ナタリー PowerPush - __(アンダーバー)

フリーダムの秘密を明かしてみた

動画共有サイトの「歌ってみた」カテゴリーで活躍する歌い手、__(アンダーバー)。人気ボカロ曲の歌詞や歌を大幅にアレンジし、抱腹絶倒の合いの手をさまざまな声色で随所に盛り込んでいく、彼が生み出した「フリーダム」と呼ばれるスタイルは唯一無二のオリジナリティを発揮し、多くの人々をトリコにしている。また、その一方ではおふざけを一切盛り込まないマジメなカバースタイルを「フツーダム」と称し、「イケボ(イケメンボイス)」と評される歌声を披露してみたり、自身のオリジナル楽曲を投稿してみたりと、その才能の幅を感じさせる多彩な活動を展開している。

そんな彼がフリーダム楽曲を中心に編んだ2ndアルバム「フリーバム~フリーダムに歌ってみた~」をリリースするのを記念し、ナタリーではインタビューを実施。異彩を放つ音楽性の秘密に迫った。

取材・文 / もりひでゆき

フリーダムのルーツは声優さんのライブ

──現在、__(アンダーバー)さんは歌い手として活動しているわけですが、それ以前は歌に対してどう向き合ってきたんでしょうか?

動画共有サイトに投稿し始める前から歌うことはずっと好きでした。とはいえ完全に趣味としてだったので、ひとカラ(1人カラオケ)に行って歌いまくるくらいで。

──カラオケ以外に歌の活動はしていなかったんですか? 例えばバンドでボーカルを務めるとか。

「EXIT TUNES ACADEMY SUMMER TOUR 2013」より、4月29日の北海道・Zepp Sapporo公演の模様。

僕すっごい人見知りなので、バンドやりたいなっていう思いはあったんですけどメンバーを探すには至らなかったんです。なので唯一、自分にとっての憩いの場がカラオケボックスだったっていう。

──カラオケに行くと、どんな曲をどのくらい歌います?

1回行くとだいたい2時間くらいは歌いますね。誰も見ていない中、飛んで跳ねて騒いで(笑)。T.M.RevolutionさんやGACKTさん、JAM Projectさん、Sound Horizonさんの曲を歌うことが多いです。

──「飛んで跳ねて騒いで」っていうことは、カラオケでもかなりフリーダムな感じで歌っているんですね。

そうですそうです。そもそもカラオケでやってることをそのままやってしまえっていうのがフリーダムをはじめたきっかけなので。1人で歌って、1人で合いの手を入れて、1人で踊ってっていうことをずっとカラオケではやっていたので、それを投稿してみようっていう。

──合いの手はフリーダムの特徴にもなっている大きな要素だと思うのですが、そこに何かルーツはあるんですか?

僕は昔、声優さんのライブによく行ってたんですけど、いわゆるアニソン系のライブにはお客さんが勝手に合いの手を入れていく変わった風習があるんですよ。声優さんが歌ってるのに、みんな飛んで跳ねて大声で叫ぶっていう(笑)。その雰囲気がすごく楽しかったので、いつのまにか1人でもやるようになって。

──なるほど。で、2009年10月に動画共有サイトの“歌ってみた”カテゴリーへ「脱げばいいってモンじゃない!」のフリーダムアレンジを投稿するに至ったわけですね。

はい。動画共有サイトはかなり初期から観ていたんですけど、徐々に普通に歌うだけではない、自分の個性を思い切り出した歌い手さんが出てきていたんですよ。そこで、「あ、こういう歌でもOKなんだな。みんなをニコニコさせるようなことをやってもいいんだな」と思ったので、勇気を出して投稿してみて。

マジメに勝負するよりも、みんなで一緒に楽しもうと

──ちなみにネット上にはそれ以前にも投稿していたという記述もあるのですが、そのあたりの真偽は?

あ、実は2008年の冬くらいだったと思うんですけど、ボカロ曲ではなく東方(Project)の楽曲を歌って投稿したことがあったんですよ。そのときはフリーダムではなく、ただ忠実に歌っていただけだったんですけど、なんと言いますか、かなり荒れてしまいまして(笑)。

──叩かれてしまったんですか?

ヘタだのどうのこうの言われてしまい。そこで、ああやっぱり怖い世界なんだなと思って、1回投稿した動画を全部消して出直すことにしたんです。

──そこで、忠実に歌うのではなく自分の個性を出してみる流れになったと。

「EXIT TUNES ACADEMY SUMMER TOUR 2013」より、5月4日の福岡・Zepp Fukuoka公演の模様。

そうです。マジメに勝負するよりも、みんなで一緒に楽しもうというスタンスでいくのがいいんじゃないかなって。それでフリーダムでの投稿に行きついたんですよね。

──「脱げばいいってモンじゃない!」の評判はどうだったんですか?

「なんだこれは!?」、「なんだこの変な声は!?」っていうコメントをたくさんもらいました。「脱げばいいってモンじゃない!」の作曲者であるデッドボールPさんも当時、動画を観に来てくださって、「なんだこの気持ち悪いヤツは!」ってコメントを残してくれましたね。今となっては落ち着いた感じに聞こえるかもしれないですけど(笑)、初投稿としてはかなりのフリーダムっぷりだったと思うんですよ。だから驚く人も多かったと思うんですけど、20~30人の人がマイリストに登録してくれましたし、100再生くらいまで一気に行ったので、手応えはかなりありました。

──__(アンダーバー)というアーティスト名は初投稿のタイミングでつけたんですか?

最初は名無しで投稿してたんですよ。動画共有サイトにはリスナーさんがアーティスト名をつけてくれる風習があったので僕もそれに期待して、名前の欄に何も表示されないようにアンダーバー2本を書いておいたんです。

──パッと見、空欄に見えますもんね。

はい。でもいつまで経っても名前を決めてもらえなくて。それどころか「早く名前を決めろ!」って急かされる感じになってしまったので(笑)、そのまま__(アンダーバー)を使うことにしたんです。こんな名前の人はほかにいないだろうと思ったので、まあそれもいいかなと。

ニューアルバム「EXIT TUNES PRESENTS フリーバム~フリーダムに歌ってみた~」 / 2013年6月19日発売 / 2000円 / EXIT TUNES / QWCE-00281
ニューアルバム「EXIT TUNES PRESENTS フリーバム~フリーダムに歌ってみた~」
収録曲
  1. いーあるふぁんくらぶ(フリーダムVer.)
    [作詞/作曲:みきとP]
  2. 脳漿炸裂ガール(フリーダムVer.)
    [作詞/作曲:れるりり]
  3. 過食性:アイドル症候群(フリーダムVer.)
    [作詞/作曲:スズム]
  4. オマツリアンドゥワールド(フリーダムVer.)
    [作詞/作曲:YM]
  5. こちら、幸福安心委員会です。(フリーダムVer.)
    [作詞:鳥居羊 作曲:うたたP]
  6. ギガンティックO.T.N(フリーダムVer.)
    [作詞:れをる 作曲:ギガP]
  7. リンちゃんなう!(フリーダムVer.)
    [作詞:sezu 作曲:オワタP]
  8. アンダバダバダー星人VSおっぱい星人
    [作詞/作曲:デッドボールP]
  9. 千本桜(フリーダムVer.)
    [作詞/作曲:黒うさ]
  10. 十面相(フリーダムVer.)
    [作詞/作曲:YM]
  11. 永遠に幸せになる方法、見つけました。(フリーダムVer.)
    [作詞:鳥居羊 作曲:うたたP]
  12. アンダーバーラジオ~フリーバム特別編~
  13. 夕立のりぼん
    [作詞/作曲:みきとP]
  14. from Y to Y
    [作詞/作曲:ジミーサムP]
ボーナストラック
  1. Under The King
    [作詞/作曲:__(アンダーバー)]
__(アンダーバー)

ソーシャルネットワークの音楽ジャンルを中心に活躍する男性の歌い手。2009年の「フリーダムに『脱げばいいってモンじゃない!』を歌ってみた」を投稿したことを機に、原曲を大幅にアレンジして合いの手などを挟み込む独特の歌唱法「フリーダム」を確立し、ネットユーザーから絶大な支持を集めるに至る。同時に、イケメンボイスで真面目に歌う「フツーダム」のカバーも多数発表。さらにボカロPとして自作曲「もやし女」を公開するなど幅広い活動を展開している。2012年7月にはフツーダムを中心にしたアルバム「フツーバム ~フツーダムに歌ってみた~」、2013年6月にはフリーダムを中心にしたアルバム「フリーバム~フリーダムに歌ってみた~」をリリース。さらに同年6月には自身初のワンマンライブ「__ (アンダーバー)~UNDER THE LIVE 2013~」を開催。約2700人を動員し、ZeppTokyoをアンダーバー一色に染めた。また、8月31日には大阪、9月1日には名古屋にてワンマンライブの追加公演が決定している。