“ウルフルズらしさ”は考えなくていい

──今回のアルバムは、演奏やアレンジ、コーラスなど随所に“ウルフルズらしさ”を感じます。

サンコン　そうなんですかね。

ジョンB　一生懸命やったらこういう感じになるんです（笑）。

サンコン　でも確かにレコーディングのときに、特にドラムなんですけど、演奏が二枚目になりすぎて歌詞とかけ離れたりして。いい意味で三枚目のとこをみんなで目指したっていうのはありますね。その感じが“ウルフルズらしさ”なのかな、もしかしたら。

トータス　でも“らしくない”ことに憧れるっていう気持ちもあるからね。

──ウルフルズらしくないことをやりたい気持ちがある？

トータス　そうそう。でもそれは勘違いやねん。今までのウルフルズじゃないことをやるんがクリエイティブなんやと思ったりするけど、全然そうじゃなくて。“ウルフルズをどれだけやれるか”に挑むほうがクリエイティブやと思う。若いときっていうのはわりと背伸びするから、いろんなことやりたいんよ。けどそれで「どや！ 新しい境地に入ったで！」みたいなテンションをキープできるのって俺の経験上半年くらいやねん。半年経つと途端に恥ずかしくなってくるのよ。

──わかる気がします（笑）。

トータス　だから“ウルフルズらしさ”とか考えんでええねん。グチャグチャ考えずにそのときそのときの一番気持ちいい感じでゲラゲラ笑って作れればもうそれが一番。要するにいいコンディションで仕事をするっていうことやね。そこに自分を持っていくことのほうが大事。そしたらできるもんはおのずとよくなると思う。

──ジョンBさんが言っていた「一生懸命やったらこうなった」ということですね。

ケイスケ　なってしまうんですよね。

──なってしまうというのは？

ケイスケ　活動を再開して思ったんですけど、やっぱりこの4人でやるとウルフルズになってしまう。それがバンド感ってことなんやと思うけど、それは僕らにしか当然できへんことで、僕らにとってすごい大事なものなんです。しかも、それを待ってくれてる人がいるっていうのも改めて実感したし。

トータス　そういうムードがね、ずっとツアーやってたりすると、わざわざ言わんでも共有できてくるんですよね。だからそれさえわかってればいいっちゅうか。メンバー4人が共有してるとこに向かっていけばいいだけなんで。

──4人のテンションがそろってくるんですね。

トータス　やっぱりツアーがよかったね。ツアー回るとお客さんの反応がすごいわかりやすく届いてくるわけやん。あとは打ち上げのくだらない話が曲のアイデアにつながることもあるし。やっぱりライブに勝るものはないなと。そういうことが積み重ねって「ボンツビワイワイ」ができたんやと思うんよ。

ケイスケ　自分の中で再確認したことはいっぱいあったかな。こんなに求めてもらえる曲があるっていうことはすごい幸せなことやなっていうのを実感したし。流行りもんでもないし、ちょっと時代遅れやろとか自分でも思わんこともないねんけど、それがこんなに受け入れられんねやとかね（笑）。ライブしながら「あー、そうなんや！」って気付いたことがいっぱいあった。

──それは活動休止前は見えてなかった部分ですか？

ケイスケ　最後のほうは全然見えてなかったですね。何も見えてなかった。

トータス　お先真っ暗、八方ふさがり。全部壁みたいな感じやったからね（笑）。

本当に疲れ果てていた

──今、皆さんが楽しく活動しているのはお話を聞いているとよくわかるんですが、2009年に活動休止を決めたときにはやはりそういう心境ではなかったわけですね。

トータス　もう疲れ果ててましたからね。20年くらいやってるとみんなそうなるんちゃうかな。それをうまいこと乗り越えられる人たちと、僕らみたいに1回止めて休もうぜって言うしかない人たちと、2種類おるんやと思うんです。

──休止したときは、いつ頃活動再開できそうといったイメージもなかったんですか？

トータス　俺はそのときはなかったかなあ。たぶんもうウルフルズをやることはないやろな、くらいに腹は括ってたよね。それくらい、何も考えられへん感じになってたから。

──ケイスケさんも？

ケイスケ　うん、さっき話してたみたいな、バンドがいいムードではなかったですからね。

トータス　もう針がエンプティに振り切れてたから。バンドやってる友達とかから「大丈夫、またやれるよ」とか言われても「いや、うちらはもう無理やろ」って思ってた。とにかくすごい疲れてて、ライブもツアーも、なんかもうこなしている感じになってしまってるのよ。音楽やるっていうのはなんかね、完全に仕事と割り切ってたらできひんと思うねん。でも当時はそうなりつつあって、それがもうイヤやって。

──ステージでお尻を出すのも仕事として、みたいな？

トータス　うん、まあケツ出すのはね。仕事として割り切らんと、こんな汚いケツ出されへん（笑）。

ケイスケ　そこは大事やね。

トータス　ケーヤンが跳ぶのも仕事で跳んでんねん（笑）。

ケイスケ　あははは（笑）。

トータス　でも本当に疲れ果ててたからね。これ以上はもう無理や！ってなってしまって。

──個人単位じゃなく、バンド自体がそこまで疲れてしまうことがあるんですね。

トータス　うーん。さっきのムードの話で言えば、ウルフルズっていうムードが、誰がどうするわけでもなくモコモコモコモコって盛り上がったりする。その逆やね。誰かが疲弊して、そのムードが移ってなんとなく全体をマイナスにしていくっていう感じやったと思うねん。もし誰か1人がものすごい疲弊してたんやったら引っ張り上げることもできるけど、みんな同じようにちょっとずつ疲弊していってるから、引っ張れる余力がある人間が誰もおらへんっていう状態やった。