2017年10月にプロジェクトがスタートしてから約3年半が経過した「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」。当初は音源のみのプロジェクトだったが、コミカライズや「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」としてのアニメ化など、着実なクロスメディア化とファン層の拡大によって、一大ムーブメントとなった。また、サイプレス上野やKEN THE 390、GADORO、そしてZeebraといった現行のヒップホップシーンで活躍するアーティストたちが制作に関わった楽曲は、声優陣のラップも含めて高い評価を得ている。
コロナ禍においてもその勢いは衰えず、ますます盛り上がりを見せる中、「2nd Division Rap Battle」が開幕した。これは「ヒプマイ」世界におけるディビジョンと呼ばれる区画代表チームがラップバトルでしのぎを削るもの。「1st Division Rap Battle」では4つのディビジョンが争ったが、今回は6つのディビジョンがトーナメント形式で戦う。1回戦ではオオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”とイケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”、2回戦ではナゴヤ・ディビジョン“Bad Ass Temple”とシンジュク・ディビジョン“麻天狼”、3回戦ではシブヤ・ディビジョン“Fling Posse”とヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”が激突。その勝敗は無観客配信ライブ、それぞれのバトル曲とディビジョン曲を収めたCDシリーズ、バーチャル空間でバトルを行う「VR BATTLE」へのファン投票によって決まる。
音楽ナタリーでは、対戦するディビジョンのリーダーを演じる声優とバトル曲を提供した作家へのインタビューを3本公開予定。今回は、オオサカ・ディビジョンのリーダー白膠木簓を演じる岩崎諒太、イケブクロ・ディビジョンのリーダー山田一郎を演じる木村昴、そして「どついたれ本舗 VS Buster Bros!!!」のバトル曲となる「Joy for Struggle」のリリックを手がけたポチョムキン(餓鬼レンジャー)の3人に、現在進行形のカルチャーである「ヒプマイ」について語ってもらった。
また特集の後半にはオオサカのディビジョン曲「笑オオサカ!~What a OSAKA!」を手がけたトータス松本(ウルフルズ)とSHINGO★西成、イケブクロのディビジョン曲「Re:start!!!」を制作した変態紳士クラブのコメントを掲載している。
取材・文 / 高木“JET”晋一郎 撮影 / 森好弘
めちゃくちゃ俺らカッコよかった
──オオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”とイケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”がそれぞれライブパフォーマンスを披露した「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 6th LIVE <<2nd D.R.B>>」は1月末に無観客配信されましたが、手応えはいかがでしたか。
木村昴 率直な感想として、無観客っていうのを忘れるぐらいの熱気あるライブになったと思いますね。「ヒプノシスマイク」史上でも屈指の豪華なセットと、贅沢な演出がふんだんに詰め込まれた素晴らしいステージでライブをやらせていただけたことは、すごくうれしいことで。こうしてライブという形でオオサカと戦えたことも、イケブクロにとっては大きな収穫であり、いい経験だったなと思います。
岩崎諒太 無観客であっても「これがライブだ!」って感じましたね。本当にお客さんがいるかのような盛り上がりを感じたライブでした。オオサカとしてステージに立つのは3回目、パフォーマンスするのは2回目だったので、やっぱり緊張もあったんですけど、本番はとにかく楽しめました。一昨年の結成時はまだまとまりきらなかったオオサカが、今回のライブで完全な輪になったような感触があります。
木村 こんなに終わってから何回も観返した自分のライブは初めてですよ。
──それはなぜ?
木村 めちゃくちゃ俺らカッコよかったから(笑)。
岩崎 ハッハッハ!(笑) でもわかります。
木村 「ヒプマイ」の「1st LIVE」(2017年11月開催)からイケブクロは3人とも出させてもらって、ライブごとに僕らが今発揮できるパフォーマンスやライブの内容は更新できてるなと思うんですけど、「次はこうしよう」みたいな反省点も多かったんです。でも今回はそれよりも「やったな! 俺ら!」みたいな手応えや達成感がデカかったんですよね。何回観返しても「ここヤバ!」って感動できる部分がたくさんあって(笑)。二郎役の石谷春貴くんとかDJのDJ U-ICHI(HOME MADE 家族)さんと集まって鑑賞会もしてますからね。この感動を1人で味わうのはもったいない!って(笑)。
──感想戦がしたくなって(笑)。
木村 もちろん次のライブに向けての新たな課題もあるんですけど、ひとまず今回のライブに関しては、ファンの皆さんにお届けできるものとしてはベストを出せたんじゃないかなって思います。オオサカも本当によかったです。
岩崎 ありがとうございます! バチバチにお互いを落とすだけのバトルじゃなくて、お互いを盛り上げていけるライブになったと思うし、そこにすごく充実感がありました。2回目のライブなんで、どうしても自分の中では反省すべき点はあるんですけど、それでも手応えはありましたね。
息の合ったコンビネーション、強烈なキャラクター
──バトル曲「Joy for Struggle」の歌詞を手がけられたポチョムキンさんもライブをご覧になったそうですね。
ポチョムキン 観ました観ました! ものすごいプレッシャーの中でやってるなと。最後のバトル曲のときに昴くんや岩崎さんがしっかり「入り込んでる」のが目付きや表情からも伝わってきて、「うわーヤバい!」って興奮しましたね。そしてラストの「Joy for Struggle」を披露したあとは、みんなやりきった感慨からか呆然としてたんだけど、岩崎さんが「どないでしたー?」ってパッと切り替えたのはさすがだなあと。
岩崎 ありがとうございます!
ポチョムキン 素晴らしいライブでしたね。
木村 うれしい! イケブクロに関して言えば、石谷春貴くんと天﨑滉平くんが非常にストイックに「ヒプマイ」に向き合ってるし、イケブクロを大事にしてるんですよね。もちろん僕もそうで、だからこそ3人が一緒になったときのコンビネーションも、物語を経ることでどんどん深まってきたし、それが今回のライブにも楽曲にも出たと思います。特にライブは、アドリブで動いても「そう行くのね、OK! じゃあ俺はこう行きます」みたいな、瞬時に空気や状況を察して動けるようになってると思いましたね。
──それこそ「息が合う」というか。
木村 オオサカもこれからそうなっていくのかなと思いますね。
岩崎 オオサカはオオサカでそれぞれキャラの濃さと強さを出せたんじゃないかなと。躑躅森盧笙役の河西健吾さんも天谷奴零役の黒田崇矢さんも前回のライブから断然スキルが上がってるんです。盧笙には刺すとこを刺すみたいな鋭さがあって、零の迫力は何割増しだ!みたいな。
木村 天谷奴零は和製リック・ロスですよ(笑)。
岩崎 だから自分に対して「もっとできるだろ!」って感じる部分もあったし、逆に言えばもっと伸びしろがあるディビジョンなんだって再確認しました。
木村 今もコンビネーションがあると思うし、キャラも強烈だから、これからさらに恐ろしいディビジョンになると思いますね。
次のページ »
最後は「おめえ、強えな」「お前もやるじゃねえか」って
2021年3月24日更新