評価基準もいいですよね。
TAKUMA そうですね。今はライブを観にきた人が感動したり楽しいと思えるかどうかが一番だと思うので、おおげさに言うと全員楽器が下手でも「なんかいいんだよな」と思わせたら勝ちじゃないですか。それはオーディエンス側も審査側もライブに対する理解度が上がったというか広がったからでもあるなと思います。ここ数年はどんどん新しいバンドも出てくるし、ライブの機会も多いんで、「みんなが知らんカッコいいアーティストを発掘しよう!」って思ってるお客さんも多いと思うんですよ。
──サブスク文化も影響しているかもしれませんね。
TAKUMA 確かに。昔はちょっと聴いてみようと思ってもCDを買わないといけないのがほとんど。ライブも今ほどはなかったんで、「音源はあんまりやけどライブがええんや」と音楽友達から言われても観るにはお金がかかったんですよね。それがもっと自由になって、お客さんのライブへの理解度が増したんやと思います。
──今回のコンテストにはどんな人たちに参加してもらいたいと思いますか?
KOUICHI せっかくのチャンスですからね。チャンスをつかみたい人はどんどん挑戦していけばいいと思います。
NAOKI ダメなこと全然ないですよ(笑)。
──年齢制限もないんですよ。
KOUICHI え、そうなんですか? それはいいですね。
TAKUMA マスターズ枠もあったら……。
KOUICHI あったら僕らも参加したい(笑)。
NAOKI ジャンルも技術も関係ないというか、1つでも自分らはほかのバンドに負けてへんぞっていう部分があるならガンガン行ったほうがいいと思いました。そういうバンドも今の時代は多いと思うんで。
TAKUMA コンテストって審査員がいるから、ちゃんとダメなところも教えてくれるじゃないですか。そういうのってバンドにとってすごく成長材料になるので、こういう機会に参加してみるのもいいんじゃないかなって。さっき過去にGEN(04 Limited Sazabys)くんを審査員に起用したという話を聞いたんですけど、確かにGENくんは向いていると思うし、そういう人選をするVANSの人たちっていいなと思ったんです。すごく音楽に対する愛と理解がある人たちなんやろうなといろいろ話を聞いていて思いました。だから自分が何者なのか、果たしてイケてるのかイケてないのか、そういうことを客観的に見てもらって知る意味でも参加してみる価値があると思います。そこで勝ち抜いていけば新しいチャンスをつかめるし、もし負けても財産になる。きっともっとカッコいいバンドになるヒントやきっかけを得られると思うんですよね。「今に見とけよ」っていう反骨精神が生まれるかもしれないし。いろんなタイプのライブを観てきているVANSチームだからこそ、いろんな角度から参加者を評価してくれるだろうし、そういう人たちに聴いてもらえる、観てもらえるだけでも意義がある。長年いろんなジャンルのアーティストやスケーターをサポートしているVANSが主催しているという背景もあるコンテストですし、出演すればバンドにとって絶対にプラスになると思います。
※記事初出時、キャプションに誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
2021年7月7日更新