Uru|“愛を知る”過程を描く、話題のサスペンス映画主題歌

Uruがニューシングル「ファーストラヴ」をリリースした。今作には、堤幸彦監督、北川景子主演の映画「ファーストラヴ」の主題歌として書き下ろされた同名タイトル曲と、挿入歌「無機質」を収録。映画は“女子大生による父殺し”というセンセーショナルな事件から始まるサスペンスで、Uruは物語の主題を深く読み解き、趣深いバラードを2曲完成させた。今作にはさらに、優里「ドライフラワー」のカバーと、ピアノをバックに歌う「Break」のセルフカバーも収録される。

シングルリリースに際し、音楽ナタリーではUruにリモート取材を実施。2020年の振り返りから、「ファーストラヴ」が完成するまでの過程を聞いた。

取材・文 / 廿楽玲子

「動く」と「楽しむ」を実現できた2020年

──まず初めに、Uruさんの2020年を振り返らせてください。大変な1年でしたが、どう過ごされていましたか?

ライブが中止になったり、思い描いていたことがなかなかうまくいかずにイレギュラーな感じで進んだ1年ではありましたが、私にとってはいろんなことに挑戦した年でもありました。初めてテレビ番組に出演したり、LiSAさんと初めてのコラボレーション(ソニーのヘッドホン・イヤホン「1000X」シリーズのテーマソング「再会」)を経験したり。年の初めにファンクラブで書き初め企画をしていて、こんな1年にしたいという思いを1文字の漢字で表しているんですけど、去年は「動く」の「動」と、「楽しむ」の「楽」の2つを掲げたんです。自分の中ではその通りに動けた年だったかなと思います。

「Uru Online Live 2020『あなたと私』」の様子。(撮影:西槇太一)

──「動」を選んだ理由は?

今までずっと同じ範囲をぐるぐる動いていた感覚があって、それをちょっと広げてみたいなと思ったんですね。「オリオンブルー」というアルバムをリリースしたので、それをたくさんの人に届けたいという気持ちもありました。

──「CDTVライブ!ライブ!」でテレビに初出演されたときは私も観ていましたが、すごく緊張されているのが伝わって、こちらも緊張するほどでした(笑)。

(笑)。ライブのときもそうなんですけど、私が緊張しすぎて会場に来てくれた皆さんのことも緊張させてしまうのが課題なんですよね。なので2021年の書き初めは、堂々の「堂」の字を書きました。自分の音楽をもっとリラックスした気持ちで堂々と届けたいなって思っています。

──テレビ出演は今後楽しめそうですか?

自分がテレビに出ることによって応援してくださる方がすごく喜んでくれて。直接お会いできるタイミングが失われている今の状況では、私が自分からちゃんと発信していかないと届かないんだと思ったし、そのためにも自分の意識を変えていかないと、とも思います。

──対面のライブは延期や中止となりましたが、9月には初の配信ライブが行われました。

はい。配信ライブをするにあたって困ったのが、ライブを観てくれている皆さんが同じ空間にいない中で、何かしゃべらなきゃいけないということでした。最初は歌だけでMCはなしにしたいと思っていたんですけど、考えてみたら、それは自分の目線でしか考えていないなと思って。皆さんの目線になると、画面を通して1対1で向き合えるというのが配信ライブの醍醐味でもあるんですよね。だからタイトルを「あなたと私」にして、MCもちゃんと入れることにしました。結果、やってよかったなあと思います。

少しでも前を向いてもらいたくて作った「ファーストラヴ」

──さて今回の新曲は、映画「ファーストラヴ」の主題歌になります。非常に重いテーマを投げかける作品で、主題歌を作るのも難しかったのではないでしょうか。

そうですね。まず映画の本編を拝見する前に島本理生さんの原作を読みました。読み終わったあとにズシッときて、この映画の主題歌にはどんな曲が合うんだろう、歌詞はどんなふうにしたらいいんだろう……という思いが一気に押し寄せてきました。タイトルの「ファーストラヴ」だけを聞くと、ドキドキときめくような初恋のお話なのかなって思うんですけど、実はこの“ファースト”という言葉がすごく重要な意味を持っていると思います。“ラヴ”も大事だけど、“ファースト”のほうが重い意味を持つなと。

──確かに「ファーストラヴ」というタイトルには多層的な意味が込められていると思います。例えばこれを“初恋”じゃなくて“初めての愛”と読むと、ずいぶん印象が変わりますよね。

そうなんです。主題歌の「ファーストラヴ」は、北川景子さんが演じる主人公の由紀に寄せて書いた曲なんですけど、由紀は芳根京子さん演じる環菜と対話することによって、自分とも向き合っていく。相手のことを理解するために、否が応でも自分自身を顧みなくてはいけなくなるんですね。

──父を殺した環菜を通して、由紀も自分の傷と向き合う。きつい作業ですよね。

そうなんです、それで平歌(サビまでのパート)はただ傷を負った心をなぞっているんですけど、サビではある人との出会いによって変わっていく。そして最後は「初めて愛を知りました」という言葉で終わる。心に傷を負ってる人がいたら、この歌を自分に置き換えて、少しでも前を向いてもらえたらいいなと思って作りました。私もそうなんですけど、傷付いているときって「明るくいこうよ」とか「考えすぎないで」とか言われても無理なんですよね。そんなときに同じような心情を歌ってくれる曲があると、心にすっと入ってきたりするので。

──この映画は対話が1つのキーワードになっていますが、言葉で何かを伝え合うのはすごく難しいですよね。

「Uru Online Live 2020『あなたと私』」の様子。(撮影:西槇太一)

本当にそう思います。このコロナ禍の状況になって会えなくなる人たちがいて、元気かな?って思うけど、なかなか自分から連絡しようという気が起きなかったりして。それであとから「実はこんなことがあって……」とかつらい状況だった話を聞いたりすると、「なんでそのときに助けてあげられなかったんだろう」って思います。逆に、相談に乗ろうと思ってこまめに連絡をしていた人から突然返信が来なくなって、時間が経ってから「ごめんね、あのとき返せなくて。1人でいろいろ考えたんだけど……」って言われたときに、「ああ、1人になりたかったんだなあ」と思ったり。話さないとわからないこともあるし、突っ込みすぎてもいけないし、すごく難しくて。

──Uruさんは思い悩んでいるとき、人に話すほうですか?

私は人に言わないです。内にこもってしゃべらなくなる。自分の中で噛み砕いて、整理できてから人に話し始めます。

──1人でどうやって乗り越えるんですか?

うーん、そうですね……泣きます(笑)。でも素直に泣けるときはまだよくて、涙も出ないときもある。

──そういうとき、音楽を聴いたりもします?

どういう感情になったらいいのか分からなくてごちゃごちゃしているときに、誘導してくれるような悲しい曲を聴いて涙を誘うことがあります。そうすると、涙と一緒にスッキリします。

──そういうシチュエーションでUruさんの曲を聴いている人もいっぱいいるでしょうね。

(大きくうなずいて)……そうですね。