ナタリー PowerPush - __(アンダーバー)

熱狂と感動の初ワンマン舞台裏

ソーシャルネットワークの音楽シーンを中心に人気を獲得しているアーティスト__(アンダーバー)が、初ワンマンライブの模様を収録したライブアルバム「EXIT TUNES PRESENTS UNDER THE LIVE 2013」をリリースした。

ファンからの熱望によって実現した初ワンマンは東名阪3カ所で開催。大胆なアレンジを施して歌う“フリーダム”と、まじめに歌う“フツーダム”という異なる魅力を存分に盛り込んだエンタテインメント性あふれるパフォーマンスに、トータルで約6000人以上の来場者が酔いしれた。そんな__(アンダーバー)のライブが持っているほかにはない楽しさは、本作でも鮮烈に感じることができる。

ナタリー2度目の登場となる今回のインタビューでは、初ワンマンライブを振り返ってもらいつつ、本作の聴きどころをじっくり探ることにした。

取材・文 / もりひでゆき

名古屋では低音の歓声が響いてビックリ

──今回パッケージ化されることとなった初ワンマンライブ。東名阪3公演をやり終えてみての感想をまず聞かせてください。

__(アンダーバー)

初ワンマンということで準備の段階からかなりバタバタしたんです。舞台セットをどうしよう、パフォーマンスをどうしよう、選曲はどうしよう……要は__(アンダーバー)をどう見せていこうかっていう部分でかなり打ち合わせを重ねていって。僕としても初ワンマンだったわけですけど、主催のEXIT TUNESさんにとってもワンマンライブの開催は初めてだったので、みんなで試行錯誤しながら慎重に作って行った感じでしたね。結果、大成功と呼べるライブになったと思うのでほんとに苦労したかいがあったなと思います。

──内容を詰めていく際、どんなところを大事にしましたか?

「みんなで楽しめる」というのが僕のライブのモットーなんですけど、ワンマンライブではそこをより突き詰めて、エンタテインメントらしいことをやりたいなと思いました。非日常の世界に迷い込んだような空間を作りたいなと。そもそも僕はアンダーバー星の王様なので(笑)、普通のライブとは違ったことをやらないと地球人と同じになってしまいますからね。

──すべての公演が超満員でしたよね。多くの人たちが__(アンダーバー)のワンマンライブを熱望していたんだなあと、ちょっと感動しました。

どこもギッチリミッチリでありがたかったです。東京のお客さんは僕のライブに慣れている人が多かったんですけど、大阪は初めて観る人が半分以上だったんです。なので振り付けもわかりやすくゆっくりやってみたりして。あと名古屋は男性のお客さんがすごく多かったのにビックリしました。低音の歓声が響いてくるので(笑)、いつも以上に熱さを感じました。地域ごとにお客さんの違いがはっきり見えたのはすごく面白かったです。

拍手がまったく起こらなくてドキドキ

──セットリストに関してはどんなイメージで決めていきましたか?

そこもエンタテインメントをかなり意識しましたね。ダンスをやりたいという思いがあったので、それに合う楽曲を選んでいったり。あとはフツーダムをしっかり聴かせるという部分も大事にしました。ライブの制作スタッフさんに「アンさんの魅力はフツーダムにこそ隠されていると思うんですよ」っていううれしい言葉をいただいたので、じゃあそこもしっかり入れていこうと。「from Y to Y」「S・K・Y」というバラードを入れたのもそういう理由です。

──個人的にはフリーダム楽曲が意外と少ない印象だったのですが。

ああ、そうですね。フリーダムは声をガラッと変えて歌う部分が多いので、ノド的にどうなるんだろうっていう若干の不安があったんです。

──あ、やっぱりあの声はノドに負担がかかるんですね。

__(アンダーバー)

ものすごく(笑)。僕、初めてライブをやったのが去年の3月のETA(「EXIT TUNES ACADEMY」)だったんですけど、そのときは「フリーダムは1曲しか歌えません!」って断言してましたから。その後、ライブをたくさん経験することでノドは強くなってきたんですけど、1人で2時間のライブをやるとなるとまだどうなるか予測がつかなくて。なのでちょっと少なめにしたっていうのはありました。あともうひとつ、フリーダムは曲として強すぎるので、1曲でも3曲分くらいのインパクトを与えてしまうんですよ(笑)。なのでちょっと少ないくらいのバランスがいいのかなって思ったんですよね。

──確かに曲数だけで見るとフリーダムは少なめですけど、全体の印象としてはかなりにぎやかですもんね。フリーダムとフツーダムのギャップがすごすぎるんで、その歌い分けはかなり大変そうですけど。

そうなんです。気持ちをどう切り替えればいんだっていう。自分でもそこは大変なところで。特に「from Y to Y」「S・K・Y」を歌った後の「ギガンティックO.T.N」はどうしようかなっていう(笑)。

──ライブ中、もっとも緩急が激しいポイントでしたよね。

東京のときは「S・K・Y」でみんなものすごく聴き入ってくれたみたいで、拍手がまったく起こらなかったんですよ。拍手が起これば空気がちょっと切り替わるかなと思ってたんだけど、会場がシーンとしてしまって。その瞬間、「うわあ、ここから『ギガンティック~』かあ」と(笑)。かなりドキドキしましたね。

──あははは(笑)。でも、フツーダムに聴き入ってしまうのにはすごく納得。歌の力がハンパじゃないというか。

ありがとうございます。僕の場合、フリーダムがあるからこそフツーダムでもしっかり表現できるようになったんじゃないかなって思うんですよ。言葉で楽しませるというフリーダムで培った武器があるからこそ、フツーダムでもお客さんの気持ちを言葉で動かすことができているんじゃないかなって。

──表現力豊かな歌声に黄色い歓声が飛び交っていましたもんね。

フツーダムに関しては、今までETAで共演してきたすごいアーティストさんたちからテクニックをいっぱい盗んできましたから。「なるほど、フツーダムはこうやって出すのか」「こう歌うとキャーキャー言われるのか」みたいな(笑)。その一方で、フリーダムでは大爆笑もしてもらえますからね。2度おいしい感じです。

──活動の中で手に入れた成長をしっかり感じさせてくれるライブだったと思います。

ETAというイベントを毎回試行錯誤しながら続けてきたことで、いい経験を積むことができていたということでしょうね。自分なりのライブの形がちょっと見えた気がしました。

ライブアルバム「EXIT TUNES PRESENTS UNDER THE LIVE 2013」 / 2013年11月20日発売 / EXIT TUNES
初回限定盤 [CD2枚組+DVD] / 3000円 / QWCE-00316
通常盤 [CD2枚組] / 2500円 / QWCE-00317
DISC 1
  1. Opening
  2. いーあるふぁんくらぶ(フリーダムVer.)[作詞・作曲:みきとP]
  3. 永遠に幸せになる方法、見つけました。(フリーダムVer.)[作詞:鳥居羊、作曲:うたたP]

VTR(1)

  1. ノーナイデンパ[作詞・作曲:YM]
  2. オーバーテクノロジー[作詞・作曲:YM]
  3. 十面相(フリーダムVer)[作詞・作曲:YM]

MC(1)

  1. 愛ト茄子ト平和ナ果実[作詞・作曲:saiB]
  2. 右肩の蝶[作詞:水野悠良、作曲:のりぴー]
  3. VTR(2)

  4. 過食性:アイドル症候群 (フリーダムVer.)[作詞・作曲:スズム]
  5. パンチラドランカー[作詞・作曲:デッドボールP]

VTR(3)

DISC 2
  1. もやし男[作詞・作曲:__(アンダーバー)]
  2. 妄想スケッチ[作詞・作曲:40mP]
  3. アメリカ[作詞・作曲:じん]
  4. 夕立のりぼん[作詞・作曲:みきとP]

MC(2)

  1. from Y to Y[作詞・作曲:ジミーサムP]
  2. S・K・Y[作詞・作曲:ライブP]
  3. ギガンティックO.T.N(フリーダムVer.)[作詞:れをる、作曲:ギガP]
  4. 脳漿炸裂ガール(フリーダムVer.)[作詞・作曲:れるりり]

MC(3)

  1. こちら、幸福安心委員会です。(フリーダムVer.)[作詞:鳥居羊、作曲:うたたP]

Encore

  1. ピエロ[作詞・作曲:KEI]
__(アンダーバー)

ソーシャルネットワークの音楽ジャンルを中心に活躍する男性のアーティスト。2009年の「フリーダムに『脱げばいいってモンじゃない!』を歌ってみた」を投稿したことを機に、原曲を大幅にアレンジして合いの手などを挟み込む独特の歌唱法「フリーダム」を確立し、ネットユーザーから絶大な支持を集めるに至る。同時に真面目に歌う「フツーダム」のカバーも多数発表。さらにボカロPとして自作曲「もやし女」を公開するなど幅広い活動を展開している。2012年7月にはフツーダムを中心にしたアルバム「フツーバム ~フツーダムに歌ってみた~」、2013年6月にはフリーダムを中心にしたアルバム「フリーバム~フリーダムに歌ってみた~」を発表。さらに同年、自身初のワンマンライブ「__ (アンダーバー)~UNDER THE LIVE 2013~」を東京・Zepp Tokyo、大阪・なんばHatch、名古屋・Zepp Nagoyaにて開催。この公演の模様を収めたライブアルバム「EXIT TUNES PRESENTS UNDER THE LIVE 2013」をリリースする。