緑黄色社会「SINGALONG tour 2020 -last piece-」|画面越しでも最後のピースは埋められる!「SINGALONG」を完成させる有観客配信ライブ

緑黄色社会が12月5日(土)に神奈川・KT Zepp Yokohamaで有観客の配信ライブ「SINGALONG tour 2020 -last piece-」を行う。この公演は6月から開催予定だったツアー「SINGALONG tour 2020」が新型コロナウイルス感染予防のため延期の末やむなく中止となったことを受けて開催されるものだ。

音楽ナタリーでは、緑黄色社会が4月に配信、9月にCDリリースした「SINGALONG」を“完成”させるべく行う本公演に向けて4人にインタビューを実施。このライブにかける思いを聞いた。

取材・文 / 下原研二 撮影 / 友野雄

少しずつでも前に進まなきゃ

──リョクシャカが音楽ナタリーに登場するのは約3カ月ぶりです。前回のインタビューでは、配信ライブ「SINGALONG tour 2020 -夏を生きる-」やコロナ禍による自粛期間中の生活について話していただきました。緊急事態宣言が明けて当時ほどの閉塞的な雰囲気はなくなってきた印象ですが(取材は11月上旬に実施)、皆さんは最近どうお過ごしですか?(参照:WOWOW 緑黄色社会「SINGALONG tour 2020 -夏を生きる-」インタビュー

緑黄色社会

穴見真吾(B, Cho) もちろん感染対策はしつつですが、たまに外食もしていますね。

小林壱誓(G, Cho) 僕はほかのミュージシャンと直接会ってコミュニケーションを取るようになりました。

peppe(Key, Cho) ずっと家にいると何もやりたくなくなるタイプなので、適度に外に出て人に会える今の状況はありがたいです。緑のあるところを散歩してみようとか、そういうことを少しずつできるようになったから、それが何よりの救いです。

長屋晴子(Vo, G) 最近はみんなの言う通り、感染症対策に気を配りつつ食事に出かけることも増えました。ライブやイベントもそうですけど、少しずつでも前に進もうとしないと変わらないというか、いつまでも守ってばかりじゃいけないなと感じています。

穴見 あとは有観客のライブをやるようになって精神的に健康になったというか。自分たちはライブを提供する側だから、ライブをやることで前に進んでいる感じを出していきたいなと思います。

長屋 そうだね。リモートでの取材やテレビの出演が多かったんですけど、最近は番組の収録でスタジオにお邪魔する機会も増えました。

──人に会う機会も徐々に増えてきているわけですね。先ほど穴見さんもおっしゃっていましたが、自粛期間中よりはメンタル面も調子がよくなってきたと。

長屋 そうですね。それに去年の冬に比べていろんなことに気を付けているので、身体面も健康です(笑)。

ほかのアーティストの配信ライブで受けた刺激

──コロナ禍以降、さまざまなアーティストが趣向を凝らした配信ライブを開催しています。皆さんはほかのアーティストの配信ライブもチェックしていますか?

長屋 私はsumikaさんの配信を観たんですけど、サーカス会場でライブをしていることがまずすごいなって。今だからこそできる演出だなと思ったんですよ。ライブのクオリティはもちろんですが、そうやって有観客でライブができない一見マイナスな状況をプラスに変えていてカッコよかったです。

穴見 僕は藤井風さんのファンでして、先日の武道館公演を配信で観ました。ミュージシャンという立場も忘れて見入ってしまいましたね。すごく感動しました。ライブ中に換気タイムが設けられていたんですけど、そういう時間があることで配信で観ている側も現場の雰囲気を感じられるというか。その換気タイムを挟んだ2部制になっていて、1部はYouTubeで披露しているカバー曲の弾き語り、2部ではオリジナル曲という構成にも痺れました。昔から観ていたいちファンとしてエモい気持ちになる演出でしたし、シンプルでも人を惹き付けるステージに同じミュージシャンとして悔しい気持ちにもなりました。

小林 僕はSuperflyさんの配信ライブを観ました。圧倒的な声量があるアーティストなので、きっとご本人的には配信だと伝えきれない部分もあると思うんですけど、だからこそ「早く生のライブを観に行きたい」と思えて。その魅力はうちのボーカルにもあるので、僕らも視聴者に「早くライブに行きたいな」と思ってもらえるような配信ライブを作りたいと思いました。

peppe 私は少し前にサザンオールスターズさんの配信ライブを観ました。「レジェンドが作る配信ライブってどんな感じなんだろう?」というワクワクもありましたし、普段ライブに行けないような方のステージを観られたのは貴重な時間でした。歌でメッセージを届けるために歌詞を変えていたのにも感動して、この時期ならではのライブを楽しめました。

今は地盤を固める時期

──ここからは12月5日に開催されるワンマンライブ「SINGALONG tour 2020 -last piece-」について聞かせてください。6月に予定していたツアー「SINGALONG tour 2020」が延期され、11月に振替公演として行われる予定でしたが、その公演も中止になりました。これは皆さんにとって苦渋の決断だったと思うのですが、どのような心境でしたか?

長屋晴子(Vo, G)

長屋 やっぱりすごく悔しくて、なんとかして開催できないかと考えたりもしました。ただ、今大事なのは無理にツアーを開催することではなくて、この状況をうまく使って次につなげることだと思ったんです。用意してきたものを100%出せない状況で皆さんに来てもらうのも違うなと思いましたし、まずは今できる100%の道を探しつつ、未来に向けてのステージを模索した結果が今回の「SINGALONG tour 2020 -last piece-」です。

小林 もし延期ではなく中止にしていたら、今の時期に新しいライブをできていたかもしれない。でも今回の選択を後悔してはいなんです。なぜなら当時の僕たちは「秋にツアーを絶対にやるぞ」という気持ちで活動していたし、お客さんも同じ気持ちでチケットを保管してくれていたという事実があるから。

──なるほど。お二人も同じ気持ちですか?

穴見 僕はギリギリまで「ライブがしたい」と粘っていたんですけど、長屋の意見を聞いて確かにそうだなと納得しました。ライブ活動に関しては辛抱の時期というか、曲作りをはじめクリエイティブな部分に時間を充てるようシフトさせようと考えを改めました。それに今年、来年だけの話ではなく、もっと長いスパンで考えれば、ツアーを諦めて1日に集約した配信ライブをするというのはいい選択だったんじゃないかなと思います。

peppe 私も結果的によい選択だったと思うし、後ろ向きな気持ちはないですね。みんなと話し合ったことで1日の公演に懸ける思いが増して、自分の中で来年のビジョンが鮮やかになりました。

──結果としてはポジティブな決断になったと。

peppe そうですね。今は地盤を固めようという気持ちになれたというか。

長屋 もちろん悔しい思いもありますけど、今は「この状況下にしかできないことを考えてやろう」というマインドで準備を進めています。